第69話○○いっぱいの会社は深刻化しない
「もう一度、なぜなぜ5回(なぜなぜ分析)で原因を特定してみよう」
T社長は、トラブルの度に社員に発破をかけます。すると、どこかで見聞きした模範解答が社員から提出されます。しかし、何度も同様なトラブルが発生しており、なくなりません。根本的な対策が打てていないからです。
社員は真面目に考えています。ところが、根本原因(真の原因)ではなく、それに付随する要因どまっています。だから、効果的な対策にはなりません。結局、会社は良くならないのです。
■1.“なぜなぜ5回”をするから会社はダメになる
「トヨタ生産方式」で推奨されている “なぜなぜ5回”。
このカイゼン手法は、課題を設定し、その要因を“なぜなぜ”と5回掘り下げて考えるものです。そして、根本原因を特定し、ダイレクトに対策を打ちます。実際に、上手く使いこなすことができれば、とても有効な分析手法です。しかし、中小企業が安易にマネをすると、ほとんどのケースで失敗します。
なぜなら、意識的に原因を追究するばするほど、社員は見たくない事実を直視しなければならないからです。だから、社員は焦点をズラして逃げ道を探します。例えば、報告書を提出するために課題を設定し直したり、抽象的な表現のまま事象も原因も精神論(人的ミス)に置き換えてしまったり、論理に飛躍がみられたりするからです。
つまり、正しく課題を設定したり、問題となる事象を絞り込んだり、因果関係を特定したり、理論的に行動したりできないから失敗するのです。
実際に多くの企業で “なぜなぜ” と根本原因を追究すればするほど、社員が活力を失います。社員の活力が奪われてしまうのです。そして、職場を淀んだ空気が覆いつくすようになります。閉塞的な組織になり、負のエネルギーが場を支配しはじめます。こうなるともう手も足もでません。大手得意先から見れば、活かさず、殺さず。中小企業自身は、己を活かせず、殺せず、ゾンビ組織になってしまいます。
<原因分析で過去に固着すると 会社は深刻化する>
つまり、過去にこだわり原因を追究すると、会社は変われません。だからダメになるのです。これが実態です。
例えるなら、砂漠で何度も縦に穴を掘り続け、力尽きてしまう状況です。特定の範囲の中で穴を深く掘ろうとすればするほど、壁面が崩落してしまいます。さらに深く掘り進めることができません。あきらめムードが蔓延します。安易な原因追究は、今すぐやめましょう。
■2.現状を打破する会社が何をやっているのか
現状を打破する会社は、“なぜなぜ5回” で原因を特定していません。また、原因を特定することで対策を実施しているわけでもありません。
環境が変化し続ける今、過去を分析する手法には限界があるからです。
ただし、結果として根本原因を克服するような対策を打っています。いったいどのようなアプローチで、克服しているのでしょうか。
実は、新たな価値を創造すること、この目的を出発点に、柔軟に考えることで克服しているのです。変革型ブレインストーミングで、アイデアを沢山だしています。大切なのは自由な発想です。過去のしがらみや常識にとらわれず、制限を外して考えています。
一人で考えていてもアイデアは広がりません。だから、チームや組織で前提を外して考えています。このときのコツは、人のアイデアに便乗して次のアイデアを考えること。そして、とにかく数を沢山だすことの二つです。
例えるなら、砂漠で縦に穴を掘ろうとするのではなく、小さな穴を横に広げていくアプローチです。どんどん横に広げていくと、中心の穴はも一段階深く掘ることができます。そして、またその穴を横に広げていきます。原因を追究するのではなく、アイデアを出すことを優先すると、知らぬ間に少しずつ深く堀り進めることができるのです。
まるですり鉢を広げるように、広げるほど深く掘れるようになります。そして、気がつけば現状の根本的な原因を克服するアイデアが生まれ、新たな価値を創造する取り組みが実現しているのです。
<アイデアいっぱいの会社は、深刻化しない>
つまり、未来にこだわりアイデアを出すことにこだわると、現状を打破できます。だから目の前の問題が深刻化せず、会社は変わります。新たなアイデアで現状を打破すると、会社の問題は深刻化しない。これが実態です。
■3.変革型ブレインストーミングは、冗談が命
ブレインストーミングには、発散のフェーズと収束のフェーズがあります。特に発散のフェーズでは、批判は厳禁です。自由な発想で、冗談を言えること。これが大切です。
実現可能性を無視して、とにかく自由に発想してください。すると不思議と、冗談が言える雰囲気となり、自然とアイデアが広がります。しっかりと発散のフェーズをとる事で、これまで考えても見なかった方法が見つかります。
そして、もし実施したとしたら…と、冗談半分で実現可能性を考え、数あるアイデアの中から、複数のアイデアにとりあえず着手してみるのです。実行することで新たな発見があり、少しずつ実現させていく方法が確立できます。
■4.オーナー企業のブレインストーミングには、注意が必要
実はオーナー企業のほとんどは、これが実施できません。社員が社長を忖度してしまうからです。社長の視点が、企業の限界です。にも関わらず、良くも悪くも社長の視点を超えたアイデア、社長の琴線に触れるようなアイデアが上がってきません。“感動や共鳴を与える琴線” なら良いのですが、一歩間違えば “怒りを買ってしまう琴線” に触れてしまうからです。社員は、身の安全を優先します。
そこで、オーナー社長は 「どんなアイデアにも耳を傾けるから…」 といいます。しかし、実際には異なります。耳の痛いアイデアであればあるほど、無意識のうちに、そのアイデアを叩き潰したり(闇雲にダメ出ししたり)、発案者を降格させたり(梯子を外したり)してしまうのです。一度でも、こういった事例ができると、あっという間に社内に黒い噂が広まります。そして、やはりリスクは負えないと、発案よりも忖度が優先されます。
どの社長も黒い噂が広がらぬように本人なりに注意をはらっています。しかし、現実はとても難しいものです。なぜなら人間は、神様ではありません。感情の影響を受ける動物だからです。腹に立ったことは、言語化しなくても、表情や姿勢に滲み出てしまいます。
また、忖度が巧妙に隠されているケースもあります。「我が社には、いつも耳の痛いことを言ってくれる右腕がいるから大丈夫」という会社です。
このタイプの社長は注意が必要です。もし、御社が成長の壁にぶつかっているのであれば、意見具申という名の忖度になっています。間違いありません。耳の痛いこと、実施はそれが最高の忖度になっているのです。右腕社員が、煙たいことを伝えているようで、実は社長の自尊心を満たしています。巧妙なヨイショなのです。
もし、御社が成長の壁にぶつからず、物心両面で成長していれば、問題ありません。それは正しい意見具申です。注意をしてココを見極めましょう。
■5.変革型ブレインストーミングを成功させるコツ
上手くいくコツは、二つ。外部の人間を交えて、アイデアを自由に発想できる安全な場を設けること。そして、外部の力を借りて社内に変革型のファシリテーターを育てることです。カイゼンは社内でできます。しかし、改革は外部の力を活用しなければできません。社内の人間だけでは、どうしても既存の制約条件にとらわれてしまうからです。
<過去に固着する会社は、深刻化する>
<アイデアいっぱいの会社は、深刻化しない>
さぁ。御社は新たな価値を創造するために、どのテーマでどのように自由にアイデアを発想しますか。また、そのときどうやって安全な場を設けますか。分析型の問題解決手法には限界があります。“なぜなぜ5回” はその代表例です。変えていくのは、過去ではなく未来です。新しい時代だからこそ、未来に焦点を当ててアイデアを考えましょう。
※追伸:当社は、「社長も社員も心から安心できる状態をつくる【3年分 受注残をつくる経営(業績3年 先行管理の仕組み)】」を公開しております。既存の枠にとらわれず自由にアイデアを出すことで業績を創造する仕組みです。興味のある社長様は、ぜひ弊社セミナーご参加ください。