ノートとペン 今週の「コジマ式 先行経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第97話“いかす”社長と“いけす”社長の根本的な違い

できる社長は、我が社を活かす。問題社長は、我が社が生簀(いけす)。
第97話:「“いかす”社長と“いけす”社長の根本的な違い」(できる社長は、我が社を活かす。問題社長は、我が社が生簀(いけす)。)

 

「企業はやはり人じゃないですか。だから我が社は人材育成に注力しています」
 

社員をとても大切にしているH社長。社内では定期的に勉強会を開催しており、社員同士で教えあう文化も育っています。とても素晴らしい取り組みです。
 

しかし、低迷した業績は回復していません。H社長の話しぶりは「ジリジリと追いやられる感じで…」と歯切れが悪く、詳しく伺うと自社の将来展望が描けていないようでした。
 

そこで「人材育成に注力しているから、買い叩かれるんですよ」と小島はお伝えしました。
 

すると「我が社には可能性がある。もっと活かしたい。そのための人材育成なんですが………」と、言葉を詰まらせました。
 

社長自身も社員も、もっと可能性を秘めている。我が社の経営資源をもっと活かしたい。
 

H社長のお気持ちはとてもよく分かります。しかし、人を重視している社長、社員の育成に熱心な社長ほど、社員に期待しています。しかし、これが根本的な問題になっているのです。
 

もちろん、人材育成をやっても意味がない。不要だ。と言っているわけではありません。とても大切な取り組みです。ただし、優先順位を見極める必要があるのです。
 

早い話、< どれだけ社員を育成しても、我が社が沈没船になっていれば、誰も助からない >のです。
 

実際、社員の育成に注力する同族会社ほど、大航海に供えた仕組みづくりが遅れています。限られた経営資源の配分順序を誤っているからです。特に、変革のための仕組みづくりが遅れる傾向がみられます。
 

変革の仕組み、大航海に備えた仕組みが無い会社が、人材育成に注力するどうなるのでしょうか。
 

社員は、従来の仕事のすすめ方を前提に努力や工夫を重ねます。つまり、既存の顧客に、既存の商品・サービスを提供することを前提に「(精神論で)やるしかない」という発想になるのです。
 

そして、5S活動や原価低減活動に勤しみます。不要なものを捨て、必要なものをすぐに使えるよう姿置き(すがたおき)をします。整理・整頓です。原材料の仕入先に価格交渉をします。(支給材の場合もあります)
 

しかし、どれだけ生産効率を高めても限界があります。なぜなら既存ルールの中で効率化を進めることは、無駄を省く発想だからです。引き算の世界では、いずれ限界がくるのです。
 

効率化の限界が近づば近づくほど、新たなアイデアが出にくくなります。すると古参幹部が「俺の時代は、もっと○○だった…」と、精神論を振りかざしはじめます。
 

これに見切りをつけた若手社員は、我が社で働くことを諦めます。転職サイトを巡回し、別のキャリアを探し始めるのです。精神論が不要というわけではありません。
 

ただ、昨今の経営環境の変化をみると、精神論で乗り越えるにはあまりにも無理があるのです。 
 

しかも、気合いと根性で改良した商品やサービスも、結局は既存の枠から抜け出していません。新たに投入した商品・サービスであったとしても、お客から買い叩かれます。
 

特に取引規模が大きな得意先ほど、買い手の交渉力を駆使してきます。なぜならQCD(品質・価格・納期)では、同業他社と大差が無いからです。
 

我が社の生殺与奪権を握っている主要得意先ほど、我が社のことを養殖場の生簀(いけす)だと思っているのです。ものごとを有利に進めるためにコスト削減や品質・納期の改善要求を続けてきます。余念がありません。活かさず、殺さず…絶妙な関わりを仕掛けてくるのです。
 

小島も、某大手自動車会社の下請け企業を何社も支援してきました。そして、この構造に苦しんでいる会社を目の当たりにしてきました。
 

そして、共存共栄を掲げながらも、下請け構造という生簀システムを構築し、御社を飼い慣らしているのです。稚魚をむやみに殺さぬよう餌を与え育てます。そして、食べごろになった頃にごっそり回収していくのです。
 

某大手自動車会社では、得意先を支援・指導するという名目で、収益構造も丸裸にしてきました。製造機能は効率化を図れるのですが、企画・販売機能を弱体化させ、大企業の儲けの構造の中で、中小の同族会社は搾取され続けてきたのです。
 

御社は、ここまで分かりやすい事例とは異なるかもしれません。しかし、主要得意先がある以上、大なり小なり同じような状況なのです。ここに気づいてください。
 

社長が本当に人を活かしたのであれば、我が社を活かしたいのであれば、まずはこの構造を見直さなければなりません。既存のルールを超える変革の仕組みが必要なのです。
 

新規事業に挑む社長も多いものです。しかし、ジャストアイデアに取り組む会社は、間違いなく失敗します。社内に試行錯誤を許容する仕組みがなく、社員が挑戦できないからです。さらに追い込まれると危険です。残りの全財産を無闇に注ぎ込んでしまうようなギャンブルをしてしまうからです。
 

だからこそ、一つのアイデアではなく、変革の仕組みが必要です。アイデアを出し続け、試行錯誤をし続ける仕組みです。そして、まだ出会ってない顧客や社員が共鳴できる目標を掲げ、大航海を泳ぐ仕組みを通じて、社員が育っていくのです。
 

この時、社長は人材の配置に気を配ります。これも試行錯誤が必要です。はじめからうまくいくことは稀です。むしろうまく配置できないのが普通です。なぜなら、既存のルールで成果を出す社員と、新しいルールで活躍する社員は、違うからです。
 

< できる社長は、我が社を活かす。 問題社長は、我が社が生簀(いけす)。 >
 

できる社長は、我が社を活かすための構造づくりから着手します。問題社長は、直視せず身を委ねています。我が社が主要取引先の生簀(いけす)になっていることに気づきながらも、事実として認識するのを避けているのです。
 

社長は限られた情報をもとに決断しなければなりません。
 

大手企業の漁場システムの中で生簀を維持管理するのも一つの選択肢です。ただ、大手企業とはいえ安泰ではない時代です。日本の大手企業が、海外の企業に買収される時代です。相手の方針変更一つで、生簀ごと処分される時代なのです。
 

そうなる前に、大海原を泳ぐ覚悟を決め、生簀を飛び出し自社に適した豊かな漁場を見つけるのも一つの選択肢です。
 

問題社長は、生簀(いけす)の中で不平不満を募らせています。それにも関わらず、根本的な問題に向き合うことから逃げています。自社の儲けの構造を変える覚悟を決めず、人材育成に逃げているのです。あなたが生簀を飛び出す選択をするのであれば、最優先事項は構造の変革です。
 

生簀で泳ぐことは、ある意味では気楽かつ安全です。しかし、あなたは生涯、生簀のままで良いのでしょうか。どれだけ魚が育ったとしても、結局は取引先が収穫していくのです。いつまで続くか分からない流れにのったまま、気力・体力ともに老いていくのでしょうか。
 

逆に、大海原に飛び出せば、これまでとは異なる危険が次から次へとやってきます。簡単には餌場は見つかりません。ただ、飛び出したからこそ見える絶景があるのです。
 

H社長にも、このことをお伝えしました。すると、人を大切にしていたつもりが社員を犠牲にしていたこと、ご自身が自社の本来の課題から逃げていたこと、この2点に気がついたようでした。
 

現状に限界を感じている社長ほど、覚悟を決めて自社の構造変革に着手してください。大海原を泳ぐ変革の仕組みづくりを通じて、自社の戦う前提を変えてください。
 

人材育成の前に、変革の仕組みづくりです。仕組み無き人材育成は、社長の甘えにすぎません。我が社の将来をより良いものにするために、覚悟を決めましょう。それが、本当の意味で我が社を活かし、そこで働く社員を活かすことになるのです。
 

“準備ができたら” といっている場合ではありません。社長が変革の覚悟を決めた瞬間から、準備が進むのです。他社が覚悟を決めて前進されるのが先か、あなたが覚悟を決めて前進するのか先か、すべては社長の決断次第です。さぁ、次に挑戦する社長はあなたです。
 
  

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