ノートとペン 今週の「コジマ式 先行経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第14話できる社長がやっているヒト・モノ・カネの押さえどころ

経営者は、決して安全な株だけを 買ってはいけない
第14話:<できる社長がやっているヒト・モノ・カネの押さえどころ>(経営者は、決して安全な株だけを 買ってはいけない)

 

「周りの様子をうかがう社員ばかりで…。」
 「もっと社員にリーダーシップがあれば…。」
 「小島先生。どうしたらよいのでしょうか。」
 

先日、流通・小売業を営む会社の経営陣からご相談がありました。
 

週末になると、どの店舗の駐車場も大渋滞。客入りもよく、そこそこにぎわっているように見えます。
 

コンセプトは、<良い商品を、安く、安全に>。PB(プライベートブランド)商品で顧客ニーズに応える方針。一見するとうまくいっているようにも見えます。
 

小島も何度か利用したことがあり、売り場・商品を思い出しました。仕事柄、いちユーザーではなくコンサルタントとして厳しく現場を見てしまいます。
 
・店舗スタッフの表情が見えない…。店舗・売り場の工夫が少ない…。
・<良い商品を、安く、安全に>ではなく、<妥協した商品で、安く>になっている。
・大型店舗の出店費用を回収することが優先になってそう…。
 
とあまり良い印象はありません。
 

あまり儲かっていないだろうし、基礎力が弱くなっている。根本的な原因はおそらく…と推察していました。そして、
 
「社員にリーダーシップがない理由は、経営サイドに原因があると思いますよ。」
 
とお伝えしました。
ご相談いただいた方々は、小島の返答に目を丸くして驚いていました。

 

 

■1.できる社長の押さえどころ:ヒト

 
 「もっとリーダーシップを発揮しろ!」
 経営陣は、店舗マネジャーに活を入れます。
 

「なんとか業績をあげなきゃ。もっと現場に関わっていこう」
 店舗マネジャーは、目の前の仕事に精を出します。
 

しかし、従来の戦い方をどれだけ続けても、業績はなかなか変わりません。
 
「そうじゃない!何度も言わせないでくれ。もっと店舗を改革してほしいんだ!」
定例の業績会議では、経営陣の雷が何度も落ちます。
 

経営陣と店舗マネジャー、どちらも同じ「リーダーシップ」という言葉を使っています。しかし、それぞれが認識している意味合いは異なり、ズレが生じています。
 

言葉の定義が曖昧なまま、意思疎通をしようとしている。意味合いや求めている行動・成果を具体的に確認することは少ない。コミュニケーションの前提が、相手の意図を汲み取り、お互いが配慮することになっている。これが諸悪の根源です。
 

同様な出来事が、御社にも起きているのではないでしょうか。
 
・そもそも、御社のリーダーシップとはどういう意味ですか?
・そもそも、御社のマネジメントとはどういう意味ですか?
 
ここを明確に定義しなければ話になりません。
 
言葉の解釈を現場に任せたまま、曖昧なまま言葉を使う。
相互に認識のズレが生じ、トラブルに発展していく。
これは、すべて経営陣の責任です。

 

経営陣も現場社員も、この違いを認識せずに使っているケースが多いものです。
 

冒頭のケースでは、経営陣にリーダーシップがありません。店舗の戦い方をどのように変えるのか、そのための仕組みをどうするのか、戦略・戦術・戦闘レベルで曖昧なままです。具体的に伝えていません。しかも、指示をする相手は、店舗マネジャー。これまで、決められたことを決められたとおり実行することで評価されてきました。従来のパターンで働くプロです。そんな社員に、<戦い方を変える中心人物になれ!>という指示をしているのです。できるわけがありません。
 

できる社長の押さえどころ。
それは、ヒトが使う言葉の定義を明確にすることです。
 
・リーダーシップの本質は、古いパターンを手放し変化を起こすこと
マネジメントの本質は、決めたことを決めたとおりやりきらせること
 
 
このように方向性を示すだけでも、ズレは少なくなります。
御社にとってのリーダーシップ、御社にとってのマネジメントは、どのように定義しますか?

 

 

■2.できる社長の押さえどころ:モノ
 

事業の必須条件。顧客を創造し、顧客満足を獲得すること。そのために社員にリーダーシップを発揮してほしいものです。
 

価値あるモノ・サービスをどのように生み出し、どのように提供していくのか?
 

つまり、体系的なマーケティングの視点を持っていなければ話になりません。ここも経営陣が中心になって行うべき重要な意思決定です。
 

ビジネスの前提がめまぐるしく変わる時代です。今日の延長線上に、将来があるとはかぎりません。そこで、このマーケティング(広義)の視点を、分解するとよいでしょう。
 

ピーター・F・ドラッカー氏が言うように、今日のニーズに応える「マーケティング(狭義)」と、将来のニーズに応える「イノベーション」に分けて考えるのです。
 

そして、社員一人ひとりにこの意味合いを理解させ、業務に取り組んでもらうことが大切です。ここが曖昧なままでは、価値ある商品・サービスを生み出し、提供することはできないでしょう。
 

経営陣も現場もどちらの視点で話しているのか分からないまま…。ヒトのケースと同様に、よくあるNGパターンです。
 

できる社長の押さえどころ。
それは、既存事業はマーケティング、新規事業はイノベーションと、分けて取り組んでいること。
特に間接部門に所属する社員に、この違いを深く理解させ、適切な支援をさせることです。
 

単純なことですが、多くの企業が見落としています。今回実施する活動は、どちらの視点で取り組む内容なのか、関係者に予め共通認識させること。過去の分析・効率重視のアプローチが適切なのか、価値の創造・市場を生み出すアプローチが適切なのか。

 

■3.できる社長の押さえどころ:カネ
 

経営の必須条件。将来適切な投資ができるよう利益をだすこと。そのために社員にリーダーシップを発揮してほしいものです。
 

会社のお金を、どのように調達し、どのように運用するのか。これも番頭さんや経理部長任せではいけません。経営者として、どれだけ会社の数値を見ていますか? 先を見て、今どのような手を打つべきか、投資の判断はどうしていますか?
 

「財務諸表を毎年、毎月確認していますし、場合によっては経理部長に確認したり、税理士や会計士に相談したりしていますよ。大丈夫です。」
 
という経営者の皆様。ひょっとしたら、とても大切な側面を見逃しているかもしれません。
 

会計(アカウンティング)と財務(ファイナンス)。両方の視点が必要です。前者は、過去の数値・利益に注目。後者は、未来の数値・手元に残る現金に注目します。
 

一定のルールに則って手続きを進める「会計」は、恣意的な要素が入りにくい仕組みになっています。その一方で「財務」は、経営陣が積極的に関わり将来予測に基づき意思決定しなければなりません。
 

頼りの経理部長、税理士や会計士は、過去の数値を見るプロです。過去のアドバイスとしてはとても有効です。しかし、未来予測やその意思決定に関しては素人です。ビジネスの前提が大きく変わる時代。今日の延長線上に、将来があるとはかぎりません。
 

できる社長の押さえどころ。
それは、会計と財務を区別して活用していること。
特に、将来の業績を予測する仕組みを構築していること。信憑性の高い予測のもと、適切な投資判断をしていることです。
 

この点も多くの企業が見落としてしまいます。特にコストカットで成果を上げてきた、管理畑出身の経営者・経営幹部は注意が必要です。会計の視点に偏って判断してしまいます。例えば、人材育成、設備投資、開発投資、営業投資など、顧客や価値を創造するために必要な投資まで削ってしまいます。最悪のケースでは、費用科目全て一律○%カットなど、愚策を掲げ徹底させてしまいます。単純に支出を抑えるため、目先の業績は良くなります。その裏では、既存事業も崩壊させるような致命傷を負うことになります。
  

ご自身が経営をしている時代は持つかもしれません。しかし、後継者にバトンタッチした頃には、大切な経営資源が枯渇していることでしょう。必要な投資を怠りぺんぺん草も生えない会社に将来はあるのでしょうか。永続発展するためには投資が必要です。

 

 

■4.ヒト・モノ・カネを押さえる際の注意点
 

経営者として、ヒト・モノ・カネを押さえる際の注意点は何か。その答えは、とてもシンプルです。
 

早い話が、<経営者は、決して安全な株だけを買ってはいけない>ということです。もちろん、経営に関する「投資」を「株」に例えた表現です。
 
そして、<先を見て、基礎力を高めるために必要な投資を、何年も継続すること>が重要です。
 

<ヒト>の押さえどころは、人材への投資をすることです。
・例えば、全社で共通理解できる言葉をもち、マネジメントとリーダーシップを使いこなせるだけの人材育成をしているか。
・他にも、既存事業に適した人材だけでなく、既存事業を壊しかねない新規事業向けの人材も採用しているかなど(異質さが大切)です。
 

<モノ>の押さえどころは、顧客や価値を創造するための投資をすることです。
・例えば、マーケティング活動とイノベーション活動を明確に分けて取り組んでいるか。
・その際に、既存事業と新規事業では異なる判断基準を設けて取り組んでいるかなどです。
 

<カネ>の押さえどころは、将来の数値を予測し、それを実現するための投資をすることです。
・例えば、会計(アカウンティング)と財務(ファイナンス)を分けて、意思決定しているか。将来必要な投資資金を確保しているか。
・他にも、将来の業績を予測するための仕組みがあるか。全社員で将来の業績を共有できる仕組みになっているかなどです。
 

少し角度を変えると、ヒト・モノ・カネを投入するには、
 
・既存事業は、マネジメント・マーケティング・アカウンティングという視点
・新規事業は、リーダーシップ・イノベーション・ファイナンスという視点
 
を持つこと。ここを見極めて、投資をすることが大切です。
 

<経営者は、決して安全な株だけを買ってはいけない>
 <基礎力を高めるために必要な投資を、何年も継続すること>
 
経営者には、不確実性を許容する覚悟と決意が求められます。
 

冒頭の会社の経営陣には、この覚悟と決意が感じられませんでした。
 

後日、業界上位数社と決算書を比較すると、利益率は最下位でした。出店優先で拡大してきたが、数年前から飽和状態。単なる安売り路線に。それでも何とか利益を出そうと、あらゆる面でコストカットを続けてきたようです。
 

これまでは、前例主義で成り立ってきました。それで成果が出たかもしれません。しかし、コストカットには限界があります。新たな価値は生まれません。さらに投資を怠った結果、中長期的には、経営陣も社員も基礎力がなくなってしまいます。
 

経営者として、どこに投資をするのか?
しっかり吟味した上で、リーダーシップを発揮してみてはいかがでしょうか。


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