第57話できる社長のプロジェクトを成功させるコツとは
「勝負をかけたプロジェクト。今頃になってベテランが不満を言い出して…」
まったくお手上げだ!と言わんばかりのF社長。先月お申し込みいただいた個別相談の中で、小島に愚痴をこぼしました。
詳しくお話を伺うと、自社の将来をかけたプロジェクトが思うように進まず、頭を痛めていました。そのプロジェクトは、昨年の夏からスタートしたものです。そろそろ軌道にのる頃かと思ったら、半年後たった今頃になって、ベテラン幹部数名が活動のブレーキになっていることが判明し…。
そこで、先日ベテラン幹部を問い詰めたそうです。すると「実は疑問に感じている点があり、活動に協力できませんでした」と言い出す始末。F社長は「今更、何を言い出したのか…」と、半ば諦めかけていました。
「はじめから言ってくれよ。なぜ、今頃になって言い出したのか。いいかげん勘弁してくれよ…」
そんな愚痴も言いたくなるものです。
このような出来事は、社長が認識しているか否かは別として、多かれ少なかれどこの企業でも起きている問題です。そして、この問題を放置したままでは、プロジェクトは上手くいきません。いったいどうしたら良いのでしょうか。
そこで、今週はできる社長がやっているプロジェクトを成功させるコツをお伝えします。
■1.円満を求めると会社は炎上する
日本文化の中には「阿吽の呼吸」という言葉があります。家族や気心の知れた友人同士、長年共に仕事をした職場仲間同士、事細かに説明をしなくとも、お互い考えを無言のうちに理解し、行動に移すことができます。
この前提があり、日本企業の特徴の一つに「お互いに空気を読む力に長けている」といった点が上げられます。これは、ある側面では強みになりますが、別の側面では弱みにもなります。
F社長の会社も例に漏れず、社員同士が空気を読む文化がありました。半年前、プロジェクトの立ち上げ時には、F社長が主要メンバーを集め目的や進め方を説明しました。そして、「今回は、我が社の将来をかけた重要なプロジェクトだから…」と説明をすればするほど、社員は空気を読んでいたのです。
社員は、社長の手前、納得したような顔をします。しかし、腹の中では別のことを考えています。「本当に今やるべきことなのか?」「既存の得意先に迷惑をかけるのでは?」「自分の既得権が崩れてしまう…」など、不安や不満があるにも関わらず、波風を立てないことを選択します。
それにも関わらず、本音では納得していないので活動には本気になれません。ベテラン幹部は、既得権を守ろうとして本人が意識しなくともブレーキとなります。他の社員は、様子見をしてどうするか判断します。幹部の出方を伺い、ブレーキの真似をします。
その一方で、一部の若手社員や現状に不満を感じている自立型社員が、活動に期待し挑戦しはじめます。ところが、新たな取り組みは、前例がないため簡単には上手くいきません。そして、振り向けばベテラン幹部も様子見している社員も、安全地帯から動こうとしません。後方支援を得られぬまま、やがて力尽きてしまいます。
ところが、ベテラン幹部は都合の良い報告を社長にしています。なぜなら保身に走るからです。社長は、社員の自主性を重んじ、もう少しの辛抱だと、成果につながることをじっと待ち続けます。半年ほどすると、なかなか軌道にのらない様子に痺れを切らした社長が、現場に何度も足を運び、ようやく実態に気がつきます。すると、「この半年何をやっていのか…」「ぜんぜん進んでいないじゃないか…」と愕然とします。こんなパターンに陥るのです。
つまり、円満を求めると会社炎上します。
重要なプロジェクトほど、初期段階で円満を求めてはいけません。円満を優先した半年後に、社内が炎上するだけです。
■2.反乱に向き合うと会社は繁盛する
それでは、どうしたら良いのでしょうか。
この答えはとてもシンプルです。日本企業が空気を読む文化を持っていることを前提に、プロジェクトの初期段階で本音で語り合う場を設けるとよいでしょう。
プロジェクトを立ち上げることは、社内に変化を起こすことを意味します。そして、誰しも変化は恐いものです。そのため、社員の本音では、考え方や意見への疑問や対立、手順への不満が生じます。ところが、ほとんどの社員は、争いを避けて、賛同したフリをしてしまいます。「空気を読んでいる」といえば聞こえが良いですが、実際には「本質に向き合うことから逃げている」だけなのです。
このため、本音で語る場を公式に設けることが必要です。プラスの側面だけでなく、マイナスの側面もすべて議論のテーブルにのせる場です。さらに、本音で意見交換ができるように、中立の立場で議論を進行できるファシリテーターが必要です。
最大のポイントは、期待していることと現実のギャップを明確にし、あえてケンカが起きるぐらい本音で議論することです。対立を先送りしないようにしましょう。ここを徹底して行うことで、プロジェクトを進めていく中で、何度も発生してしまう“手戻り”を防ぐことができます。
つまり、「プロジェクトの初期段階だからこそ、賛同しろよ!」というのではなく、「初期段階だからこそ、反対意見も正直に言おう!」という場が必要なのです。
つまり、反乱に向き合うと会社は繁盛します。
重要なプロジェクトほど、初期段階で反乱に向き合うこと。予め不安や不満を解消することで、プロジェクトがスムーズに進むようになります。環境変化に合わせて、変化できる企業は、いずれ繁盛します。
■3.できる社長のプロジェクトを成功させるコツとは
プロジェクトを成功させるコツは、活動の初期段階にあります。
<円満を求めると、会社は炎上する。反乱に向き合うと、会社は繁盛する。>
これがコツです。
そんなに波風立てなくても…と思った方は、特に注意をしてください。
円満を優先し感情に蓋をし続けると、その感情がマグマのように蓄積されてしまいます。活動に本気になれないだけでなく、やがて感情が火山のように爆発してしまい、プロジェクトそのものを崩壊させる危険性を孕んでいます。F社長の会社は、このワナにはまっていました。
人は、感情に左右されやすい生き物です。理屈でねじ伏せようとしても、逆効果です。不安や不満、反対意見も徹底して、やりすぎなぐらい言ってもらうと、負の感情がおさまります。何だってやりすぎると、嫌になってくるものです。すると、逆に協力しようかなという感情が芽生えてきます。これが人間の原理原則です。
「やめさせる」のではなく「徹底して言ってもらう」。不満因子に、あたたかい気持ちで向き合い続けると、やがて流れが変わります。
つまり、感情に蓋をするのではなく、お互いに感情を表現し、理解しあうこと。これが次のステップに進む要になります。まずは活動することに納得してもらい、本音で協力しようと思える関係性をつくってください。
くれぐれも「つべこべ言わず、いいからやれよ!」と強引にごり押しをしたり、「マイナス発言は禁止、絶対にプラス思考で取り組め!」と無理やり賛同させたりしないように注意してください。
さぁ、御社は、本気で実現したいことのために、どのように本音で語り合う場を設けますか。2019年をより充実した1年にするために、社内の議論する場を見直してみてはいかがでしょうか。これが、あなたが大きな夢を実現するための一歩になることでしょう。
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