第13話できる経営者が重視するルールづくりより大切なもの
「うちの社員が、こんなにも笑うとは思いませんでした!」
<ピッカピカの一年生>
<24時間たたかえますか>
みなさんの記憶にも残っているであろうあのCM
先日、伝説のクリエーター本田亮氏(元電通)の講演会が、横浜のとある企業の社員向けに開催されました。小島は、恩師の紹介で特別に参加することができました。
テーマは「人生を3倍たのしむワーク&ライフバランス」
ご自身の体験から、人の3倍働きながらも、家庭も遊びも充実させ、誰よりも人生を楽しむ秘訣を伺いました。冒頭のセリフは、講演後に人事部門の方が思わず口にしたものです。
本田氏は、人として人生を楽しむ本質を語っていました。社員だけでなく経営者自身にも当てはまるものです。経営に役立つヒントがたくさん含まれていました。
「うちの社員が、こんなにも本気になるとは思わなかった!」
「うちの社員に、ここまでポテンシャルがあったなんて!」
小島が支援した企業の経営者も、後からこうおっしゃることがあります。
その一方で、ご相談を受けた経営者の中には、
「我が社は何をやっても変わらない。本当に悩ましいものです…。」
「どれだけルールをつくっても…。」
と思い悩む方もいます。
この違いはどこにあるのでしょうか。
■1.我が社を変えるルールづくり。この判断は正解か?
利益を生み出し、かつ社員も豊かになれる、共存共栄のビジネスモデルとは、どのようなものか。経営者は、時代の変化と共に自社の事業を見直さなければなりません。
今回はその上で、経営者が、
「どのように我が社を変えていくのか?」
「どのように社員を導いていくのか?」
について考えます。
まずは、教科書的な解答。
(1)経営理念やビジョンを再度明確にする。(場合によっては再設定)
(2)その上で、新たな経営方針を立て、組織体制を見直す。
(3)年度計画やアクションプランを立てて、それを実行していく。
(4)同時に、就業規則や人事制度・評価報酬制度を見直したり、PDCAがまわっているか、チェックをしたり…。
いわゆる経営の背骨(バックボーン)を正すことが必要です。つまり、会社の価値観レベルからオペレーションレベルまで、新たなルールをつくり浸透させる。これが王道です。
しかし、どれだけ理屈が正しくとも、理屈だけでは会社は変わりません。
それは、なぜか。
この答えは簡単です。
それは、
「単に面白くないから」(心が躍らないから)です。
王道に徹しても、なぜか変わらない会社。こういった会社の共通点は、理屈(ルール)で人を動かそうとします。社員の立場から見れば、まったくもって心が動きません。
こういった会社は、やがて本末転倒な活動を始めます。経営理念をとにかく唱和させ続けたり、行動の背景ではなく単に行動量をチェックし続けたり、マイクロマネジメントにこだわりはじめるのです。
もっとひどい会社では、ルールをつくった時点で満足し、徹底しようとさえしないケースも存在します。
「ルールを変えれば会社が変わる」
ズレた社長の勘違いが我が社をダメにします。
■2.会社を変えた記憶に残るプロジェクト
小島が経営コンサルティング会社に転職し数年。サラリーマンコンサルタントとして、まだまだ、駆け出しだったころの話です。
廃業の危機に瀕した専門商社から、ご相談がありました。当時の経営環境を踏まえつつ、直近4期分の決算書の分析をすると、とても厳しく、難しい案件でした。
その後、会社に戻って上司に報告すると「助かる見込みが無い。申し訳ないが今回は断りなさい。」という指示。小島は報告資料を奪い返し、気がつけば上司を睨みつけていました。(当時はまだまだ血の気が多い若者でした。お恥ずかしい…)
なぜ、そのような態度をとってしまったのか。
数時間前には、会社を存続させるのか、廃業にするのか、判断を迫られている経営者が小島の目の前にいました。先代社長を事故で無くし、急遽社長を引き継いだ奥様。同業他社で数年の武者修行を終え、自社に戻ってきた後継者様。
「取引先や…我が社の社員のために…、何とかしたいんです…。」
藁にもすがる思いで、最後の一手として助けを求めていたからです。
私財を投じ、会社の存続にかけるという経営者の覚悟と決意を感じました。この瞬間、小島自身がこの経営コンサルティング業界に転職した目的を思い出しました。オフィスの窓からは、楽しそうに繁華街を歩く若者の姿が見えます。
逃げてはいけない。誰が何と言おうと全力でこの会社に向き合い、あらゆる手を使って支援しなければならない。解決の糸口まだ見えていない。それでも何とかするしかない。これが自分自身の役割である。
そう直感が働いたからです。
その後、先輩コンサルタントの支援もあり、上司を説得しました。そして、無事に契約を結び、コンサルティングがスタートしました。
そのときクライアント先で実施したのが、黒字化55-PJ(ブラック・ゴーゴープロジェクト)です。
何とか工数を捻出し、経営者と何度もひざを突き合わせました。まずは止血、その後何度も議論をしながら再建スキームを設計しました。そして、クライアント先の全社員を集めました。再建プロジェクトのキックオフミーティングです。
自社のおかれた状況を説明し、本プロジェクトに協力してほしい旨を伝えました。同時に、資金繰りの目処がつくまで、経営陣は役員報酬の8割カット。社員の給与は2割カットを宣言。
目標は、経営体質が根本的に変わったと判断できる目安、<単月黒字(=固定費をカバーする粗利5千万円を超える業績を上げること)を5ヶ月以上連続達成する>というものです。
そして、社員の皆さんには、本プロジェクトを無事に達成したら給与を元に戻すこと、さらに利益を上げることができれば社員の皆さんに還元することを約束しました。
幸いにも誰一人とも脱落者が出ることも無く、全社一丸となって取り組むことができました。試行錯誤を続けた約1年後、このプロジェクトは驚くほどの成果を上げて達成しました。この会社は生まれ変わったのです。
この成功要因はどこにあったのでしょうか?
もちろん経営の仕組みそのものも同時に見直していきました。危機的な状況で賛同を得やすかった部分もあります。しかし、細かいルールを設定し、それを遵守させたわけではありません。
会社を変えた最大の要因。それは、<ムード>です。
経営者の覚悟と決意が、この会社の<ムード>を変えたからです。
繰り返します。どのようなときに会社が変わるのか。それは、経営者がルールを変えたときではありません。経営者が覚悟と決意を持って<ムード>を変えたときなのです。
■3.経営者。自らが我が社の<ムード>を変える
経営者が覚悟と決意を持って<ムード>を変えたとき。この瞬間に【会社が根本的に変わるというスイッチ】が入ります。
きっかけは<ムード>から。
このムードが「よし、やってやろう」とか「面白そうだ」というとき。つまり、<心が躍り思わず行動したくなる>そんな感情を含んだニュアンスのとき、社員の受け止め方は自然と変わり、行動が変わり始めます。そして、自然と賛同者が現れ、達成に向けて相互協力し始めます。
ルールが不要というわけではありません。しかし、その前に大切なことがあります。
経営者がリーダーシップを発揮して会社を変えるとき、まずはこのムードを変える必要があります。
会社存続の危機という重大事項だけでなく、些細なことでも同様です。取引先の新規開拓、働き方改革や、生産性向上、社会貢献活動も同様です。
・新規開拓せよ!そのためのルールとして…。
・残業を減らせ!そのためのルールとして…。
・生産性を上げろ!そのためのルールとして…。
・地域の活動に参加しよう!そのためのルールとして…。
営業ノルマ、残業規制、…。どれだけルールを変えても会社はなかなか変わりません。
経営者自らが、率先垂範で行動しムードを変えてみる。
・社長自ら、新規事業の提案営業に首を突っ込む。
・社長自ら、定時で帰って、家族との時間を設ける。ガツンと遊びにいく。
・社長自ら、新しい仕組みを使ってみる。
・社長自ら、古い仕組みを使うのを止めてみる。
・社長自ら、地元の活動に参加してみる。
・社長自ら、…。
そうすれば、他の役員も管理職も真似をしはじめます。いずれ、社員一人ひとりも真似をしはじめます。この蓄積で、気がつけば会社のムードが変わります。
子育てと一緒です。
親がルールをつくり、子供にどれだけ「勉強しろ!」といっても、子供は変わりません。親が普段から自宅で本を読んだり、何かを探求しトレーニングしたりする姿を見せれば、子供は自然と真似をし始めます。何らかのムードがある家庭は、子供はそのムードにのって親のやっていることの真似をします。
仕事も家庭も、原理原則は一緒です。
あんな社長がいるから、我が社は面白い(心が躍る)。
あんな上司がいるから、我が社は面白い(心が躍る)。
ルールをつくるよりも、ムードをつくる。
ルール(理屈)で組織を動かそうとする会社は、なかなか変わりません。ぜひ、ムードというスイッチを探してみてください。御社を変えるヒントとして、あなたはどのようにムードを変えてみますか。
※追伸
「ヒト」や「組織」のまだ見ぬポテンシャルを発揮せよ!
中小・中堅企業にイノベーションを起こし、業績だけでなく、文化的にも豊かな会社を増やす。豊かな社会をつくる。このムードをつくりだす活動として、【3年分 受注残をつくる経営(業績3年 先行管理の仕組み)】を公開しております。興味がある経営者様は、ぜひセミナーにご参加ください。
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