第7話できる経営者は、目標達成ルートを見逃さない
「そんな方法があったなんて…」
「もっと早く実施していれば…」
他社の動向を見て、思わず口にしたことはないでしょうか。
近年、活躍が目立つあの会社。新たな取り組みで成長する同業他社もいれば、他業種からの新規参入、ベンチャー企業もいる。その商品・そのサービス、その戦い方はどこから生まれたアイデアなのだろうか。
<我が社も新たなアイデアを取り入れ業績向上・付加価値向上に繋げたい>
こう願う経営者は多いことでしょう。
一般消費者向けの事例は、イメージしやすいものです。例えば、家電量販店で有名なビックカメラ。新しい取り組みを次々導入し、好業績を維持しています。
・2012年にスタートしたビックロ(ユニクロとコラボ店舗)は、女性消費者の開拓に貢献してきました。
・2015年にスタートしたビッカメ娘(店舗を擬人化して情報発信)は、フォロワー数25万人を超えコアユーザーの心を掴んでいます。
・2017年には、いち早くビットコイン決済を導入しました。
時代背景として、AI(人口知能)やIoT(モノのインターネット)が普及しはじめたことも影響しています。しかし、できる経営者は、例外なく市場が認識する前から着手しています。先行して手を打ち、成果につなげています。
これまでも、リアル店舗だけでなく、インターネット販売も強化してきました。
そして、家電量販店という枠を超え他業種へもチャレンジしています。ある程度の失敗は許容しながら。
ビックカメラの代表宮嶋社長が、あるインタビューでおっしゃっていました。
「最先端の商品が多いので、若い人の意見を吸い上げ取り入れています。それを反映できるようにしないと店舗の魅力が失われてしまいますから」と。
成長要因の一つとして、現場が肌感覚で察知した変化をヒントに、ニーズを顕在化させ販売に繋げていることが上げられます。
経営者自身が、情報を取捨選択し、見極めることが基本です。
しかし、世の中の情報量が爆発的に増えた今、適切な情報に触れることも、その情報を見極めることも、経営者一人では限界があります。
そこで、先行して手を打つ経営者は、自分の頭脳を補完するために社員の頭脳をフル活用しています。
経営者と社員の役割分担。
時代の変遷とともに、どのように変わっているのでしょうか。
【頭脳】:主に「Why?(目的)・How?(やり方)・What?(やる対象)」で表される問いに応えること
【手足】:主に「Do」で表される具体的行動のこと
かつては<経営者が頭脳><社員は手足>という捉え方が中心でした。
・経営者が、組織の目的や大きな方向性を定める。
・経営者が、どうやってやるかを決める。
・経営者が、何をやるかまである程度考えておく。
・社員は、経営者が決めたことを、ひたすらやりきり、具体的に実行し続ける。
そうすれば、成果につながる。というスタイルです。
<山頂に辿り着くルートは経営者が自ら示す。社員は指示に従い山頂に登る。>と言い換えても良いでしょう。
しかし、山崩れや天候不順など、想定していたルートで登れないケースもあります。
新たなルートはどのように見つけるのでしょうか?
それとも、登ることを諦めるのでしょうか?
自分の考えに固執する経営者は、目標を達成するルートを見逃しやすくなります。
無理やり前進し遭難してしまうか、危険を察知し下山するかの選択肢しか見えないでしょう。
現在は<全員が頭脳><全員が手足>という捉え方が増えています。
・経営者が、組織の目的や大きな方向性を定める。
・経営者と社員が協力し、どうやってやるか、何をやるかを考える。
・経営者と社員が協力し、決めたことをやりきりる。具体的に実行する。
そうすることで、成果につなげる。というスタイルです。
<山頂に辿り着くルートは、一本だけだとは限らない。だから情報・感情を共有し、自ら考える。相互に協力し山頂に登る。>と言い換えても良いでしょう。
自身の頭脳だけでなく、社員の頭脳も柔軟に活用する経営者がいます。多数のルートを吸い上げ、状況に応じて取捨選択し、前に進む経営者がいます。もちろん目標を達成するルートを見逃しません。
「そんなことは当たり前で、我が社も現場の声を吸い上げている」という経営者も多いことでしょう。
しかし、現場の声を発掘する仕組みを構築し、全社員で使いこなしている企業は稀です。
そもそも仕組みが無い場合。社長が「何でも意見を上げてくれ」と言ってもムダです。社員の立場から「もっとこうしたらよいのに」と本音は言えません。
新しい常識をつくるアイデアは、既存の常識をこわします。そのため、組織の既得権者に攻撃をされたり、経営者自身が受け入れられず貴重な社員を切り捨ててしまったりするからです。それが、経営者自身の盲点を補ってくれる貴重な着眼であったとしてもです。
また、何らかの仕組みがあっても、上司の壁を乗り越えられず、社長のところまで届かないことも往々にしてあります。経営者がピンポイントで吸い上げることは容易ではありません。
新たなアイデア・独自ルートを発掘し、育ててゆく仕組み。
組織内の公式な仕組みとして、機能する仕組みとして、御社にどれだけ構築できているかにかかっています。
コンピュータの世界では、グリット・コンピューティングという仕組みがあります。ネットワーク上にある複数のコンピュータ資源を有効活動し、1つのシステムとして機能させる仕組みです。一箇所の計算センターや、一組のスーパーコンピュータでは足りないほどの大規模な計算処理や大量のデータ保存・利用を、複数のコンピュータで分散するため、高速化や低予算化が可能になります。
ぜひ、御社も「社員の頭脳を有効活用する仕組み構築」に着手していただければと思います。
歴史を見れば、ヤマト運輸株式会社の事例もあります。1976年、法人荷主中心の大口配送から個人荷主中心の小口配送へ転換した宅急便サービスをスタートしました。これは、当時社長の小倉昌男氏が発案した基本的な考え方をもとに、若手社員を中心としたワーキンググループが新商品開発を進めたそうです。その後も、現場の声をヒントに関連するサービスを次々に生み出してきました。初日の荷物が11個だったのが、2016年には約16億個を超える荷物を運んでいます。近年、労働環境の問題も取り上げられましたが、経営者と現場が協力し、解決への糸口を模索しています。
アイス業界ではガリガリ君というロングセラー商品があります。製造元の赤城乳業株式会社は「最近のガリガリ君は面白くない」という消費者の声に奮起し、若手開発者の声を吸い上げました。そして売れ過ぎで一時販売停止になった「リッチコーンポタージュ味」など、さまざまな味を市場に投入しています。
主婦目線で生まれたヒット商品も多数あります。例えば、電気洗濯機の糸くずをとるネットや1枚で大小サイズの鍋に使える落し蓋などです。
経営者の気がつかないアイデアが、どこに埋もれているかは分かりません。
一般消費者向けの商品・サービスだけでなく、法人向けの製品・サービスも同様に、経営者が気がつかない盲点があります。
また、社員が自ら考えだしたアイデアを実行する際、社員は責任感を持ちます。やる気も生まれ、取り組み姿勢も変わります。経営者が適切に見極めれば、付加価値も増やします。結果として生産性も上がります。
量を増やし業績を上げる時代ではありません。付加価値を増やし業績を上げる時代です。
もう一度お伝えします。御社も「社員の頭脳を有効活用する仕組み構築」に着手してください。
すぐに機能するものではありません。効果が出るまでに時間もかかります。しかし、こういった仕組みが御社の将来を救います。今、投資を決断できるか否か、経営者の先見力にかかっています。
※弊社は、全社員の頭脳を活用し独自ルートを発掘する仕組みとして【3年分 受注残をつくる経営(業績3年 先行管理の仕組み)】を提供しております。興味がある経営者様は、ぜひセミナーにご参加ください。
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