第103話どんな話題? 強い会社の慰労会や忘年会
「小島先生。もう師走ですね。プロジェクトの慰労会と忘年会を兼ねた企画していまして、例年とは異なる形で実施したいのですが……」
K社長と食事をしている際に出てきた話題です。K社は、忘年会や慰労会を毎年開催しています。しかし、プロジェクトが一区切りついた今、一回り成長した我が社を眺めながらいつもとは異なる形でできないかという相談でした。
「そうですね。良い機会ですから、努力自慢や苦労話は禁止にしませんか? 後半だけでも禁止にすると意味がありますよ」
と小島は答えました。
「えっ。慰労会ですから、お疲れさま会ですよね。努力や苦労をねぎらう場じゃないんですか? 忘年会も兼ねてますし、来年も頑張ろうという気持ちになってくれれば……」とK社長。
「弱い会社は、慰労会や忘年会を文字通りに実施するんですよ。今年は、より強い会社に変わるために、社員の皆さんの認識も変えていきましょう。ポイントは……」
小島は、K社の状況に合わせて慰労会や忘年会の意味合いを変える価値と、変える際のポイントをお伝えしました。当たり前のように実施している行事一つとっても、強い会社と弱い会社では意味合いが全く違うからです。
弱い会社の慰労会は、 “これまでの努力や苦労をねぎらうこと” に主眼を置いています。社長や上司からねぎらってもらうと、社員は嬉しいからです。また、忘年会は “嫌なことは忘れてしまおう!” と いう着眼です。もともとは日ごろのストレスを発散する場でした。
こういった弱い会社の慰労会では、過去の苦労話や努力自慢の話が至るところで飛び交います。そして、周囲から「よく頑張ったね」と言われると、話し手がホッとした表情をして大人しくなります。努力を認められて満足したからです。
実は、このやり方は、環境変化が少ない時代に有効な方法でした。変化が少ない時代は、繰り返し何らかの作業をする業務が多かったものです。ですから、その努力や苦労をねぎらうことや、嫌なことを忘れることで、来年も頑張ろうと思ってもらう必要がありました。これらは、日常業務をしている社員にとって、自分たちを大切にしてもらっていると感じられる貴重な場だったのです。
しかし、環境変化の速度が速く、ルールが大きく変わる時代では、どれだけ自分たちに焦点を当てても、時代に取り残されてしまうだけです。
なぜなら、従来と同じ戦い方をどれだけ繰り返したとしても、新たな価値を求めている将来の顧客には響かないからです。こうなってしまうと、社員がどれだけ努力をしようが、どれだけ苦労をしようが、一切関係ありません。結果に繋がらなければ、意味がないのです。
さらに、社員が自分中心に考えるようになってしまうというデメリットもあります。自分自身を過大評価し、結果に繋がらない状況を慰めるようになります。自分中心では、やがて周囲に価値を提供できなくなるにも関わらず、従来のやり方にこだわるのです。
事業会社ですから、御社の商品やサービスを顧客が購入しなければ意味がありません。にも関わらず、売れない原因を環境や他人に振り向けてしまうのです。これを続けていると自分に固執し、さらに変われなくなります。
このように弱い会社は、文字通りの慰労会や忘年会を続け、さらに弱くなっていきます。従来のガス抜き程度の目的で行事を開催しているような会社は、実はとても危険なのです。さらに近年では、慰労会や忘年会に参加したくないという若手も増えており、悪循環に拍車がかかっています。
一方で、強い会社は違います。強い会社の社員は、自分たちよりも、より大きな目的に焦点が当たっています。ですから、自身を薄めて、常に結果を出すことに集中しています。
慰労会や忘年会という場であったとしても、過去の努力自慢や苦労自慢をすることはありません。とはいっても、今年取り組んできたことを忘れるわけでもありません。
これまでの取り組みと現在の成果を振り返りながら、将来の展望についての意見交換をしています。そして、希望の将来だけでなく、次に繋がる教訓についてお互いに話をしているのです。今年の出来事に向き合い、自分自身や会社の業績を向上させるための新たなヒントや、従来とは変えなければならない点を明確にしているのです。
なぜなら、自分達が定めた目的や目標に対する価値を認識し、自身の役割や使命に確信をもっているからです。そして、目的を達成するためにあらゆる工夫や行動をすることは、当然だと考えているからです。だから、空気を吸って吐くかのように、ただやるべきことに注力しているのです。
つまり、過去を捨てることもなく、未来を妄想するだけでもなく、過去から理想の未来に時間軸をつなげていくのです。そのために、今現在、何をどうしたらよいのか、目的に真正面から向き合い、自身の言葉で明文化していくのです。
この姿を他人が見ると、とても努力しているとか、苦労にめげずに頑張っていると、勝手に評価しているだけです。もちろん強い会社の社員は、当たり前のことですから、そんな評価さえ気にしていません。
このように、強い会社と弱い会社は、慰労会や忘年会の話題が違うのです。
< 慰労会ででる話題。苦労話は注意企業。希望話は中位企業。教訓話が強威企業 >
K社は、昨年まで弱い会社の形式で慰労会や忘年会を開催していました。ですから今年から急に変えるには無理があります。強い会社の形式で開催するためのきっかけをつくりましょう。つまり、K社のように強くなりつつある会社は、前半と後半で会の流れを変えるために、冒頭や最後ではなく、中盤にも社長が語る場を設けましょう。
そこで社長は、社員の努力や苦労を十分にねぎらった上で、目的や目標の意味を改めて語るのです。そして、今年の経験を次にどのように活かすのか、笑点の大喜利のように社員にお題を投げて、順番に発表してもらいましょう。皆、初心者ですから完璧でなくても大丈夫です。少しずつ流れを変えていくのが正解です。
繰り返しますが、古い時代は、努力が苦労が分かりやすく結果に繋がる経営環境でした。だから、自分目線の発想でもよかったのです。しかし、今現在は違います。環境変化が早く、ルールが大きく変わる時代では、努力や苦労が結果に繋がるとは限りません。
今は、試行錯誤が当たり前の時代です。このとき、社員は努力が苦労が報われないと勘違いしてしまうものです。ですからここで大切なのは、社員の焦点を外に導く工夫です。
社員が自分たちではなく、より大きな目的、顧客の創造に焦点を当てる工夫をしましょう。次に繋がる教訓を抽出しようと思わず感じる工夫です。それが、御社をさらに強い会社に変革する重要なポイントです。ぜひ、今年の忘年会で試してみてください。次に社員の話題を変える会社は、御社です。
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