ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第91話なぜ、具体的に考えると実行力が低下するのか

「具体的に考えよ!」言えば言うほど、逆効果。
第91話:「なぜ、具体的に考えると実行力が低下するのか」(「具体的に考えよ!」言えば言うほど、逆効果。)

 

「もっと具体的に! だから実行できないんだ」
 

営業部のM部長は、部員に発破をかけていました。
 

「このままでは目標予算を達成できないぞ。いつも “頑張ります!” と言うけど、精神論では何ともならないぞ。具体的に考えて、やらなきゃダメだろ…」 と続けていました。
 

M部長いわく、< 具体的に考えねば、受注できない > とのことです。
 

例えば、ターゲットは○○社。老朽化した設備の更新が近づいている。窓口の○○さん経由で、ご意見番の○○さんを巻き込み、決裁者の○○に同席してもらう。そこで○○といった価値や導入イメージを伝え、競合との差異を明確にする。そして、来期の予算に計上してもらう。その後、○○月頃に詳細を打ち合わせし、○○月頃に受注する。そのためには…。という具合です。
 

M部長は < 具体的だから実行できる。具体的だから価値がある > と考えていました。M部長だけでなく、多くの社長も同じような考えを持っています。なぜなら、現場で実行しなければ、成果につながらないからです。
 

しかし、実際には < 具体的だから使えない > ものです。
 

M部長は、具体性を描けない部員に痺れを切らし、ついつい具体的に指示をしてしまいます。そして、営業部員は、その指示に従って行動をしているだけ。いつもこのパターン。M部長に限らず多くの幹部社員は、このケースにあてはまります。
 

結局、営業部員は、いつまで経っても自ら考えられません。自分で具体的に考えられないから、御用聞き営業しかできない。つまり、使えないのです。
 

“具体的に指示をすることが悪い” と言っているわけではありません。例えば、単純作業では具体性が重要です。
 

少品種多量生産の工場で、ひたすら単純動作を繰り返すケースがあれば、具体的に指示をすべきです。具体的に手順を示し、繰り返し訓練し、作業を習得させる。これで、標準的な生産性を発揮できるようになるからです。(※生産量と人件費に応じて、機械化する)
 

今回は、付加価値を高める営業活動の話です。
 

利益率の高い仕事は、利益率の低い作業とは異なります。高単価で利益率が高い仕事ほど、顧客の個別具体的なニーズを顕在化させ、個別具体的に提案する必要があります。
 

しかし、この時、営業部員に具体性を求めてしまうから上手くいかないのです。具体的に考えよと言いながらも痺れを切らし、1~10まで指示をするから使えないのです。
 

< 営業社員に “てにおは” を指導するから、顧客ニーズを満たせない >
 

これが実態です。営業部門がトーク練習や、ロールプレイング練習をしても、意味がありません。これらは、後からやることです。
 

それでは、先に「抽象的に考えろ!」と言えば良いのでしょうか。
 

これこそ、営業部員は訳が分からなくなります。なぜなら、どれだけ個別具体の事象を眺めても、自ら法則や教訓を抽出できないからです。言い換えると、言語化できないからです。
 

セールス力のある社員は、これを皮膚感覚でやっています。しかし、売れない社員はいつまでたってもできません。当然、意識的にも言語化できません。だから、いつまで経っても売れないのです。
 

< 抽象化した法則や教訓を求めるから、顧客ニーズを満たせない >
 

具体化する力を求めても、抽象化する力を求めても、どちらも上手くいきません。なぜなら、どちらも大して考えていないからです。それでは、どうしたら良いのでしょうか。
 

この答えは、セールス力のある社員が皮膚感覚でやっていることを、営業組織全体で意識的にやることです。
 

つまり、できる社員の思考プロセスを営業部門で共有し、皆で考えつくすことです。抽象と具体を行き来するプロセスを言語化し、何をやっているのか認識できるようにすることです。これにより実行力が高まります。
 

トップ営業のスタイルを、他のメンバーでも真似できるようして、考えつくすのです。
 

< 抽象と具体を行き来する。この思考プロセスを共有すれば、営業組織は昇華する >
 

思考プロセスの言語化は非常に難しいものです。ですから、言語化する手順を言語化しなければなりません。順を追って言語化できるようにフレームワークを準備します。そして、フレームワークに沿って、考えつくすプロセスを共通体験させましょう。この繰り返しで、自ら考える営業社員が育ちます。
 

「とはいっても、抽象と具体の行き来なんて、難しいのでは…」
 

そう考える方も多いでしょう。その通りです。簡単ではありません。しかし、この思考プロセスは、フレームワークによってパターン化することが可能です。つまり、パッケージ化できるのです。
 

すると、単純動作の如く作業に落とし込むことができるので、思考のハードルを下げられます。思考プロセスの道筋が見えれば、作業的に考えられるようになるのです。
 

抽象と具体を行き来し、考えつくすこと。これを仕組みでおこなうことが大切なのです。
 

どこまでやるのか。対象は、各社それぞれです。全社員や全営業担当者に求める会社もあれば、部分的に求める会社もあります。これはどちらが良いというものではなく、選択です。
 

頭脳から実行まで一つの部隊に任せることもあります。頭脳部隊と行動部隊を分けることもあります。我が社は、頭脳部隊に限定するとか、実行部隊に限定するとか、自社の位置づけを特化することもあります。いずれも正解です。
 

何にどこまで挑戦するかは、御社が、あなたが自ら判断してください。
 

例えば、地方の小さな工務店・住宅会社だったとしたら…。多くのケースで、数人のスーパー営業マンが、受注のほとんどを握っていることでしょう。それが社長一人というケースも多いものです。もし、その人が体調を崩したり、退職したりしたら…。会社の業績はガタ落ちです。今後も存続していけるのでしょうか…。
 

一代でたたむことも選択です。次につなげるというのも選択です。
 

この点に危惧し、大手ハウスメーカーの下請けに特化し業績を安定させるという作戦もあります。
 

しかし、これも問題です。経営の主導権を自ら手放している。他の誰かに委ねてしまっているからです。売上の源泉、自社の生命線を、誰かに委ねて本当に良いのでしょうか。
 

同族会社の社長は、自ら経営の主導権を握らなければなりません。主導権を他人に預けるのであれば、あなたが会社を経営する意味がないからです。
  

社長が心から安心して経営をするためには、“我が社の社員が、自ら売り上げをつくる力” を育まなければなりません。つまり、仕事の主導権を自社で握らなければなりません。だからこそ、できる営業マンを自前で増やさなければないのです。
 

そして、人は一朝一石には育ちません。さらに、人は仕組みが無ければ育たないものです。前もって準備しなければ、実現しないものなのです。
 

さぁ、今から考える仕組みをつくり、人が自然と育つ会社をつくりましょう。3年先に受注に困らない会社をつくるのです。新たな一歩を踏み出さねば、いつだって始まりません。次に、挑戦するのは、御社の番です。
  
 

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