ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第99話なぜ、社長が変革を主張してはいけないのか

変革! 変革! 言えば言うほど、変わろう詐欺。
第99話:「なぜ、社長が変革を主張してはいけないのか」(変革! 変革! 言えば言うほど、変わろう詐欺。)

 

「我が社を変革せよ!」
 

社長は、事業環境の変化を敏感に察知し、次なる手を考える生き物です。
 

そして、その危機意識を社内にも浸透させるべく、機会を設けて変革の重要性を社員に伝えます。なぜなら、社員に浸透しなければ、自社の変革が進まないからです。
 

会社を変えるという観点では、いくつかの言葉があります。「改善」、「改革」、「変革」、「革新」といったものです。それぞれの言葉は、定義が曖昧で解釈には幅があります。あえてざっくりと表現すると次のようなニュアンスです。
 

「改善」は、既存の枠組みの中でより良くすること、小さな変化。
 

「改革」は、既存の枠組みを改めること、大きな変化です。
 

「変革」は、理想を掲げ既存の資源を活かしながら新しい枠組みをつくること、創造的変化。
 

「革新」は、理想を掲げ既存の枠組みは省みず新しい枠組みに変えること、交換的変化です。
 

同族会社の社長は、これらのうち「変革」という言葉が大好きです。なぜなら社長には、逃げ場がないからです。自身なのか、後継者なのか、いずれにせよ親族が経営のバトンを握り、道を切り開いていくしかありません。サラリーマン経営者とは異なるからです。
 

ですから「改善」や「改革」といった変化の大小ではなく、「革新」といった交換的変化でもありません。理想を求めつつ、既存の資源も活かしていく。「変革」という言葉を好んで使うのです。一挙両得を探求したいのです。
 

同族会社の社長は、嗅覚がとても優れています。逃げ場のない経験を重ね、骨肉化され、感覚が研ぎ澄まされていくからでしょう。ですから「変革」という言葉の意味を自然と感じ取っているのです。
 

その上で、実際に会社が「変革」できるか否かは、社長の自社への関わり方によって異なります。この分岐点はどこにあるのでしょうか?
 

関わり方には、大きく2つのパターンがあります。事業環境の変化を見据えて「変革」し続ける会社の社長もいれば、「現状維持という名の衰退」を続けてしまう会社の社長もいるのです。
この違いは、どこから生じるのでしょうか?
 

答えはとてもシンプルです。社長が、「変革」を主張すればするほど、変革から遠ざかります。 「変革せよ!」 「変革せよ!」 と言えば言うほど、逆効果なのです。
 

< 変革! 変革! 言えば言うほど、変わろう詐欺 >
 

もし、あなたが 「我が社は、なかなか変わらない」 と思っているのであれば、このNGパターンにおちいっていないか、普段のご自身を振り返ってみてください。
 

会社が変われない原因には、大きく3つの要素あります。御社も3つのうちいずれかに原因があることでしょう。その一つは、危機意識が社長と社員で共有できていない、というものです。
 

ですから、社員に変革の必要性を伝えています。しかし、実際には、どれだけ言っても伝わりません。この暖簾に腕押し状態は、あなたの実体験から痛感するのではないでしょうか。
 

なぜ伝わらないのか。それは、社長と社員では、立場・役割が異なるからです。社員の立場ではどうしても、視野が狭く、時間軸も短くなるからです。
 

【問題社長】は、伝えることを諦めています。何も働きかけません。結局、環境変化に適応できず、事業が存続できなくなります。過去の経緯を見れば、何らかの理由があるかもしれません。意思がなければどうしようもありませんから、コラムでは割愛します。
 

次に【平凡社長】です。諦めることなく、何度も繰り返し頑張って伝えます。経営変革の重要性を伝え続けるのです。実は、これが大問題なのです。
 

なぜなら、既存事業を運営する仕組みの中で、何度も伝えるからです。既存の仕組みが変わらぬまま、社員に変われといっているからです。
 

社員は、ルールを守ることが前提の中で、ルールを破れといわれているのです。破れるわけがありません。真剣に受け止めると、あまりにも大掛かりなことになります。自身の職務の範疇を超えるメリットが感じられません。
 

だから、社員は社長の「変革せよ!」という言葉を、本来の意味ではとらえていません。単なる掛け声として「ヘンカクせよ!」と聞くようになるのです。
 

朝であれば「おはようございます!」、現場であれば「ご安全に!」、といった挨拶と同じです。本来の意図を認識し、意識的に言っていれば良いのですが、どうしても形式的になるものです。
 

あなたの会社の朝礼を思い出して下さい。「経営理念」や「行動指針」の唱和と同じです。形だけ。どれだけ唱和しても掛け声だけになっていませんか? 掛け声だけでは、本来の意味を失いやすいものなのです。
 

ですから、社長を見たら「(お疲れ様ですというように)ヘンカク」と、ただ音を発するだけ、復唱するだけになってしまいます。言えば言うほど、社員は変わりません。ヘンカク! ヘンカク! と言えば言うほど、変わろう詐欺になってしまうのです。
 

つまり、経営変革をどれだけ主張しても意味がありません。厳しい表現ですが、これは平凡社長の甘えです。主張するだけで変わるのであれば、社長業は楽なものです。社員に伝えただけで変革が進むと思っている……その姿勢が大問題なのです。
 

< 平凡社長は、経営変革!と叫ぶ。できる社長は、変革経営をつくる。 >
 

【できる社長】は違います。経営変革と叫ぶのではなく、変革経営の仕組みをつくるのです。
 

変革経営、変革する経営(マネジメント)の仕組みです。つまり、既存業務を運営する仕組みに加えて、新たな仕組みをつくる仕組みを予めつくっているのです。経営の仕組み、マネジメントの仕組みの中に、変革の要素を入れていくのです。
 

新たな仕組みをつくる過程では、既存の仕組みを手放すプロセスが含まれています。当コラムでも何度もお伝えしている 「破壊 → 創造 → 安定 → 破壊 → 創造 → 安定 → ……」のサイクルが含まれているのです。
 

しかも、「変革の仕組みそのもの」 を日常業務として位置づけます。ですから、社員も当たり前のようにその仕組みを使います。新たな型にはめるから、組織が上手く変革していくのです。
 

この時、「革新」のように既存の枠組みを省みない方法は上手くいきません。根本的な抵抗感を払拭できないからです。コツは、既存の経営資源を活かしながら新しい枠組みをつくることです。社員それぞれの立場・役割を、仕組みで変えながら新たな枠組みをつくっていくのです。
 

新たな仕組みをつくる仕組み。これがこれからの時代に必要な、経営の仕組みです。社長に必要なのは、経営変革を主張することではなく、変革経営の仕組みをつくることなのです。
 

とはいっても、注意が必要です。導入していく順番や、導入時のちょっとしたコツを間違えると、社員は形式的になり固着してしまいます。固着すると、柔軟性を取り戻し剥離するのがとても大変です。変革とは対極に進んでしまいます。御社が変われなくなるのです。
 

既存の仕組みに慣れている社員は、良くも悪くも現状維持を優先する生き物です。根本的には変化を嫌っているのです。ぜひ、細心の注意をはらった上で、新たな仕組みをつくる仕組みを構築してください。
 

事業環境の変化に適応せざるを得ない状況に追い込まれる前に、業績不振で再生せざるを得ない状況におちいる前に、前もって自ら変わっていく創造的変化の仕組みを構築しましょう。
 

新たな仕組みをつくる仕組みには “型” があります。御社の創造性、御社のまだ見ぬポテンシャルは、型にはめた仕組みで引き出していきましょう。次に変革経営をするのは、あなたの会社です。
 

 
※追伸:当社は、新たな仕組みをつくる仕組みとして 【3年分 受注残をつくる経営】(3年先行経営のすすめ方)を公開しております。弊社セミナーだけでお伝えする具体事例やその留意点があります。例えば、「会社が変わらない3大原因とそれを取り除くコツ」 もお伝えします。興味のある社長様は、ぜひセミナーにご参加ください。 

 

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