ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第31話やる気にこだわる社長は、社員のやる気に振り回される

やる気のスイッチを探しても モチベーション不要論に逃げても 同じ穴の狢(ムジナ)
第31話:<やる気にこだわる社長は、社員のやる気に振り回される>(やる気のスイッチを探しても モチベーション不要論に逃げても 同じ穴の狢(ムジナ))

 

「どうしたら社員のやる気が高まるのでしょうか?」
 

経営者は雇用する立場。当たり前ですが、当事者意識をもっています。しかし、社員は雇用される立場。経営者ほどの自覚はなく、受け身になりがちです。
 

そのため、経営者は社員に目的を伝えるだけでは不十分です。具体的に指示命令をしなければなりません。すると、1~10まで伝えなければならず、手間ばかりかかってしまう。こう悩む経営者も多いものです。だから、「自ら考え行動するような社員が増えてほしい。」 「もっと社員にやる気を出してほしい。」 「期待以上の働きをしてくれる社員がほしい。」 といった願いを持ちます。
 

単純な管理手法では解決できない問題も増え、コンサルティング業界や社員研修業界ではモチベーション関連の市場が成長しています。この波にのり人事系コンサルティング会社や研修会社は、モチベーションの重要性とその高め方を積極的に情報発信しています。大型書店に行けば、関連書籍も多く、売り場の一角を占めています。
 

そして、経営者はさまざまな手を考え実行しています。例えば、会社主催の運動会や季節に応じたイベントなど、かつて実施していた催しを再開する企業が増えています。また、働き方改革の一環として社員の声を吸い上げ、福利厚生を充実させたり、人事制度・処遇を見直したり、社員のやる気を高めるために必死です。
 

しかし、導入企業の多くは、十分な成果につなげられません。一時的に盛り上がったとしても、活動が下火になり、やがて惰性で続けてしまいます。働き方改革では、せっかく現場の声を経営陣に伝えたのに…。対して変わらない職場環境を前に、社員の不平不満が高まるケースも増えています。良かれと思って実施した活動にも関わらず、逆効果になってしまう…。とても残念なことです。
 

「社員のやる気を高めれば、我が社の問題が解決する」 根本的な問題は、経営者がこの誤った解釈をしていることです。
 

経営者という役割は、とても孤独なものです。そして、限られた条件の中で、決断し続けなければなりません。そのため、ついつい手っ取り早く結論付けたくなるものです。致し方ありません。しかし、社員のやる気に振り回されている場合ではありません。問題の本質に向き合い、現実的な解決策を模索する方がよいでしょう。
 

どれだけ、やる気を高めても、効果は一時的。やる気が出たとしても、適切な行動が増えるとは限りません。そして、行動したとしても、成果につながるとは限りません。
 

<社員のやる気のスイッチを探して、スイッチを押すことで我が社の問題を解決しよう> 現状を変えたければ、この発想をやめましょう。
 
 
 

一方で、モチベーション不要論を唱えるコンサルタントや経営者もいます。「モチベーションなんて水物。そんなことに注力しているから間違う。」という発想です。
 

やるか、やらないか。大切なのことは、とにかく行動量を増やすこと。行動量が倍増すれば、顧客接点が増える分チャンスが広がる。業績も上がる。やがて経験値が増えて質も高まる。顧客と向き合う時間が増えるため、無駄な業務をやる余裕もなくなる。
 

この考え方も、一見もっともらしく聞こえます。社員一人ひとり、個別に向き合うわずらわしさも減ります。シンプルでわかりやすい。経営者として、思わず賛同したくなるでしょう。しかし、これも上手くいきません。
 

例えば、社長の大号令のもと、全社的に行動量を増やす施策を導入するとどうなるのか。安易に進めると、結局社員は動きません。通り雨をしのぐように、社員は様子見をするからです。逆に、本気になって推進すると全社的に行動量が倍増しはじめます。一気に雰囲気が変わるかも?と期待するかも知れません。導入期には、率先して行動する社員、様子を見ながら徐々に行動する社員、拒絶し頑なに従来のパターンにこだわる社員など、おおむね2:6:2の割合になるケースがほとんどです。
 

単純に行動量が増えた分、それなりに案件も増えます。しかし、効果は一時的なものです。なぜなら、行動量を倍増させた社員は、そもそも思考力が弱く御用聞き営業から脱却できないからです。そして、様子を見ながら徐々に行動していた社員は、効果を感じられず徐々に従来のパターンに戻ります。また、拒絶する社員の中には、戦略的なアプローチに長けた優秀な社員が含まれます。闇雲に行動量を増やすことに賛同せず、不満を蓄積させます。
 

「やる気は関係ない。単純に行動量を増せば、我が社の問題は解決する」 こういった経営者の解釈も、根本的な問題です。
 

 経営者という役割は、結論を急がねばなりません。そのため、己の感情を客観視し、そこそこ制御しています。だから、社員の感情も客観視し、手っ取り早くコントロールしようとしてしまいます。単純に感情に蓋をするだけ。とにかく行動させた方が再現性が高く、効果的だ。こう発想する方もいらっしゃるでしょう。しかし、この発想も安直です。問題の本質に向き合うことなく解決することは難しいでしょう。
 

どれだけ、行動量を増やしても、効果は一時的です。目的や目標を十分に理解せず、闇雲に行動しても行動の質は高まりません。無駄です。さらに感情に蓋をしても、社員の感情が見えないところで抵抗し、新たな問題を生じさせます。もし、強制力で動かすことができても、最低限の働きしかしないでしょう。
 

<モチベーション不要。有無を言わさず行動量を倍増させることで、我が社の問題を解決しよう> 現状を変えたければ、この発想もやめましょう。
 
 

 

社員のやる気のスイッチを探しても、モチベーション不要論に逃げても、結局は同じ穴の狢(ムジナ)。人間の特徴を理解し、仕組みに落とし込むことが大切です。
 

今回のテーマで言えば、やる気。
 

大前提として、心と身体は連動しています。身体を動かせば、それに相応しい発想ができるようになります。
 

例えば、ロダンの考える人のポーズ。前かがみになり肘を付き、前方やや下を眺めてください。悩みごとを思い出し悶々としますか? それとも、楽しい発想ができそうですか?
 

晴れた草原で深呼吸をするポーズ。両手を広げ、前方上空を眺めゆっくりと呼吸をしてください。楽しい発想ができそうですか? それとも、悩みを思い出し悶々としますか?
 

人はやる気があるから行動するのではなく、行動するからやる気がでる生き物です。認識を切り替えましょう。やる気のスイッチは探すものではなく、行動を促す仕組みを仕込んだ結果、育まれるものです。
 

そして、人間は感情を持った生き物です。感情の存在を認めてあげましょう。あなたが、社員の立場だったら…。他者が、モチベーション不要論を唱え、自分をモノのように扱ってきたら…。あなたが本来持っているポテンシャルを、どれだけ発揮できるのでしょうか?
 

約100年ほど前に提唱されたフレディレック・テイラーの科学的管理法も、早い段階で管理の壁にぶつかりました。そして、人間関係に注力したエルトン・メイヨーのホーソン実験、マズローの5段階欲求説(自己実現・承認・社会的・安全・生理的欲求)、マクレガーのX理論・Y理論(怠ける部分・自己実現した部分)、ハーズバーグの動機付け衛生理論、マクレランドの欲理論(達成・権力・親和・回避)と研究が進みました。目標設定や期待に関する理論もあります。
 

ここまで検討されているのに、モチベーション不要を唱えるは、かなり乱暴ではないでしょうか?
 

人は感情を持ち、感情に支配された生き物です。そして、まだまだ発展途上ですが、意思も持っています。これを前提に、感情を認めた仕組みをつくりましょう。そして、やる気をスイッチにするのではなく、適切な行動を促す仕組みをつくりましょう。行動したら、感情が満足する仕組みです。
 

社員のやる気のスイッチを探しても、モチベーション不要論に逃げても、結局は同じ穴の狢(ムジナ)です。成果につながる行動を促す仕組みを仕込み、感情を満たしつつ成果を上げる。決して簡単なことではありません。しかし、経営者がこの重点に注力しない限り、御社の悩みは解決しないでしょう。目の前の問題にとことん向き合うこと。安直な発想に逃げず、ぜひ考え抜いて答えを見つけてください。
 

御社は、いつアメとムチのマネジメントから脱却しますか。そして、いつ面白そうだから行動する仕組み、さらに意義を感じられるから行動する仕組みに進化させますか。気づいた時が、着手するときかもしれません。じっくりと自社を見つめてください。

 

 ※当社は、社員のやる気を大切にしています。「社長も社員も心から安心できる状態をつくる【3年分 受注残をつくる経営(業績3年 先行管理の仕組み)】」では、成果につながる行動を増やす仕組みとして、やる気を引き出す環境づくりに注力しています。また、環境づくりを土台にしながら、社員のやる気を直接引き出すトレーニング方法も提供しております。興味がある方は、ぜひ弊社セミナーご参加ください。
 

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