第74話令和時代の組織変革。成功させる社長と失敗する社長
「我が社を変革せよ!」
どれだけ社長が号令をかけても、会社はなかなか変わりません。何らかのきっかけ=スイッチが必要です。
そこで、社長は組織図を眺め、組織の構造や名称などの形態を変えたり、事務所の引越しやレイアウトを変えたり、目に見える「カタチ」を変えて、変革のメッセージを伝えます。
しかし、どれだけ「カタチ」を変えても、変革は進みません。なぜなら、どれだけ服を着替えても、中身の人間が変わらないように、どれだけ体裁を変えても、それを使う人たちが変わっていないからです。
「そんなことは無い。着替えをすると気持ちも変わる。だから、変わるきっかけになる」という方がいます。
確かに着替えをすると、少し変わった気がします。しかし、一時的なもので、恒久的なものではありません。根本的には変わっていないのです。なぜなら、着替えのきっかけが、外部の圧力=強制力だからです。
社員の立場で考えてみてください。あなた(社長)に 「この服に着替えろ!」 と要求されたら、どう反応すると思いますか。喜んで着替える社員と、いやいや着替える社員がいます。例えば 「会社の制服を変更する」 と考えると分かりやすいかもしれません。喜んで新しい制服を着る社員と、前の方が良かったなぁと不満を持ちながら着替える社員がでてきます。
つまり、新しい制服を着こなし活発になる社員もいれば、違和感を持ち活力を失う社員もいるのです。
この要求単位を大きくして、日本の会社というくくりで思い出してください。過激に着替えを要求されたのは、2000年前後。今ではほとんど聞かなくなったカジュアルフライデーという要求です。
一部のお洒落好きなおじ様を除き、多くのサラリーマンが 「どんな服装がいいの?」 と混乱しました。要求されたコンセプトが理解されず、違和感しかありませんでした。どうして良いのか分からず、思考停止になったのです。
思考停止ですから、ガイドラインが示されると盲目的に従います。アパレル業界が仕掛けた標準モデルの真似をしました。そして、違和感をもったまま下火になりました。
その後、クールビスが国家から要求されました。この標準モデルは、スーツの上着を脱ぎ、長袖のワイシャツが半袖になって、ネクタイを外すぐらい。アパレル業界が設定した標準モデルは、スーツという既存のレールの延長線上でした。ですから多くのサラリーマンに比較的早く受け入れられました。許容範囲だったからです。しかし、変革とはあまり関係ありませんでした。
事実、この十年を振り返ってください。御社は、どれだけ変革しましたか。それは、あなたが満足のいくレベルですか。変革の判断軸は、企業文化=社風です。指示待ち組織から主体的な組織へ変わったなど、納得のいくレベルで社風が変わりましたか。
“間違いなく社風が変わった” という会社は、変革が進んでいます。しかし、“社風はあまり変わっていない” という会社が、ほとんどでしょう。
つまり、「カタチ」という表面を変えても、中身は変わっていないのです。こうして平成の時代は、時間を浪費してきました。
カジュアルフライデーがクールビスとなり、結局スーツの範疇に服装が戻ったように、変革をしたつもりで従来のやり方に戻るケースがほとんどです。
もちろん、従来のやり方にもメリットがあります。従来の姿を求めている顧客から、引き続きそれなりの仕事を依頼される点です。徐々に売上や利益が減っていくとはいっても、とりあえずの延命ができるからです。
しかし、長期的には危険です。社長の危機感が強ければ強いほど、従来のやり方のデメリットが頭をよぎります。だから次々と「カタチ」を変えて、デメリットを発生させないようにしようとします。
ところが、この狙いは裏目に出ます。いったい会社はどのようになるのでしょうか。
「カタチ」から入ると、無理が生じます。変わろうとする圧力と、変わりたくない圧力が、対立構造を持つようになるのです。それぞれの社員がブレーキを踏んだ状態で、逆方向にアクセルを踏んでいるようなものです。
そして、次々「カタチ」を変えると、対立構造は何層にも重なり、多面的に分裂を生み出し、バラバラになるのです。一体感を失い、社員のベクトルはバラバラ。お互いの良いところを打ち消しあい、身動きが取れなくなるのです。
つまり < 「カタチ」を変えると 組織がバラバラになる > のです。
これは変革ではなく、崩壊です。延命よりも危険です。従来の姿を求めている顧客を失い、新たな姿を求めている顧客にも出会えません。「カタチ」優先の社長は、令和時代になったとしても、組織の変革に失敗してしまうことでしょう。
それでは、どうしたら良いのでしょうか。
この答えは「キモチ」にあります。
全社員の気持ちが、素直に “変わろう” 、自ら “変わろう” という「キモチ」になると、会社は変革するのです。「キモチ」が変われば、自ら「カタチ」を変えて、戦い方を変えるようになるのです。
このとき重要なことは、変化に柔軟な “変わりたい派の社員” も、変化を恐れている “変わりたくない派の社員” も、ともに “変わろう” という「キモチ」になることです。
内側から湧き出た “変わろう” という「キモチ」は、変革の推進力になります。それぞれの社員がブレーキを緩め、同じ方向にアクセルを踏むことができるからです。
多様な社員がいます。それぞれの想いを理解し、お互いに受け入れ、現実的に将来を考えるのです。すると“今のやり方には限界がある”と共通の認識をします。すると、選択肢は「変革」の1択になります。
これは、社長と社員が共に導きだした結論です。環境の変化は止められず、共に乗り越えるしかないからです。そして、誰かを切り捨てるのではなく、それぞれの経験を受け入れ、次に活かす方法を考えるようになります。
お互いを否定し、気力・体力を奪い合う、浪費の関係ではありません。お互いを尊重し、それぞれの強みを活かす、創造の関係をつくりだします。これは前向きで、とてもあたたかく、良い意味で緊張感を持った組織です。
つまり、 < 「キモチ」を変えると 組織がホクホクになる > のです。
この「キモチ」を変えるプロセスには、明確な手順と、多くの留意点があります。安易に手を出すと「キモチ」が悪いほうに変わります。これは毒となり、会社という船をあっという間に沈没させます。
逆にコツを押さえると「キモチ」が良いほうに変わります。変革が確実に進むのです。それぞれの強みが共鳴し、斬新なアイデアを考え出し、組織の活力がどんどんと育っていく、稼ぎもどんどんと増えていくというニュアンスです。
「キモチ」を変えると、間違いなく変革が進みます。従来の姿を求めていた顧客を、次のステージに引き上げます。さらに、新たな顧客が集まってきます。「キモチ」優先の社長は、令和時代を乗りこなし、組織の変革に成功するのです。
変革のスイッチは「キモチ」。それを支援するのが「カタチ」。これが結論です。
まずは、「キモチ」を変えることが大切です。その後であれば、補助的に「カタチ」を変えても良いでしょう。このとき「カタチ」は、ターボ機能のように変革を後押しします。
令和時代を生き抜く社長は、自社の変革のスイッチを、意識的に押す人です。
それでは、御社はいつ、どのように変革のスイッチを押しますか? 我が社の将来を見据え、今決断しましょう。
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