ノートとペン 今週の「コジマ式 先行経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第96話前進と後退の分岐点。似て非なる会社の違い

前進する会社は 実現を固定点にする 後退する会社は 現実を固定点にする
第96話:「前進と後退の分岐点。似て非なる会社の違い」(前進する会社は 実現を固定点にする 後退する会社は 現実を固定点にする)

 

「会社を変革させるコツって何ですか?」
 

先日、ある勉強会でS社長からいただいた質問です。
 

S社はこの何年も “現状打破” “変革” といったキーワードを年度方針に掲げていました。しかし、社長が期待している20%も変革は進んでいないそうです。
 

< 組織の変革は難しい >
 

S社長のお話ぶりから、つくづく変革の難しさを感じているようでした。そして 「前進するために、我が社は変わらなければならない」 と強く覚悟を決めていました。“変化=正しいことだ” と確信していたのです。
 

「組織の変革は、変えるのではなく固定化させるほど上手くいきますよ」 と小島は答えました。
 

S社長が困惑した表情をしていたので、説明を続けました。
 

「つまり、変えようとしても会社は変わりません。前進するためには、固定点を設けましょう。その固定点を変えてはいけないんです」 と続けました。世の中で認知されている “理念経営” を推奨しており、理念を変えてはいけない…という話ではありません。社長の視点、そして社長が社員に浸透させる視点の話です。
 

S社長の視点の起点は、今現在です。なぜなら前提として “変わらなければならない” と認識しているからです。つまり、今現在を固定点として認識し、その上で理想の将来を考えているのです。
 

そして、変革推進派の社長は 「もっと危機意識を持て!」 と頻繁に社員に唱えます。S社長もその一人です。しかし、社長がどれだけ社員に危機感を煽っても埒が明きません。
 

なぜなら “危機意識” は 「感じるもの」 だからです。誰かに言われて 「理解するもの」 ではありません。
 

このとき、社員も社長と同様に今現在を軸に認識しています。すると、社員の本心では 「今まで我が社は存続してきた。だから、何だかんだいっても今後も存続できるでしょ」 と安易に判断してしまうのです。
 

これまで自分達が環境変化と共に緩やかに変化してきた…という事実はすっかり忘れてしまい、良くも悪くも今現在が安定していると感じるのです。これは人間の特性です。
 

実際、技術革新や社会の意識の変化は、未だかつていないスピードで起きています。過去乗り切れたからといって、今後も乗り切れる保証は一切ありません。にも関わらず 「大丈夫でしょ」 と高を括るのです。
 

ですから、実際に給料の振込が止まったり、事業所が続々と閉鎖されたりしなければ、社員に本当の危機意識は芽生えません。そして、もし本当の危機意識をもてたとしても、その時は優秀な社員から順番に会社を去っていきます。
 

人は、動物の一種ですから生存本能を持っています。つまり、安全安心を求めます。ゆえに、社員は得体の知れない未来を自ら目指すより、社長に多少怒られる今現在の方が、安心できるのです。変革後の状態は想像できないし、上手くいく保障もないからです。
 

とはいっても、社員として仕事をしなければなりません。だから、何らかの取り組みを進めています。そして変革に賛同しているように振る舞うのです。しかし、内面では 「社長も言っていることだし、あわよくば変われたらいいな」 と思いつつ 「誰かがリスクを背負って先人を切ってくれないかなぁ」 と待っているのです。このように、全社員が他の社員の出方を伺うので、組織は前に進まないのです。
 

変革に失敗する会社は、社長も社員も今現在を起点にしています。つまり、後退する会社は、現実を固定点にしているのです。
 

< 後退する会社は 現実を固定点にする >
 

前進する会社は、似て非なるものです。起点となる視点、固定点が違うのです。
 

< 前進する会社は 実現を固定点にする >
 

前進する会社、変革できる会社は、未来を起点に考えています。つまり、理想の将来が実現した状態を固定点として認識しているのです。
 

だから、社長は理想の将来にリアリティを持たせます。そして、このリアリティを感じさせることにとことんこだわります。
 

すると < 組織の変革は難しい > ではなく、 < 変革していない旧態依然とした組織を維持する方が難しい > と感じるようになるのです。
 

人は、常に相反する二つの観念の狭間で揺れ動いています。今回の例で言えば 「(変わりたいけど)変わりたくない」 「(変わりたくないけど)変わりたい」 といった観念です。
 

社長自身に生じる葛藤も、社員の中に生じる葛藤も、この二つの観念の影響です。だから、この観念に優先度を付けてあげてください。どちらを表出させるのかは、経営者自身の意識次第なのです。
 

現実を起点に意識を固定すると 「(変わりたいけど)変わりたくない」 モードが優先されます。逆に、理想が実現した未来を起点に意識を固定すると 「(変わりたくないけど)変わりたい」 モードが優先されます。つまり、現実を固定するのではなく、意識的に理想が実現した将来を固定点にするのです。
 

多くの社長は、未来から逆算して考えているつもりです。でも、結局は現実から考えています。もし、あなたの組織が、期待するほど前進(変革)していないのであれば、社長であるあなたの今の視点に問題があります。S社長のように今現在を起点にしているのです。
 

ですから、何よりも社長自身が視点を変え、やり方を変えなければなりません。ご自身の固定点を変え、付随する言動を変え、我が社を変えるのです。
 

社長は 「何度言っても、社員に思いが伝わらない」 とぼやいている暇はありません。社長の究極の思い、理想の未来を伝える工夫が足りないだけなのです。社員に伝わる表現で、社員が理解できる方法で、社員に響く言葉で、理想の未来を伝えていないだけなのです。
 

本当のリーダーは、変革を導く人です。変える人なのです。我が社が前進するのか、後退するのか、分岐点はココにあります。
 

まずは社長自身が、 「前進した将来の我が社が、当社の当たり前の姿である。これが事実である」 と確信するまで考えつくしてください。そして、実現した理想の将来の価値、それが実現できる理由、実現のプロセスで生じる課題とそれを克服できる理由を、ご自身で言葉にして下さい。
 

社長が理想の将来をどれだけ確信しているのか。前進した未来が、どれだけ事実であると認識しているのか。 「実現して当然だ!」 と確信するまで考えつくすのです。この社長の認識一つで、我が社の変革の80%が決まります。
 

社長が現実から眺めているレベル、「将来なれたらいいな」 と考えていては、御社は変わりません。何年経っても社員に伝わらないからです。逆に、社長が 「できて当然でしょ。なぜなら…」 と未来から認識していれば、そして社員に伝わる表現で伝えていれば、変わります。社員も 「実現して当然でしょ」 と感じるようになるからです。
 

すると、変革する前の 旧態依然とした姿=現実の姿 に違和感を持ち始めます。社員は、正しい危機意識を持つことができるのです。そして、自ら変革するようになるのです。
 

歴史を変えた名経営者、変革を起こし業界の常識を書き換えた名経営者は、皆実現した将来が当たり前になると確信していました。現代の名経営者で言えば、稲盛和夫氏、孫正義氏、柳井正氏、スティーブジョブズ氏…。歴史上の名経営者で言えば、渋沢栄一氏、松下幸之助氏、本田宗一郎氏…です。
 

例えを上げればきりがないでしょう。好不調の波はあれど、彼らは皆、理想の未来が実現する理由を考えつくし、当然やってくると確信していたのです。確信していたからこそ、その思いに社員が共鳴し、顧客が共鳴していくのです。
 

今現在の現実を固定点として、あれこれ手法を変えても、結果は変わりません。現状維持が優先され、衰退を招くのです。理想の将来が実現した姿を固定点として、実現して当然と確信するまで考えつくし、言語化していきましょう。
 

この取り組みは、とても骨の折れる活動になるでしょう。ただし、それ以上に我が社を良い方向に導く原動力となります。企業経営は、お遊戯や勉強会ではありません。生死をかけたプロ経営者同士の戦いです。しかも、ルールの無い市場で戦うのです。だから、簡単ではありません。子供でも分かることです。ですから今、本気で向き合う価値があるのです。ぜひ、御社も挑戦してみてください。次は、御社の番です。

 

※追伸:当社は、“理想の将来が実現することは当然だ”  と確信していく仕組みとして自律型組織に変革する条件づくりとして 【3年分 受注残をつくる経営】(業績3年 先行管理のすすめ方)を公開しております。弊社セミナーだけでお伝えする具体事例やその留意点があります。興味のある社長様は、ぜひセミナーにご参加ください。 

 

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