第71話御社の顧客開拓や商品開発が失敗する理由
「3度目の正直を期待している。今期の目標予算は必ず達成してくれよ!」
期待していた東京営業所。2年連続で目標未達。A社長は、いらだつ気持ちを抑え、目標必達の重要性を伝えます。
「はい。今期は必ず目標予算を突破します」
N所長は、返事をしました。
目標予算を突破すること。営業部門においても、企業の存続においてもとても大切なことです。
しかし、社長がどれだけ<目標予算を突破する重要性>を伝えてもあまり意味がありません。なぜなら、幹部がどうやって突破するのか、具体的なイメージがわかないからです。実際、多くの中小企業では、次のような状況になっています。
N所長が返事をした数日後。東京営業所の会議の様子です。
「今期こそ目標達成するぞ。予算は必達だ。そのためにも、新規顧客を○件開拓すること。既存の得意先も重点を絞って深耕開拓すること」
N所長は、新規開拓の重要性を伝え、営業担当者ごとの目標予算や目標開拓件数を発表しました。
目標予算を突破するために、新規顧客の開拓はとても大切なことです。既存の得意先を深耕開拓することもとても大切です。
しかし、幹部がどれだけ<開拓する重要性>を伝えてもあまり意味がありません。なぜなら、担当者がどうやって開拓するのか、具体的なイメージがわかないからです。悲しいことに、多くの営業所では、次のような状況になっています。
「はい。かしこまりました」
営業担当者は、あたかも合意をしたかのような返事をします。しかし、実際は異なります。あくまで、その場をやり過ごすための返事です。実際には (またこの話か…。労力が増えるだけ迷惑だな。俺らに開拓なんて、簡単にできるわけがない…) と考えています。
こういった状況にも関わらず、士気を高めようと、営業所にはスローガンが貼り出されます。
“価値ある提案が必要だ”
“ソリューション営業をしよう”
形だけのスローガンほど虚しいものはありません。ほとんどの営業現場では、いつも通りの御用聞き営業がなされているだけです。
それにも関わらず、KPIを設定し、細かく行動管理をする営業所は、さらに虚しくなります。御用聞き営業をゴリゴリと推進しても、労多くして功少なしです。同業他社が嫌がって断るような、魅力の無い案件しか、声をかけてもらえません。
※KPI(key performance indicator の略。目標を達成するためのプロセスを、計測・評価する中間指標のこと。例えば、訪問件数や提案件数が上げられる)
こうなると、営業担当者の思考は、言い訳を考えはじめます。矛先が、自社の商品・サービスに向かうのです。
「我が社は、中途半端な商品・サービスしかない。しかも高いから売れ無いんですよ。もっと魅力がある商品・サービスを、もっと安く提供できたら、どれだけでも売れますよ」 と。
正直なところ、本当に魅力のある商品・サービスが提供できるのであれば、営業担当者はいりません。勝手に売れるからです。
この重要性を知っている社長は、商品やサービスの開発に注力しています。 <何を売るかがすべてだ!> と考えているからです。
しかし、どれだけ商品やサービスの開発に注力しても、限界があります。魅力のある商品・サービスを提供している中小企業の多くは、この開発力そのものが、社長のセンスや技術力に依存しているからです。
会社の歴史と共に、必ず社長も歳を重ねます。人生100年時代と言っても、やがて体力・気力が落ちてきます。すると、かつて切れ味の良かった社長のセンスが環境変化に適応できなくなったり、技術革新で戦い方が変わってもやり方を変えられなかったりするようになります。つまり、独自の開発力を維持・育成できなくなるのです。
いろいろ書きましたが、上記のようなパターンは、いずれのケースも努力のポイントを間違えているのです。延命治療にすぎず、将来はありません。この点に早く気がついてください。
<開拓しても開発しても、どれだけ努力を重ねても、延命治療に将来なし>
もし、御社の取り組みが、上記のような延命治療に注力しているのであれば、今すぐ見直しをしてください。腰を据えて根本治療を考え、着手するのです。
営業部門の仕事は、自社商品・サービスを売ることだけではありません。市場や顧客の隠れたニーズを探ること、それを開発部隊に提案することも仕事です。さらに、開発部隊が大切にしたい自社の強みを、隠れたニーズとマッチさせること。この両者が出会う場所。これを仕組みで見つけるのです。
そのためにも、これまでの歴史と将来の可能性をつなぐ仕組みが必要です。また、どのような目的で何をどうやっていくのか。社長の頭の中だけではなく、社員の頭の中だけでもなく、お互いの頭の中を共通認識させることがとても大切です。これも、自然とお互いの頭の中を共通認識できるような仕組みが必要です。
つまり、目先の開拓や開発ではなく、将来につなげるための考察が重要です。この仕組み構築を最優先させるのです。延命治療ではなく、根本治療に着手してください。これが自社が永続発展していくためにやるべきことです。新たな戦い方や、新たな商品・サービスの生み出すための考察する仕組みを構築してください。
開拓や開発。延命治療に将来はありません。考察や構築。根本治療に希望の未来があります。
最後に大切なことをお伝えします。延命治療を優先するかぎり、いつまで経っても根本治療に着手できません。順番が逆なのです。まずは、活動の中心を根本治療に移し、根本治療に着手すること。そして、根本治療を土台にしながら、延命措置をとるしかないのです。
さぁ、御社は今このタイミングで、どのような根本治療に取り組みますか。今一度、じっくりと考えてみてください。
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