ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第43話我が社がフレームワークに躍らされる前に…

あの有名なビジネスフレームワーク、躍らされて終わるのか。使いこなし武器にするか。
第43話:「我が社がフレームワークに躍らされる前に」(あの有名なビジネスフレームワーク、躍らされて終わるのか。使いこなし武器にするか。)

 

 

「どのフレームワークで考えたらよいのでしょうか」
 「このフレームで考えたのですが、解釈は正しいでしょうか」
 

先月、ご相談にこられたH社長。もう少しじっくり話がしたいとお電話をいただき、後日改めてお会いすることになりました。
 

フレームワークとは、汎用的に用いられる「枠組み」「骨組み」のこと。「組織」や「体制」のような「構造」というニュアンスも含まれています。ビジネスフレームワークとは、仕事を進めていく上で氾濫する多くの情報を整理・共有し、何らかの結論を導くための道具だと解釈しています。
 

パッと思いつくだけでも、さまざまなものが上げられます。厳選すればある程度絞れますが、視野を広げて調べてみると10種類、20種類、50種類、100種類…、とかなりの数があります。また分類でみると、経営戦略系のもの、マーケティング系のもの、マネジメント系のもの、オペレーション系のもの、アイデア系のものなど、こちらも多種多様です。
 

基本的なビジネスフレームワークほど、知っていて当然というニュアンスで会話がなされます。しかし、実際はよく分かっていなかったり、使いこなせていなかったりするケースがほとんどです。今さら聞けないということもあるでしょう。そこで、我が社の実態にあわせてどう活用するのか、H社長はご質問をなされました。有益なツールがあれば、活用するにこしたことはない。そんなお気持ちだと思います。
 

こういったフレームワークを利用するメリットは、
・多面的に着眼が示されているので、広い視野で考えることができる
・手順が明確かつ図表化されているため、情報を整理しやすく共有もしやすい
・理論背景があるため、信頼性が高く感じられ、何らかの結論をだしやすい
といったものが上げられます。
 

一方で、デメリットは、
・フレームに含まれない着眼が考慮できず、漏れが生じる
・何となく分かって気になってしまい、安易に結論を出してしまう
・どのフレームワークで検討するのが自社にとって最適なのか、選定判断が難しい
といったものが上げられます。
 

フレームワークそのものは、ビジネススクールや企業研修、書籍やインターネットなど、さまざまな場面で学ぶことができます。ところが、ほとんどのケースで初期段階ではメリットを享受できるものの、すぐにデメリットが出るようになります。
 

例えば、フレームワークを「単に情報を整理するための道具」としてとらえ、「整理しただけで満足して終わり」という症状がでてきます。本来であれば、全体を俯瞰したうえで、どのように活用するのかまで描けなければなりません。また、気に入った特定のフレームワークで何でも解決しようとしてしまいます。
 

そして、時間の経過とともに輪を掛けてデメリットが大きくなります。しかも、使っている本人には自覚症状がありません。ここに大きな問題があります。
 

あの有名なビジネスフレームワークに、躍らされて終わるのか。使いこなし武器にするか。
 

この違いはいったいどこにあるのでしょうか。
 

そもそも特定のフレームワークは、それが誕生した歴史背景があります。
例えば、経営戦略における有名なフレームワークは、次の6つのアプローチの順に検討され、発展してきました。
※お急ぎの方は、以下6つのアプローチの解説を読み飛ばしても大丈夫です
 

【 アプローチ1 】:計画戦略学派
 <データと分析によって合理的な経営戦略をプランすることこそが、経営の役割である>という立場をとる考え方です。「組織は戦略に従う」という言葉で有名なアルフレッド・チャンドラー氏や、「成長マトリックス(市場×製品:既存×新規)」で有名なイゴール・アンゾフ氏が上げられます。ボストンコンサルティンググループの事業ポートフォリオ・マトリクス(問題児・花形製品・金のなる木・負け犬)もその1つです。
 
 
■【 アプローチ2 】:創発学派
 <分析によって合理的な戦略を策定しようとするのは不可能である。戦略はミドルマネジャーによる現場での判断と行動の積み上げで形成できる>という立場をとる考え方です。「ミドルアップ」「経験による現場での判断」で有名なヘンリー・ミンツバーグ氏が上げられます。
 
 
■【 アプローチ3 】:ポジショニング学派
 <競争市場において自社のポジションをどう取るかということが、最も有効な戦略パターンを決定する鍵である>という立場をとる考え方です。「3つの競争戦略類型(コストリーダーシップ・差別化・集中戦略)」「5フォース分析(5つの競争要因)」「クラスター分析」で有名なマイケル・ポーター氏や、「競争地位別戦略(リーダー・チャレンジャー・ニッチャー・フォロワー)」で有名なフィリップ・コトラー氏が上げられます。
 
 
■【 アプローチ4 】:経営資源学派
 <自社内部の経営資源に基づいてこそ模倣困難な戦略を策定できる>という立場をとる考え方です。「VRIO分析(価値・希少・模倣困難・組織化)」で有名なジェイ・B・バーニー氏や、「コア・コンピタンス(自社の核となる技術や特色:有益・真似できない・展開の幅が広い)」で有名なゲイリー・ハメル氏とC・K・プラハラード氏が上げられます。
 
 
■【 アプローチ5 】:ゲームアプローチ
 <ゲーム理論を経営戦略に適用し、相手の出方を読みながら、相互の打ち方の成り行きを予想する>という立場をとる考え方です。「ゲーム理論で勝つ経営」で有名なA・M・ブランデンバーガー氏とJ・ネイルバフ氏が上げられます。
 
 
■【 アプローチ6 】:学習アプローチ
 <技術や情報、経験といった「見えざる資産」が蓄積されていくプロセスそのものに注目する>という立場をとる考え方です。「学習する組織(5つのディシプリン)」で有名なピーター・センゲ氏が上げられます。
 
 

経営戦略の視点で代表的なものだけでもこれだけあります。既にお伝えしたとおり、マーケティング系やマネジメント系など、他の着眼もあります…。
 

だんだん説明を書くのがしんどくなってきました。おそらくコラムをご覧になっている皆さんも、読むのがしんどいのではと思います。
 

実は、ここに盲点があるのです。こういった理論の歴史背景を十分に理解し、使いこなすためには相当の資源を投入しなければなりません。しかし、時間は止まってくれませんし、経営資源には限りがあります。小島自身が十分に理解しているのかと問われると、正直なところイエスとは言えません。
 

今回、上記6のアプローチを整理しただけでも、経営戦略を理念やビジョンの立場からとらえたり、組織の立場からとらえたりしています。また、外部環境からとらえたり、内部環境からとらえたりしています。知らないよりは知っていたほうが良いでしょう。しかし、全体を理解し意図的に使いこなせるようになることは、理想であって簡単なことではありません。最低限の知識は必要です。しかし、社長は学者やコレクターではなく経営者です。このことを間違うわけにはいきません。
 

つまり、経営におけるビジネスフレームワークは、目的を明確にしたうえで、いずれかの立場を決めて活用すべきなのです。ここを認識していなければ、躍らされて終わります。
 

コンサルタント風の研修講師も多くいます。こういった方の言葉を鵜呑みにし、選定するフレームそのものを間違えてしまったらどうなるのでしょうか。そのフレームの前提条件と我が社の前提条件は、本当に一致しているのでしょうか。
 

また、ほとんどのケースで、フレームワークは商売のネタ(無形の商品)になっています。コンサルティング会社や企業研修会社の売上に貢献するために、フレームワークを使うのでしょうか。我が社の将来のためにフレームワークを活用するのではないでしょうか。
 

あの有名なビジネスフレームワークに、躍らされて終わるのか。使いこなし武器にするか。
 

どのような立場・姿勢でフレームワークを使うべきなのか。小島はH社長にお伝えしました。
 

「単に知識や事例として、ビジネスフレームワークを求め、手っ取り早く使おうとすると間違えてしまいますよ。コンサルティング会社に躍らされて終わるケースが多いので注意してください」と。
 

H社長は、真剣な眼差しで小島を見つめていました。小島は続けました。
 

「使いこなし武器にするためには、自社独自のフレームを創り出そうとする姿勢が必要です。つまり、分析のために既存のもっともらしいフレームを求めるのではなく、価値を創造するためのフレームを選定してください。そして、新たなフレームを自ら創ってください」と。
 

つまり、<「独自の儲かるフレーム」や「独自の社員が育つフレーム」を創り出すようなフレーム>に絞って活用した方が良いですよとお伝えしました。「釣った魚を分析するフレーム」ではなく、「魚を集め自力で釣りあげるためのフレーム」といった方がわかりやすいかもしれませんね。
 

H社長は、静かにうなづきました。得心が行ったのだと思います。
 

御社は、いまどのようなフレームを活用していますか。そして、どのフレームで新たな価値を創造していきますか。ぜひ、価値を創造するためのフレームワークを選定してください。
 

 

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