第34話改善と改革 経営者が優先すべき力点とは
「いろいろ活動しているのですが、なかなか次のステージに進めません…。」
A社長からのご相談です。
創業25年。設備の保守メンテナンスを得意とする会社を経営しています。コツコツと信用を重ねここまで成長してきました。A社長の思いもあり、世の中の技術革新にあわせ積極的に投資をしてきました。また、得意先には予防保全の重要性を伝え続けました。そして、定期メンテナンスの仕事が増え、ここ5年ほどは安定的に業績を上げられるようになりました。
真面目な社員が多く、「改善」活動が定着しているそうです。各部門主体で毎月PDCAサイクルを回しています。一見、問題が無いように見えますが、長期的には課題があります。得意先の多くが技術革新の波にのまれつつあるからです。主要得意先では、今後、既存設備の稼働率が下がり続けるだろうと予測しています。この影響で、A社長の会社も安泰ではありません。
「何も手を打たなければ、近い将来、我が社の業績は大打撃を受けてしまう…。」
A社長は「改革」というキーワードを全社にかかげ、変革を図ろうとしています。新規事業として、技術コンサルティング部門を立ち上げ、得意先が新技術を導入するための支援をすべく、準備を進めています。しかし、なかなか事業が立ち上がりません。
■1.改善と改革。どちらが大切か?
A社長は、毎月の改善活動の進捗を確認しつつ、新規事業の立ち上げを指示していました。中には、両方の活動に関わるメンバーもいます。
当然、「改善」活動は大切な取り組みの一つです。
改善とは、現状をベースに、その延長線上で方法や手続きを変えること。改良を重ね、より良い状態をつくりだす。計画をたて、実行し、評価し、改善する。管理の基本であるPDCAサイクルを回します。言うは易し、行うは難し。定着させることは、一般的に簡単ではありません。しかし、A社長は、時間をかけて定着させることに成功しました。とても、素晴らしいことです。
また、「改革」活動も大切な取り組みの一つです。
改革とは、将来から逆算し、考え方そのものを変えること。方法や手続きを根本的に変え、目的が実現する状態、新たな価値をつくりだす。仮説を立て、実行し、観察する。PDSeeサイクルを回しながら変化点を見つけ、新たな価値を創造する。こちらも簡単ではありません。実際にA社長は、試行錯誤しているものの突破口が見えず、困っていました。
「改善」も「改革」。どちらも大切です。しかし、経営資源は限られています。
我が社を次のステージに進めるために、貴社に必要なアプローチはどちらでしょうか?
我が社は、改善に力点をおいた方が良いだろう。
我が社は、改革に力点をおいた方が良いだろう。
あなたが必要性を感じるのは、「改善」と「改革」、実際どちらでしょうか?
■2.改善と改革。どっちも必要は、いい子ちゃん回答
完璧主義の社長は、「どっちも必要だ!」と即答します。
しかし、どっちも必要なんていい子ちゃん回答はダメ。まずは、この事実に気づいてください。両方を実現する前に、弊害ばかりが発生し、いずれの活動も頓挫するからです。どっちも必要であれば、いずれか片方を選んでください。
なぜなら、「改善」と「改革」求める方向性が真逆だからです。
「改善」とは、現状のルールをもとに効率アップを狙う活動です。そのために、地面をならし、表層を整えることに注力します。
一方、「改革」とは、ルールを変えて新たな価値創造を狙う活動です。そのために、地面を掘り起こし、土壌改良が進むよう根本から整えなおすことに注力します。
A社長は、どっちも必要派。この両方を同時に推進しようとしていました。
そのため「我が社をより良くしたい」と共通の願いを持った社員達が、真逆のアプローチを同時進行で行います。
例えば、工事現場を想像してください。同じ現場で、<地ならしをする社員>と、<地面を掘り起こす社員>が、混在しながら同時に工事を進めるようなものです。
お互いの取り組みが、相殺され一向に工事が進みません。良かれと思って取り組んでいるのに、お互いに足を引っ張り合ってしまう。やがて、社員同士が喧嘩をしてしまいます。
改善も大切。改革も大切。二兎を追うものは、一兎も得ず。
いい子ちゃん回答ではなく、どちらかを選んでください。どちらか片方を選択しなければ、社内のエネルギーをフル活用することができません。
■3.社長がすべき本来の仕事は、改革を選択すること。
それでは、「改善」と「改革」のどちらを選択すると良いのでしょうか。
もちろん、自社の置かれた状況に応じて、判断は異なります。その上で、次のステージを目指すのであれば、経営者自身が意図的に「改革」を選択できる準備をしておいてください。
なぜなら、企業は環境適応業だからです。経営環境が変化し続ける限り「現状維持は、衰退である」からです。いずれかの段階で、戦い方を根本的に変えなければなりません。
繰り返しになりますが、「改善」は既存のルールがベースとなります。このため、幹部社員も一般社員も、改善する必要性を認識し、自ら考え行動することができます。
しかし、「改革」はルールそのものを変えることになります。一般社員はもちろん、幹部社員でさえ、自身の責任のもと判断することはできません。社長の許可が必要だからです。
我が社を次のステージに進めるためには、現状を手放す覚悟と前に進む決意が必要です。
「現状のやり方を止めて、新しいやり方に変える」この判断は、経営者にしかできません。経営者が、この覚悟と決意を持たなければ、何となく「改善」に逃げてしまいます。覚悟と決意があれば、意図的に「改革」に挑戦することができます。
A社長は、どっちも必要と両手を握り締めていました。ここに問題がありました。経営者として「改革」を選択し、全社に周知徹底すれば、改革が進むでしょう。そして、不思議なもので改革の目処がたったとき、既存事業の改善もなぜか進みはじめます。
自らの意思で「改革」を選択し、社内外に宣言する。そうしなければ「改革」を進めることはできません。「改善」と「改革」。御社にとって今、何が必要なのか。しっかりと見極めてください。安定を手放し、現状を破壊することで、はじめて次のステージが創造できます。
どっちも必要だと、いい子ちゃん回答をするのではなく、ずばりどちらかを選択してください。さぁ、次に変革に着手するのは御社の番です。
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