第73話社長が押さえるべき「令和時代の戦い方」
「計画を立てて、確実にやること。当たり前のようですが、根本的に間違えています。そんなことをいつまでもやっているから会社がダメになります」
経営者向けのセミナーで、小島がいつもお話する内容です。
先日、この内容をお伝えする際、いつもより力が入ってしまいました。なぜなら、セミナーを開始する前に、T社長との会話で次のようなやり取りがあったからです。
T社長:「もうすぐ令和ですね。ちょうど今、経営計画の策定中なんですよ。今日はしっかり学んで、来期の計画に反映させようと考えています。本日はよろしくお願いします」
熱心に小島に話しかけます。小島は慎重に言葉を選び、大切なことをお伝えしました。
小島:「経営計画の策定中ですか。新時代の幕開けですから、あまり計画を大切にしすぎないようにしてください」
T社長は、不思議に思ったのでしょう。一瞬、呼吸が止まったかのように見えました。なぜ計画を捨てたほうが良いのか。同族会社の社長は、特にこの着眼を抑えておく必要があります。
そこで今週は、< できる同族会社の「令和時代の戦い方」 > をお伝えします。
T社長は、大手企業の勤務を経て、数年前に先代から経営を引き継ぎました。初回は幹部社員にヒアリングをしながら社長自身が中期経営計画を策定しました。2年目以降は幹部社員とともに計画を策定しています。
どうやって計画を立てるのか、当初はT社長も幹部社員も悩み、とても難航したそうです。そして数年が経ちました。毎年計画を策定しているうちに体裁が整い、満足がいくレベルになってきました。
経営者として、場当たり的に経営をしていては話になりません。しかし、中期経営計画にこだわりすぎても問題です。間違った方法で取り組むと、意味がないどころか、害悪になるからです。
なぜなら中期経営計画にこだわればこだわるほど、「結果を出すこと」よりも、「計画を立てること」や「計画を遵守すること」が大切になるからです。
一般的な事例です。例えば3ヵ年の中期経営計画を立案します。そして中計に基づき、今期の方針や年度計画を立案します。また、3年ごとに中期経営計画を立案しなおす会社もあれば、毎年ローリングプランとして見直す会社もあります。
このときの問題は、そもそもの話です。計画を立てることに限界があるのです。3ヵ年の中期経営計画ですが、3年後の環境変化を正確に見抜き、的確な計画を立てられるのでしょうか。
「社長として正確に見抜きたい」という気持ちは分かります。しかし、一人の経営者たるもの人間であって、神様ではありません。何らかのシグナルをヒントに予測を立てるのが精一杯です。
正確に変化を見抜くことなんてできません。悩んだ挙句、過去の延長線レベル、同じ視野の高さで計画を立ててしまいます。結局、同じ穴のムジナなのです。
それでは、なぜ3ヵ年の中期経営計画があるのでしょうか。かつては、変化の速度がゆっくりとした時代があり、その当時とても有益な方法だったからです。前提が同じであれば、前例を頼りに計画的に取り組むことで、無駄なく前に進み、成果が出せたからです。
ところが、今は変化の速度がとても早い時代です。前提がコロコロ変わるため、計画に限界があります。だから前例を頼りにしたとしても、再現性がありません。さらに間違った方向に突き進んでしまうリスクもあります。
社員の立場で考えてください。社員は、決められたことをやることが仕事だと思っています。つまり、計画の妥当性を担保できない時代なのに、社員は計画を遵守することを優先してしまうのです。この状況で良いわけがありません。
さらに、T社長のように幹部社員を巻き込んだ中期経営計画づくりが順調に回りだすと、さらに無駄を発生させます。目的を忘れ、計画を立てることが目的になるからです。
おそらく中期経営計画は、年々体裁が立派になっていることでしょう。だいたい毎年同じような内容だけど、変化がないと怒られる…。そんな気持ちから社員が気を利かせて体裁を整えているだけです。
それでも同族会社の経営者は、とりあえず満足してしまいます。社長が驚くような内容はそもそも社員から上がってきません。社員に期待をしすぎても、限界があると思っています。だから、体裁が良くなれば少しは進歩したと、自分に言い聞かせるからです。
実は、同族会社だけでなく、大手企業や上場企業も同じような状況です。どの会社を見ても、中期経営計画には“変革”だとか“改革”という文字が並びます。ところが、一部の企業を除き、実際には具体策がありません。
前年の計画を焼き直したレベルになっているのです。だから、環境変化に適応できなくなるのです。大手企業といえども経営がジリ貧になっているのはこのためです。
御社は、ジリ貧になっていく大手企業と同じような戦い方を続けるのでしょうか。計画を大切にする戦い方は、もう時代遅れです。
それではどうしたら良いのでしょうか。同族企業の強みの一つに、社長の覚悟一つで、柔軟にスピーディに戦い方を変えられることが上げられます。あなたもこの強みを使ってみると良いのです。
平成は、失われた30年(31年)と言われています。経済が伸び悩んだ原因は、昭和の戦い方を引きずってきたからです。つまり、たいして変わらない地図を握り締め、電車やバスの路線図をみながら、盲目的に目的地へ到着する計画を立てていたからです。
平成になって若干進歩した点を上げるなら、自動車でカーナビをセットし、混雑状況を考慮しながらルートを選択するようになった程度です。公共交通機関を使用するマナーや道路交通法など、いずれも既存のルールに沿って、移動しようとしていたのです。だから、延命はできても現状を打破できませんでした。
平成から令和へ。新時代の幕開けです。元号が変わるため、社会の空気感がこれまでとは異なります。“新しい時代に生まれ変わるぞ!” という気運がやってきたのです。社員一人ひとりの心も、変化を受け入れやすくなっています。自社の戦い方を変える最大のチャンスがやってきたのです。それでは、御社は、これからどのように戦っていけばよいのでしょうか?
「平成」から「大正」をみると、とても古く感じられます。顔の見える商いの時代から、モノの時代、コトの時代へ。戦い方が大きく変わりました。
同様に、「令和」から「昭和」をみると、とても古く感じるようになるでしょう。モノの時代から、コトの時代、トキの時代へ。実際に戦い方を変えなければなりません。既存のルールやレールに従っていては、変化は起こせません。
言うまでも無く、今は前提が変わるタイミングです。この変化のタイミングには、それにあった戦い方があります。同族会社の社長は、特に戦い方を変え、この時代の変化を掴み取ってほしいのです。
つまり、令和に変わる今、同族会社を取り巻く世界は大航海時代なのです。既存のルールやレールは、海の底に沈みました。覚悟を決め、新たな大陸の発見を目指す時代です。荒波が立つ大海に飛び出さなければなりません。全世界で異常気象に見舞われたり、目まぐるしく変わる天候のように、経営環境は激変しています。だからこそ、今、海に旅立つのです。
コロンブスは、インドや中国大陸への航路を探す中で、アメリカ大陸を発見したと言われています。挑戦すれば、想定を超えた成果をだすこともできるのです。
このときに必要なものは、方向性を示すコンパスと、船が横に流されないようにするキール(竜骨:船底中央を縦に、船首から船尾にかけて通すように配置される強度部材)です。海図を手元に天気予報を確認しながらも、実際のルートは海の状況にあわせ柔軟に選定していきます。どのような航海になるのか、当然、海に出てみなければ分かりません。
海にでると波風が四方八方からやってきます。船長は、波風にあわせて船員に指示を出します。そして、船員とともに力を合わせて船を前進させるのです。
途中でエンジンが故障することもあるでしょう。偶然の出来事は、あらゆるケースでやってきます。食料の確保や、船員のケアも必要です。
それでも、船員やその家族、新しい大陸を必要としている人たちのために、遭難するわけにはいきません。
偶然を必然ととらえ、柔軟に戦い方を変えるのです。エンジンに頼るだけでなく、我が社をヨットのように変化させるのです。自然を味方につけて前進させるのです。社員と協力し、同族会社ならではの帆を張り前に進むのです。
たとえ逆風が吹き荒れていたとしても、気圧の差を利用し揚力を引き出すのです。そして、ジグザグしながらも確実に前進するのです。
どのような天候であれ、偶然を必然ととらえ、それを活用し前に進むのです。やがて穏やかな海に変わり、そして新大陸に到着します。
< 沈没する同族会社は、計画を大切にする >
計画を大切にする会社は、計画に翻弄され、環境変化に適応できなくなる時代です。やがて社会に淘汰されるでしょう。
< 躍進する同族会社は、方角を大切にする >
方角を大切にする会社が、偶然を必然と活かし、環境変化に適応していく時代です。新大陸に賛同した人たちと、豊かな社会を創り出すことでしょう。
「平成」が終わる今、御社はそれでも「昭和」の戦い方を続けますか。新たに「令和」時代の戦い方に、挑戦してみませんか。
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