ノートとペン 今週の「コジマ式 先行経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第94話笛吹けど躍らず。なぜ我が社が変革しないのか

過去よりも未来 変革の追及が 本当の変革を止める
第94話:「笛吹けど躍らず。なぜ我が社が変革しないのか」(過去よりも未来 変革の追及が 本当の変革を止める)

 

「創造のための破壊。重要ですがなかなか進みませんね」
 

S社長からご相談がありました。先週のコラムを読んで 破壊 → 創造 → 安定 → … のサイクルは理解している。ただ、創造のための破壊が上手くいかず困っている。とのことでした。
 

S社長は、ご相談の中で「我が社の古い体質をぶっ壊す!」というフレーズを何度も使いました。
 

そこで、小島が「社長が今のお気持ちで変革を追及すればするほど、上手くいかないですよ。イソップ寓話と同じです」とお伝えしました。
 

S社長は「しかし、我が社はこのままではダメなんです。古い体質のままでは…」とおっしゃいました。
 

古い体質のままでは時代に取り残されてしまう。企業は環境適応業。現状維持は衰退と同じ。このままでは我が社の存続が危ぶまれる。社員、顧客をはじめ、多くの人々に迷惑をかけることになる。何しろ、自分の代で会社を潰すわけにはいかない。
 

一経営者として、S社長のお気持ちはとてもよく分かります。ここに問題はありません。
 

しかし、その姿勢に問題があります。なぜなら、過去を否定しているからです。この姿勢で、変革を追及すればするほど、上手くいかなくなります。
 

ただし、スローガンとしては(外部から見た場合)とても魅力的に響きます。対外的なプロモーションとしては、耳障りが良いフレーズです。
 

昔話ですが2001年頃を思い出してください。「自民党をぶっ壊す!」というフレーズで旋風を起こし、選挙戦を勝ち抜いた小泉元総理がいます。郵政民営化などを掲げ票を集めました。
 

選挙戦は圧勝でしたが、郵便局で働く方はどれくらい自民党に投票したのでしょうか。外部から見れば <変革した方が良い> と見えることも、当事者になれば <変わることが怖い> と感じてしまいます。
 

人は、変わりたい生き物ですが、同時に変わりたくない生き物です。特に、他人から変化を強要されると、変わりたくない気持ちが強くなります。
 

S社長は、社外ではなく社内に向かって変革を要求しています。社員は当事者です。社長が当事者である社員に、自らをぶち壊せ!といっているのです。だから、社員は頭で理解しても、本能的に抵抗してしまうのです。
 

既得権のある古参幹部や既存業務で貢献している社員ほど、この傾向は強くなります。主流派が本能的に抵抗するのです。だから変革が上手くいかなくなるのです。
 

外圧から強引に変えるという方法もあります。企業再建のコンサルタントが入って、根本的な止血が必要な場合などです。郵政の場合も外圧で変えました。半ば強制的に民営化したのです。しかし、その後どれくらい風土が変わったのでしょうか。
 

先日、弊社の社員が不満そうに帰ってきました。ある規模の大きな郵便局で、切手の在庫切れに対する応対が、あまりにも横柄だったようです。窓口で 「もう在庫切れです」 としか言われず、隣の窓口や夜間窓口の在庫を確認さえしなかったようです。そこで確認をお願いしたら 「ご自身で確認してください」 と言われたとのこと。そして、自ら確認しに行ったところ、夜間窓口に在庫があったようです。
 

このケースは、法人が広告宣伝用に数千枚単位で切手を購入する場面の話です。切手を1~2枚買いにきた個人ではありません。声のトーンや振る舞いなどが、一般的なサービス業では、ありえない応対だったとのことでした。
 

もちろん弊社の社員に問題があったのかもしれません。その窓口では何らかの理由があったのかも知れません。郵便局の業務に構造的な問題があったのかもしれません。それなりに配慮をしたとしても、残念です。かつて国民が期待していたほど、郵政の改革はできていないのではないでしょうか。
 

日本の政治も同様です。20年近くたって、どれだけ変わったのでしょうか? 本当に変革できたといえるのでしょうか? 個人的には大して変わっていないように見えます。(あくまで個人的な見解です)
 

いずれにせよ。変革は失敗してしまうのです。前者では、社長が「古い体質をぶっ壊す!」という姿勢で変革を追及すればするほど、社内の抵抗勢力が強くなることを確認しました。そして、本当の変革を止めてしまいます。後者では、強引に変えたとしても、結局は体裁だけになるケースを確認しました。実質的には何も変わっていません。
 

結局、掛け声だけでは変わらないのです。なぜなら、組織内の人員一人ひとりの気持ちが変わっていないからです。
 

これまでも複数の会社で同じような症状をみてきました。 「『緊急事態宣言!古い体質を破壊せよ!』と言うスローガン。もう何年も掲示板に貼りっぱなしなんですよ。緊急事態だって感じが全然しないですよね」 と苦笑いをする執行役員。社長の気づかぬところで本音を語る社員。こういった現場を何社も見てきました。
 

変革は、イソップ寓話の「北風と太陽」と同じです。どれだけ北風を社員に吹き付けても変わりません。頑なにコートの襟を閉じて、風が吹き止むのを待ち続けるだけなのです。
 

< 過去をぶち壊し 我が社を変革せよ 掛け声だけでは 変われない >
 

それでは、社長はどのようにとらえたら良いのでしょうか? その答えはシンプルです。変革の意味合いを変えると良いのです。
 

< 変革とは、古いもの捨て、新しいものへ交換することではない。本当の変革とは、全てのリソースを新たに組み替えて、それぞれのよさを引き出し、新しい状態に導くことである > ととらえ直してください。
 

この視点を社長だけではなく、社員にも浸透させましょう。例えば、組織には、夢を描く人や、現実的な人、批評する人など、様々なタイプがいます。
 

夢を描く人は、 “斬新な発想で方向性を示し活力を高める” という強みもあれば、 “妄想して実態がともなわない” という弱みがあります。
 

現実的な人は、 “実現する方法を見つけ実行する” という強みもあれば、 “柔軟性や活力に乏しい” という弱みがあります。
 

建設的に批評する人は、 “リスクを前もって察知し予防できる” という強みもあれば、 “新たな取り組みのブレーキになる” という弱みがあります。
 

社長が、古い体質を否定して変革を追究すると、各タイプが保身に走ります。そして、各タイプの弱みばかりが表出してしまいます。
 

一方で、社長が古い体質の貢献や価値に感謝し、変革の協力者として迎え入れると、各タイプが強みを活かしはじめ、各タイプの強みが組み合わさるようになります。
 

社長は、社員のものの見方・考え方を、上手く導いてあげなければなりません。変革の見方を整えると、新旧の対立や、部門の対立、性格の違いによる対立を減らし、協力体制を築くことができるのです。実は、創造のための破壊は、とてもあたたかいものなのです。
 

古い体質を否定することは、組織の2:6:2の法則で言えば、下の2を切り捨てることになります。これでは上手くいきません。残った8の人員の中から、必ず古い体質を重視する抵抗勢力が生まれてくるからです。
※コラム第19話 「2:6:2の法則を克服。経営者が実践すべき原理原則」 を参照
 

組織の2:6:2には、それぞれの価値があります。各タイプの強みを引き出し、組織を確実に進化させることが変革なのです。変革とは、古いものを捨てることではありません。古いものと新しいもの、狭い視野では相反する性質に見えるものを、より大きな目的を浸透させ融合させることなのです。(このコツがあるのです)
 

< 過去よりも未来 変革の追及が 本当の変革を止める >
 

< 過去も未来に活かす 変革のとらえ方が 本当の変革を進める >
 

このプロセスを乗り越えると、我が社はとても強くなります。自社を自ら変革させたという経験が、自社の顧客の変革をうながす商品・サービスを生み出す源泉になるからです。
 

従来と同じ戦い方では、限界が見えています。将来、心から安心できる状態、3年分の受注残が見えている状態をつくるためには、まずは社長が変革のとらえ方を変えることからはじめましょう。
 

このプロセスは、手間も時間もかかります。ただ、めんどくさいからこそ将来の我が社のために取り組む価値があるのです。S社長も変革のとらえ方の間違いに気がついたようでした。コラムをお読みの皆さんも、我が社を次のステージに進めるために、ぜひ変革のとらえ方を変えてください。今度は、御社が挑戦する番です!
 
 

※追伸:当社は、変革のとらえ方を変えて、お互いの強みを組み合わせる仕組みとして  【3年分 受注残をつくる経営】(業績3年 先行管理のすすめ方)を公開しております。弊社セミナーだけでお伝えする具体事例やその留意点があります。興味のある社長様は、ぜひセミナーにご参加ください。 

 

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