ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第95話買い物上手な社長とDIY上手な社長の共通点

下手な社長は、採算重視。上手な社長は、資産重視。
第95話:「買い物上手な社長とDIY上手な社長の共通点」(下手な社長は、採算重視。上手な社長は、資産重視。)

 

「指示待ちの社員が多くて…。自律型組織への変革が急務なんです」
 

先日、弊社セミナーに参加なされたB社長からお電話をいただきました。業績の先行きが厳しい中、自社の眠った可能性を引き出すべく、個別に相談がしたいとのことでした。
 

既にコンサルティング会社や研修会社の支援を何社も受けてきたそうです。そして、今度は自社の力で取り組みたい。セカンドオピニオンとして、ぜひアドバイスがほしいとのことでした。
 

B社長は 「自社の力でやりきることが自律型組織になる第一歩だ」 とお考えのようでした。もちろん時間がかかるのは分かっています。それでも、自分たちの力でやらないと本当の実力にならない。そう認識していました。
 

目指すべき姿が自律型組織です。だから、外部の力に頼りきりになってはいけません。その通りです。しかし、自律型への転換を、安易に進めること、すべてを自社の力でやろうと挑戦することは、危険をともないます。ですから見極めが重要です。B社長は、この点を危惧してセカンドオピニオンを探していたのかも知れません。
 

我が社は、自社の力で行うのに相応しい状態なのか、挑戦するに相応しい状態なのか、冷静に見極めることが必要です。いったいどのように判断すると良いのでしょうか。基準を知りたいものです。
 

そこで、まずは自社の力で挑戦する根本的なワナに注意しましょう。ある意味、DIY(Do it yourself)のワナです。
 

ホームセンターに行けば工具や材料が揃っています。そして、手順やコツを調べれば、簡単に検索することができます。素人でもできる気がしてきます。
 

しかし、実際にやってみると想定と現実のギャップが見えてきます。簡単に見えた作業でも予想外に時間を要します。やってみてはじめて分かる手間や不明点が次から次へと出てきます。さらに、できばえもイマイチ。プロではないので素人っぽさが滲みでてしまいます。
 

もちろん、趣味の範囲であれば不完全な部分も愛らしく見えます。しかし、ビジネスの観点で考えると、荒が目立ちます。あまりにも不十分です。なぜなら、マニュアルにはなっていないコツが多数あるからです。そこを見抜けません。逆に、プロは状況やタイミングを見てすばやく軌道修正しています。
 

経営活動に置き換えて考えてください。事実、変革のプロセスには、多くの落とし穴があります。これを避けて確実に進むためには、経験者のアドバイスが必要不可欠なのです。
 

なぜなら「知っていること」と「できること」には、大きな乖離があるからです。冷静になれば当然のことです。しかし、実はここが盲点になるケースが多いのです。なぜなら、人は知っていると認識するとコンロトールできると思い込み、安心してしまう生き物だからです。
 

だから人は、セミナーに参加したり、書籍を読んだりすると勘違いをします。実際にはできるかどうか分からないにも関わらず、知識を得ただけで何故かできるような気がしてしまうからです。
 

これを分かっている売り手は、商売が上手です。例えばBtoC向けの業界です。知識の無料化が進んでいます。書籍や安価な公開セミナーで、手順書やチェックリストなどが溢れかえっています。買い手の中には「本当に無料でいいんですか?」と驚く方もいますが、売り手は全く気にしていません。
 

なぜなら、知識だけではほとんど何もできないからです。ごく稀に知識だけで実践できる方がいます。ただ、その割合は約4%です。2:6:2の法則で言えば、上位2割の中の、さらに上位2割しかいません。ですから発信者は、無料情報を公開することに躊躇しません。残り96%の見込み客のリストが集まれば、大収穫だからです。
 

一方で「そんなことはない。我が社はできている。だから大丈夫」という社長もいます。本当に既にできていれば大丈夫です。ただ、注意が必要です。このできているか否かの判断は、行動の有無ではなく、実際に求める成果が出ているか否かで判断してください。
 

例えば、登山の初心者グループを想像してください。求める成果は、山頂で360度の大パノラマ絶景や日の出を見ることとしましょう。
 

まずはガイドブックや口コミで知識を得て、必要な道具を入手し地図を準備します。簡単なサバイバル訓練もしました。山の麓でウォーキングもしました。だんだんできている気がしてきます。
 

初心者グループは、これで無事に山頂に到達できるのでしょうか? 初心者の中には、「安易にこれで大丈夫でしょ」と思う方と「経験者がいないと不安だなぁ」と思う方に分かれます。
 

低く易しい山であれば、十分すぎる準備かも知れません。だから、大丈夫と判断する方がいるのでしょう。しかし、高く険しい山であればどうでしょうか? 日本で言えば剱岳や穂高岳、谷川岳の岩場に登るケースです。
 

目指す山が高く険しいほど、危険個所の多さや急激な気候変化が起きるものです。事実、これらの山々は遭難者の数も多い山です。初心者グループだけで単独登山をすることは、あまりにもリスクが高すぎます。ですから、その山を知り尽くしたガイドと共に、その都度アドバイスをもらいながら登るではないでしょうか?
 

その山を知り尽くしたガイドは、生き延びる術を知っています。なぜなら、山の全体像が見えているからです。そして、登山中の状況を客観的に認知することができます。だから、進むのか立ち止まるのか、迂回ルートを優先するのか、パーティのメンバーの気力体力を見極めながら判断できるのです。
 

つまり、社長は遭難者を出さぬようリスクを最小限にして登るのです。ですから、最低でも1回はガイドと共に山頂まで登りきることが必須なのです。難所が多ければ、数回必要です。
 

その後、山頂で絶景をみたメンバーは、もう一度山頂の景色を見たいと思うようになります。だから、自ら心身を鍛錬するようになります。自分の身は自分で守るという意識が育ち、適切な知識を自ら増やし、自ら運動を心がけるようになるのです。
 

そうして、パーティ全体が育ち、やがてガイドが不要になります。ガイド無しで挑戦する場合、はじめは小さな山かも知れません。しかし、徐々に高く険しい山に挑戦できるようになるのです。
 

このようにDIY上手な社長は、実は買い物上手な社長なのです。はじめに適切な道具を集め、適切な経験を積むためにガイドを雇います。そして、成果を出す体験、成功体験を積んでから、自分達の力でさらなる高みを目指します。スピード早めるとともに、再現性高く前に進むためです。
 

同様に買い物上手な社長は、実はDIY上手な社長です。はじめに適切な買い物をしているからこそ、ヒトや組織が育ち、あとから自分達の力でできるようになるからです。
 

逆に、買い物下手な社長は、実はDIY下手な社長です。セミナーや書籍で知識を買って、できたつもりになってしまいます。そして、自分達の力でやろうとして失敗します。すると、誤った買い物をしたのではと思い、別の商品を物色するのです。そして、同じような買い物ばかりを繰り返すのです。
 

同様にDIY下手な社長は、買い物の下手な社長です。闇雲に自分達でやろうとして、社員とともに気力体力を失っていきます。そして、結果がでないことに焦り、誤った買い物に走ってしまうのです。
 

つまり、我が社を自律型組織に変革するためには、社長の見極めが必要です。買い物上手であり、DIY上手な社長になってください。つまり、成功体験を積むまでは、しっかり外部の力を活用することに専念してください。
 

< 下手な社長は、採算重視。上手な社長は、資産重視。 >
 

下手な社長は、買い物を採算重視で判断しています。かかった費用が、今期どれだけ回収できたのかという視点で発想します。時間軸が短く単年度のPL(損益計算書)でとらえているのです。
 

一方で上手な社長は、買い物を資産重視で判断しています。かかった投資が、今後どれだけの価値を生み出すのかという視点で発想するのです。時間軸が長く中長期的なBS(貸借対照表)でとらえているのです。
 

しかも、土地や建物といった有形固定資産や有価証券といった無形資産ではなく、決算書に表せない行間を見ています。つまり、ヒトや組織の可能性を資産として見ているのです
 

下手な社長は、買い物でもDIYでも可能性を失うばかりです。買い物好きの銭失い、DIY好きの時失いでは、自社を自律型組織に育てることはできません。ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源をどのように有効活用するのか。時間軸を長く、空間軸を広くとらえ直してみてください。
 

すばり、買い物上手な社長とDIY上手な社長の共通点は、見極め上手なことです。成功体験を積むまでは買い物優先、経験値を積んだ後はDIY優先と両者を切り替えています。自社のステージにあわせて使い分けているのです。
 

言葉を使ったコミュニケーションである限り、ガイドの知恵は、説明(知識)だけでは伝えられません。知恵を実践に落とし込むには、応用力が必要なのです。この応用力は、経験を共に積むこと、ガイドと共に山を登ることで高められるものです。
 

スピーディにかつ再現性高く、自社が自律型組織になるために…。B社長にもこの見極ポイントをお伝えしました。
 

社長は最終決裁者であり、一人の人間です。そして、ヒトの視野は構造的に限られています。どれだけ視野を広げたつもりでも、主観の影響を受け部分最適で判断してしまうものです。セカンドオピニオンに相談し、少しでも全体最適で判断できるよう留意してください。
 

※追伸:当社は、自律型組織に変革する条件づくりとして  【3年分 受注残をつくる経営】(業績3年 先行管理のすすめ方)を公開しております。弊社セミナーだけでお伝えする具体事例やその留意点があります。興味のある社長様は、ぜひセミナーにご参加ください。 

 

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