ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第104話売上より利益。この発想が根腐れを起こす

利益重視は、自前にこだわる。売上重視は、手前でこだわる。
第104話:「売上より利益。この発想が根腐れを起こす」(利益重視は、自前にこだわる。売上重視は、手前でこだわる。)

 

「今の時代、売上拡大を目指す会社はズレていませんか?」
 

T社長からいただいたご質問です。弊社セミナーで紹介した事例企業が売上拡大を掲げていました。それをどのように達成したのか、という内容聞いたものの、その前提に疑問に思ったようです。
 

T社長は 「もう売上重視の時代ではない。売上拡大よりも利益を重視した経営にシフトすべきだと思うんですが……」 と続けました。大きな物語の時代から、小さな物語の時代にシフトしている。これは確実です。しかし、肝心なことを聞き漏らしていたようです。
 

小島は 「その発想は危ないですよ。吠えてばかりの小型犬と同じです」 とお伝えしました。
 

その後、T社の状況をお伺いし、改めて結論をお伝えしました。 「やはり、利益を重視するといいながら逃げているだけですよ。こういった会社がとても多いんです。御社が変われない原因も、ここにありますね」 と。
 

T社長は、ワッハッハと大笑いした後、真剣な表情になり落ち着いた声で言いました。 「その通り。逃げていました。サポートをお願いします」 と。
 

今週のコラムは、先日T社長にお話した内容をお伝えします。 「売上より利益」 といった発想が、いかに会社を根腐れさせるのかという着眼です。
 
 

「売上より利益でしょ」 と発想する社長の多くは、同じ問題をかかえています。売上拡大の壁にぶつかり、足踏みをしているのです。そして、業績が伸び悩む理由を、経営環境のせいにしてしまいます。
 

社長は、社員に 「自己責任の意識で考えろ!」 と言っています。ところが、社長自身が無意識のうちに環境や他人のせいにしてしまっているのです。
 

はたから見れば、とてもシンプルです。社長自身が従来のやり方を繰り返しているだけです。自身のやり方を変えることなく、結果は変わらないか、環境が変化した分だけ悪化しているだけなのです。
 

にも関わらず 「競合他社との競争が厳しくなっている。受注が難しくなり、利益率も下がっている」 と嘆いているのです。そして、粗利額が減少するにつれて、 「会社存続のためには、売上よりも利益の確保が重要だ」 と表面的に考えてしまうのです。
 

御社は、1兆円企業でしょうか。もし、売上高が1兆円を超える会社であれば、世界の景気動向に大きく影響を受けていることでしょう。市場全体を砂浜に例えるとしたら、砂浜の面積が半分になれば、砂浜で採れる砂の量も半分になるからです。
 

しかし、T社長をはじめ、年商数億円の企業規模であれば景気動向はいい訳です。かつては、バケツ1杯の砂をすくっていたとします。その後、砂浜の面積が半分になったからといって、今後はバケツの半分までしかすくってはいけない。こんなルールはありません。採取する砂の量を半分にしなければならない理由は、どこにも見当たらないのです。
 

なぜなら、良くも悪くも、我々が生きているビジネスの世界は、資本主義が前提です。社会主義国家ではありません。
 

ですから、やり方を変えて、バケツ1杯どころか2杯、3杯とすくってもよいのです。つまり、目先の経営環境の変化よりも、社長の考え方や行動習慣次第で何とでもなる話なのです。
 

結局のところ、景気動向といった大きな流れに、ワンワン、キャンキャンと小型犬のようにどれだけ吠えても、負け犬の遠吠えのようなものです。吠えている暇や体力があるのであれば、新たな餌場の発掘に注力した方が懸命です。
 

< 売上よりも利益が大切。この発想は、吠えてばかりの小型犬 >
 

さらに、こういった会社は 「売上よりも利益だ!」 と掲げれば掲げるほど、社員は動けなくなります。砂の採取場所や採取方法を変えずに 「良質な砂をすくえ!」 といっているようなものだからです。
 

その典型例が、 「利益を重視した企画提案型の営業をしろ!」 という社長の指示です。社長は、時代に合わなくなってきた製品やサービスを根本的に見直すことと、売ることの2つを、社員に同時に要求します。それも、御用聞き営業しかしてこなかった社員に対してです。このとき、社員の解釈は、指示ではなくスローガンだと認識しています。
 

指示を受けた現場では、社員は売ることだけに専念します。なぜなら、製品やサービスを見直す責任が怖いからです。そして、新たな武器も持たず、方法も知らないまま、 「企画提案型の営業をしよう!」 というスローガンが社内で連呼されます。社長の意に反して、上司から部下へ、精神論でやれというパターンが繰り返されるのです。
 

社員は、従来のやり方でやるしかありません。当然、顧客の反応も悪いでしょう。追い込まれた営業社員は 「高い利益率を狙っても価格競争に負けてしまう。利益を確保するためには売上拡大しかない」 と短絡的な発想をしはじめます。そして、他社が断るような採算の悪い案件をかき集めてしまいます。
 

もし、御社が製造業であれば、営業目標は達成できたとしても、製造部門の生産性は大幅に悪化します。採算の悪い案件、つまり、小ロット、短納期、個別対応などの要求に応えるため、段取り替えが頻発し、ロスも発生しやすくなるからです。サービス業だったとしても、同様です。商社であれば、協力会社が悲鳴を上げ関係性が壊れます。どの業種であったとしても、会社の業績は悪化の一途を辿るだけです。安易に利益を重視すると、じわりじわりと組織を腐らせてしまうのです。
 

< 売上よりも利益が大切。この発想が組織の根腐れを起こす >
 

これは、すべて社長の責任です。なぜなら、戦い方を変えることは、社長が主導で行う仕事だからです。
 

時代の変化を見極め、自社の製品やサービスを根本的に見直すこと。企画提案型の営業ができるように武器を整備し、<御用聞き型営業> → <行動重視型営業> → <企画提案型営業> とステップアップする方法を仕組み化すること。実際に使う新たな営業ツールを準備し、社員が即行動に移せる環境を整えること。
 

この最高意識決定者は、社長しかいません。社長でなければ判断できないのです。なぜなら、我が社の全責任を背負っているのは社長だからです。
 

もし、社員達に責任を押し付けたとしても、彼らは判断を間違えます。社員は変化を嫌う生き物ですし、将来よりも目の前の仕事を重視してしまうからです。
 

社長の役割は、新たな戦い方を構築するとともに、我が社の売上拡大を示し、組織を導くことです。「売上は、すべてを癒す」という言葉の通り、利益の源泉は売上なのです。従来の陳腐化した方法で売上を拡大するのではなく、新たな方法で新しい売上を拡大するのです。社長は、この流れが仕組みでまわるようになるまで関わる必要があります。
 

我が社が戦うフィールドを、星の砂がとれる砂浜に移動させたり、暴風が吹き荒れる場所から風が弱まる岩陰に移動させたり、暴風の中で衝立(ついたて)を立て自然と砂が溜まるようにしたり、海中から砂を採取したり、やり方次第で結果を変えることができるのです。可能性は無限大にあるのです。
 

もし、御社が従来のやり方で十分な成果をだせていないのであれば、今、やり方を変えるタイミングなのです。 「今、やり方を変えると上手くいきますよ」 というメッセージが届いていることに気づいてください。古いやり方にこだわりすぎることなく、柔軟に発想してみてください。
 

< 利益重視は、自前にこだわる。売上重視は、手前でこだわる。 >
 

この時、利益を重視する会社は、やはり問題が起きます。なぜなら、どうしても自前でやろうとしてしまうからです。外注すると、利益率が下がる。だから、はじめから自前でやろうという発想です。
 

何十年も前のように、ゆっくりと変化をする時代であれば、自前でじっくりと進めることも一つの選択肢でした。しかし、今は変化のスピードが速い時代です。だから、自前にこだわり時間をかけてようやく仕組みを構築した頃には、さらに別の変化が起きていることでしょう。いつまで経っても、環境を先取りすることはないのです。
 

できる社長は皆、スピードを買うと言う発想を持っています。スピードを買った後、内製化していくのです。ですから、売上を上げる手前が勝負なのです。体系化された成功法則を外部から仕入れて、新しい戦い方の仕組み化を一気に進めるのです。正しい判断をして下さい。
 

そして、その仕組みを活用しながら自社をどんどん強くしていくのです。このプロセスでは、新たな売上を最速で確保し、仕入れ代金を早期に回収することができます。これが、最も早く確実に、会社に利益を残すアプローチなのです。
 

< 利益重視は、自前にこだわり停滞する。売上重視は、手前でこだわり躍進する。 >
 

繰り返します。社長の仕事は、我が社が社会に提供する価値を設定し、それを実現する仕組みをつくり、実現させることです。そして、時代の変化を汲み取り、製品やサービスを見直し、仕組みも作り変えることです。
 

現状を脱却できない会社ほど、判断を間違えています。この見極めが急務です。T社長は、経営の勝負ポイントを見極め、新たな戦い方に挑戦することを決めました。
 

この1年、あなたは何を考え、何を実行してきましたか? そしてその結果、どのような成果を手にしましたか? もし、期待するほどの成果がでていないのであれば、今新たに何が必要なのか、しっかりと見極めてください。

 

※追伸:当社は、手前の仕組みづくりとして 【3年分 受注残をつくる変革経営】(3年先行経営の仕組みづくり)を公開しております。弊社セミナーだけでお伝えする具体事例やその留意点があります。新しい戦い方を実現する「変革の方程式」の構成要素や具体事例など、一つひとつ順を追ってお伝えします。興味のある社長様は、ぜひセミナーにご参加ください。 

 

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