ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第9話できる経営者にみる「最近の若者は…」の意味

プライドにこだわるガラパゴス経営者になるか。こだわりに執着しないウォーター経営者になるか。
第9話:<できる経営者にみる「最近の若者は…」の意味>(プライドにこだわるガラパゴス経営者になるか。こだわりに執着しないウォーター経営者になるか。)

 

≪ この紋所が目に入らぬか!! ≫

印籠を見せる助さんの如く、真剣な顔でスマートフォンを見せるSさん。
その横で、なぜか天を仰ぐ水戸黄門様(K社長)

 

「怒りを通り超えました。これを見てください。」
人事部長のSさんは、小島に話しかけます。

 

画面を覗き込むと、LINEのメッセージ。

『調整無理』

たった4文字の返信でした。

 
 いったい何がおきたのでしょうか。
 これは、ある会社の採用活動で起きた出来事です。

 

■1.採用活動で起きた出来事


 『採用』。ここ数年、経営者を悩ませる重要課題です。

自社で活躍する優秀な人材がほしい。一方で、どこもかしこも採用難。まとまった人数を採用しようとすれば、さらに困難を極めるでしょう。

そんな中、この会社は積極的に採用活動を進めていました。新卒向けの合同説明会では、K社長自らが前面に立ち、思いを伝えます。人事部は、これに賛同した学生をフォローするためLINEアカウントをつくり、気軽に情報発信や相談ができるよう配慮しました。

いよいよ最終面接のフェーズ。人事部の担当者が、選考が進んだ学生にEメールで<日程のお知らせ>を送信しました。しかし、数名の学生から出欠の返信がありません。

「ひょっとしたらメールを見ていないのでは?」

心配した採用担当者は、親心でLINEメッセージを送りました。その返信の1つが、先ほどの『調整無理』という4文字です。

 

■2.「全く、最近の若者は…」


 もし、あなたがK社長だったとしたら、どう反応したと思いますか?

 
「最近の若者は、常識がなっていない!」
「最近の若者は、礼節がなっていない!」
と思わず感情的になってしまう社長もいるでしょう。
 
「こんな学生が我が社に入社しなくてよかった」
と冷静に評価する社長もいるでしょう。

人事部長のSさんのように怒りを通り越した方、K社長のように天を仰ぐ方、さまざまな反応が考えられます。お二人は、会社の将来を思う気持ちが強かっただけに、驚きを隠せない様子でした。

 

■3.プライドにこだわるガラパゴス経営者


 「最近の若者は、けしからん!」

このタイプの経営者は、既存のルール・常識に反しているからという理由で、若者の常識を排除します。この考え方にも一理あります。

これまでの時代背景があり、既存の仕組みが存在している。特定の市場の中で、独自の進化を遂げ、最適化が進んだ結果かもしれません。そして、既存の仕組みで利益を出し、そこで働く人がいる。

「この秩序を乱すことは、メリットよりもデメリットの方が大きい」

という判断です。

ただし、このスタンスで企業が生き延びるためには、
 
<既存の市場が既存のルールで成り立っている>
 という前提が必要です。この条件が崩れたら通用しません。
 

かつての酒屋さんは、コンビニの出現により、撤退するか転身するかを迫られました。かつての携帯電話は、スマートフォンの出現により、撤退するか転身するかを迫られました。ガラケーが主流だった2000年頃、日本メーカーは11社ありました。いまでは3社(ソニー・シャープ・京セラ)しか残っていません。同様に日本の各メーカーの多くが家電事業を撤退しました。新聞・雑誌・テレビをはじめとするマスを対象としたメディアも、個を対象としたものにその座を奪われつつあります。
 

さらに、<運用する人材を中長期的に確保すること>も必要です。

既存のルールで成り立っていても、なかなか人が集まらず困っている業界もあります。
例えば飲食店。経営者だけが儲かるモデルでは、若者は魅力を感じません。就職希望の学生は非常に少なくなっています。
 

経営者自身が乗り越えてきた世界観を大切にしたい。
経営者としてのプライドがあり、それを貫きたい。1つの選択肢です。

既存のルールで成り立っており、独自の魅力を打ち出すことで人材も確保できている。
 「もしこの市場が無くなるときは、事業を撤退するときです。」
 と腹をくくりながら、成果を出し続けている社長もいらっしゃいます。
 

あなたは、既存のルールの中で最後まで戦う覚悟を決意をもっていますか。
独自の進化にこだわり他社を圧倒する【ガラパゴス経営者】を貫きますか。

 

■4.こだわりに執着しないウォーター経営者


 「最近の若者は、オモシロイ!」

このタイプの経営者は、既存のルール・常識に反しているからという理由で、興味を持ち理解しようとします。世の中の変化を理解することが、新しいルール・常識をつくりだすチャンスであると考えているからです。

この考え方にも一理あります。
 

小島が新卒入社した時代は、手書きのメモを渡し「ワープロしてくれ!」という上司がいました。Eメールを送った後に、ちゃんと届いているのか電話で確認してくる取引先がありました。今では、ワープロがワープロソフトに、フロッピーディスクやCDへ保存していたデータがクラウドに保存、と変化しています。

既存のツールと新しいツールを使い分ける時代になりました。

時代の流れを嗅ぎわけ、新しいサービスを提供し、急成長したベンチャー企業がいます。今では大企業になった楽天も、前身である株式会社エム・ディー・エムを設立したのは1997年。わずか20年前です。この時期は、サイバーエージェントやディ・エヌ・エーなど、たくさんのITベンチャーが創業しました。

時代の流れを掴むには、こだわりに執着しすぎない柔軟性が必要です。
同時に廃業したベンチャー企業も多く、挑戦するリスクもあります。
 

『調整無理』と返信した学生。
ひょっとしたら社会人のルールを知らなかっただけかもしれません。普段ならスタンプするか、スルーするところを、学生なりに配慮して文字で返信したのかも知れません。
 

一人っ子で兄弟げんかもしたことなく、親から理不尽に怒られたこともなく、異なる世代や価値観の異なる人たちと一緒に働いたこともなく、最低限の常識を学生時代のうちに身につけることなく就職してしまう。こんな学生が増えています。
 

±10歳の年齢差であれば、まだ理解できる部分が残っています。多少の世代間ギャップも許容できるものです。しかし、±20歳を超える年齢差になると理解の限界を超えます。思わず排除したくなります。
 

かつての常識に照らし合わせると、信じられないことは多いものです。しかし、この世代が我が社の社員になる時代、自社製品・サービスのエンドユーザーになる時代なのです。
 

経営者が認識していない可能性を秘めています。まだ見ぬポテンシャルを引き出すことができれば、自社にブレイクスルーを起こすかもしれません。

こだわりに執着しないウォーター経営者は、こういった変化の兆しを「オモシロイ!」と表現します。

 

■5.柔軟に応対できるウォーター経営者という選択肢


 あなたは「最近の若者は、オモシロイ! いったいどうなっているんだ?」

と興味を持ち、理解しようとしていますか。

紙の資料にこだわる経営者もいれば、データで十分という経営者もいます。
いつでも見れるし共有できるからクラウドにアップしてほしいという経営者もいます。

あなたは、経営者として、時代の流れに合わせて、柔軟に変化することはできますか。
 
●水のように柔軟に姿・形を変えられる経営者であれば、どのような経営環境も活用できます。
●水のように清濁併せ呑むことができれば、組織に変化をもたらし、社会に変化をもたらすことができます。
 

プライドにこだわり視野を狭くするか、柔軟に耳を傾け視野を広くするか。

人生100年時代です。年上の恩師に学ぶだけでは不十分。年下の師匠をみつけてどんどん学んでいくことが必要なのではないでしょうか。
 

水のように変化しつつ、水としての存在は一貫している。柔軟で力強さも備えた存在。
そんな経営者に一歩でも近づくことができればと思います。
 
 

※追伸
相手を理解し、経営に活かすには、相互理解の仕組みが必要です。これは、お互いが持っている情報や感情を共有し、自分と相手が同じ人間だなぁと理解する仕組みです。そして、社内外で起きている情報や感情を共有するには、それを可視化する必要があります。

このような可視化する仕組み。御社はどれくらい整っているのでしょうか。

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