ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第106話なぜ、改革をやめると会社が変わるのか? (改善・改革・変革・革新の違い)

「改善」しても、「改革」しても、どちらも同じ 変われない
第106話:「なぜ、改革をやめると会社が変わるのか? (改善・改革・変革・革新の違い)」(「改善」しても、「改革」しても、どちらも同じ 変われない )

 

「えっ……。改革をやめた方がいいんですか? 」
 

M社長は首を傾げました。 “今すぐ改革が必要だ!” と意気込んでいたからです。つい先日も、展示会に参加し、金属造形ができる3Dプリンタを見てきたばかり。技術の進展によって事業構造があっという間に大きく変わる。だから、改善レベルでは話にならない。 根本的に変わるしかない。M社長なりに覚悟を決めた直後だったからです。
 

「【改善】に注力しても、【改革】に注力しても、結局はどちらも同じ。会社って変われないんですよ。特に【改革】は会社を停滞させるので注意してください」
 

と小島はお伝えしました。なぜなら、【改革】を掲げる会社で、適切に変化していく会社を見たことがないからです。逆に、適切に変化していく会社は、別の言葉を掲げています。これは、人間の無意識的な部分が影響しています。
 

社長は危機意識が高いため、将来を見据えて腹を括ります。そして、柔軟に考え、柔軟に行動を変化させます。ところが、社員は違います。改善はできても、改革はできないのです。なぜなら、良くも悪くも、自己否定が嫌だからです。
 

そもそも 【改善】 は、現状を肯定しています。 「今やっていることは、根本的に正しい。その上で、より効率的に結果を出すためにやり方を工夫しよう」 という発想です。つまり、現状の延長線上で考える着眼です。現場レベルで必要な取り組みです。ただし、事業構造が周回遅れであれば、どれだけ取り組んでも無駄になります。
 

一方で 【改革】 は、現状を否定しています。 「今やっていることは、根本的に間違っている。だから、やり方を根本的に見直そう」 という発想です。つまり、現状を破壊して作り直す着眼です。社員の立場、特に現場レベルではできません。極論ですが 「死ね! 」 と言われて 「はい。死にます! 」 という人がいないように、誰も自己否定をしたくないからです。
 

そんな極論を……と思う方も多いでしょう。ただ現実として、これがブレーキになっているのです。人間は、無意識的に自己防衛をします。それも命がけ。全力で防衛するので、社員の考え方や行動習慣は、根本的に変わりません。ですから、社長が改革を掲げれば掲げるほど、改革の進捗確認をすればするほど、社員は体裁だけで取り組むようになります。
 

つまり、 【改革】 は、組織にとって百害あって一利なしです。多くの会社で取り組んでいる 「働き方改革」 が典型です。根本的な問題を水面下に隠して、社員同士が保身に走るだけです。結局のところ、どちらも変われないのです。
 

< 【改善】 しても、 【改革】 しても、どちらも同じ 変われない >
 

それでは、どうしたら良いのでしょうか? 【改善】 の視点でも、【改革】 の視点でも、共通する問題があります。それは、組織の中で公にしていない重要な着眼があることです。これがボトルネックになっています。つまり、前提を明確に示していない、「続ける前提」 と 「変える前提」 が曖昧になっている。これが問題です。
 

ですから 【前提チェンジ】 をしてください。あなたの業界の前提、あなたの会社や取引先の前提、ともに働く社員の前提を言語化し、続ける前提と、変える前提を、明確に示すのです。特に、社長であるあなたも気が付いてない前提を発見し、適切に変えてください。そうすれば、変革が半分成功したようなものです。
 

つまり、前提を確認して、前提を変化させるのです。これが会社が変わるために必須のアプローチです。この前提には、いくつかのパターンがあります。また、社内の人間だけで議論すると、知らぬ間に前提のワナに陥るケースが多いものです。ですから、客観的な立場の人間を入れて、慎重に議論してください。この点を押さえておけば、驚くほど組織は変化しやすくなります。これが 【変革】 です。
 

つまり 【変革】 とは、現状を肯定しながら前程を変えることです。 「今までやってきたことは正しい。ただ、環境が変化している。だから前程を変えて、やり方を変えましょう」 という発想です。現状の資源(ヒト・モノ・カネ:特にヒト)は肯定し、情報の捉え方(前程)を変える着眼です。コツはいろいろとあるのですが、社員は存在を否定されていないため、無意識的に抵抗することはありません。だから、変わりやすいのです。ヒトの考えや行動が変わり、モノを変え、業績を変えていきます。
 

最後に 【革新】 という言葉もあります。これは、現状を否定しながら前提も変えることです。これは、社長が起業家として、根本的に事業を変えていくときの発想です。既存の組織で取り組むアプローチではありません。新たなメンバーを募ってから、新会社として着手しましょう。
 

< 【改革】ではなく【変革】。これが会社を変えるコツ >
 

実は、【変革】を進めていくと、思わぬ副産物も多いものです。新たな視点で考えることが当たり前になるため、【改善】もさらに進むというものです。壁にぶつかっていた改善活動に突破口が見つかります。適切な変化が連鎖し、善循環が起きはじめ、社内の雰囲気がとても良くなります。社員が自ら前向きに変わっていくのです。そして、組織全体の変化の速度が加速します。
 

M社長には、前提チェンジのプロセスを丁寧にお伝えしました。このステップは型になっており、練習すればどの会社もで使えるようになるものです。その場で、幹部メンバーを集めて議論をする日程を決めました。年明けが楽しみです。来期実施する変革経営に向けて、どのような前提が出てくるのか? 変革の起爆剤とも言える隠れた前程がどれだけみつかるのか? とてもわくわくしています。この変革の着眼を、ぜひ参考にして下さい。
 

御社は、来期どのような活動を進めていきますか? あなたの究極の目的を見据えて、経営の勝負ポイントを見極めてください。それが、御社を次のステージに引き上げる第一歩です。
 

※追伸:当社は、前提を変える仕組みとして 【3年分 受注残をつくる変革経営】(3年先行経営の仕組みづくり)を公開しております。弊社セミナーだけでお伝えする具体事例やその留意点があります。心理的なハードルを下げて組織を進化させる「変革の方程式」など、一つひとつ順を追ってお伝えします。興味のある社長様は、ぜひセミナーにご参加ください。 

 

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