ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第100話なぜ、稼ぐ会社は顧客ニーズを受け流すのか

顧客ニーズ 忠実なのはジリ貧社長 中立なのが強い社長
第100話:「なぜ、稼ぐ会社は顧客ニーズを受け流すのか」(顧客ニーズ 忠実なのはジリ貧社長 中立なのが強い社長)

 

「小島先生。今、顧客分析をしています。得意先のニーズを探っているのですが……」
 

経営者特有の勘を働かせ、個別相談に来たY社長のお言葉です。
 

Y社では、調査会社の協力のもと、顧客満足度調査という名目で得意先の担当者にインタビューをして、その報告書が順次届いているそうです。
 

よかれと思って社員に指示をしたそうですが、報告書を見ると何かがズレている。率直なところ、儲かる感じがしない。早々にやり方を見直そうとおっしゃっていました。
 

違和感に敏感な社長は、総じて経営手腕に長けています。そこに何かがあり、すばやく軌道修正するからです。
 
 

小島は
「顧客ニーズですよね。アルコール度数の高いお酒みたいなものですから、受け流した方がよいですよ」
とお伝えしました。
 

そして
「結婚式の披露宴。新郎新婦の足元にはバケツがあるじゃないですか。飲んだふりをして捨てちゃうんです。あれと同じです」
と続けました。
 

来賓の方の人数だけビールやシャンパンを飲めないですし、日本酒などアルコール度数が高いものであればなおさらです。
 

顧客ニーズは、受け流すものです。ましてや忠実に応えようとするほど、会社は儲かりません。真面目に応えるから会社が良くならないのです。必死に応えていく……これはジリ貧会社の特徴です。
 

いったいどういうことでしょうか。
 

今回の事例でいえば、インタビューで明確になる顧客ニーズは、大きく2つの問題があります。既存顧客の担当者が、買い手の視点で回答してるからです。
 

一つは、既存市場を対象にしていること。つまり、どこまでいっても競合他社と既存市場のシェアを取り合うレベルだという点です。レッドオーシャンの泳ぎ方を教わるようなものです。明るい未来はありません。
 

もう一つは、本当のニーズは隠れていて見えないものであるという点です。当然、得意先の担当者の力では、言語化できません。そもそも顧客が認識していない潜在ニーズだからです。
 

ですからY社長がズレていると感じるのも当然です。
 

顕在化しているニーズと言えば、QCD(Quality:品質・Cost:原価・Delivery:納期)の視点です。時流を配慮して加えるならQCDES(+Ecology:環境・Safety:安全)の視点です。
 

ですから、個別にカスタマイズをしてほしい、値下げをしてほしい、小ロットや超短納期に応えてほしい、もちろん環境によく、安全面は考慮して……。といった類になります。
 

いずれも発注側にお得感があり、具体的に要望を提示してくる部分です。総じて、単価は買い叩かれ、量を増やすことで補うしかありません。
 

包み隠さず表現するのであれば「御用聞き営業を極めよ」といっているようなものです。現場は分かっていることをそのままやるだけなので、とても意味ラクです。ただ、物理的な限界が上限になります。
 

つまり、この発想では、既製品を仕入れてそのまま届けるレベル、顧客の作業を代行するレベルでしかありません。当然儲かりませんし、薄利多売をすればするほど、社員は疲弊していきます。
 

何か特定のニーズに絞って極めるのであれば、まだ可能性はあります。しかし、同族会社の社員はこれができません。
 

なぜなら「顧客は神様」という表現があるように、多くの社員は「顧客ニーズに応えることが良いことだ」と思い込んでいるからです。
 

人の良心として、応えてあげたいという気持ちも分かります。ただ、本当に顧客のためを思うのであれば、安易に応えてはいけません。どうしても、あれもこれもに応えてしまうからです。
 

「そんな当たり前のことは分かっている。だから自分は見極めている」という社長様も多いものです。ただ、そこに落とし穴があります。仕組みがなければ、社員は社長が見極めた通りに動きません。
 

すべての顧客ニーズに、万能に応えようとした結果、特徴のない商品やサービスしか残らなくなります。トヨタ自動車のように、業界最大手の企業が、すべての顧客層をターゲットとするならまだしも、町の中小企業は違います。(実際には、トヨタ自動車でさえ、既存のフルライン戦略に危機感を強く持っています。2018年、モビリティーカンパニーへの転換を宣言しました)
 

「何でもやります」という魅力のない会社では、本当の意味で顧客に貢献することはできません。ですから、顧客ニーズに忠実に応える会社は、近い将来、死ぬしかないのです。
 
 

< 顧客ニーズ 忠実なのはジリ貧社長。中立なのが強い社長 >
 
 

結婚式の披露宴を思い出してください。参列者が注いだお酒をすべて飲み干す忠実な新郎新婦は、間違いなく泥酔することになります。個人のお祝い事であれば、またそれも楽しい思い出ですが、ビジネスであれば迷惑極まりない行為です。
 

分別がつく新郎新婦であれば、自殺行為だと判っています。お酒を飲み干しません。ですから、ジェスチャーとしてグラスに口をつけ、その後そっとバケツに流します。
 

そして、参列してくださったゲストをもてなし、サプライズも忘れません。謝辞の挨拶、お見送りまで期待以上のサービスを責任をもって果たそうします。
 

ビジネスも一緒です。顧客の期待している着眼を超えることで、感動を生み繁盛するのです。そのためには、表面的な顧客ニーズは受け流す必要があります。
 

実際に強い会社、しっかりと稼いでいる会社は、顧客ニーズに中立です。ですから、表面的な顧客の要望をスマートに受け流しています。
 

例えば、システム系ベンチャー企業です。特定のニーズ以外は、応えないと決めています。そして、特定のニーズに応えるべく商品・サービスを尖らせ、急成長しています。
 

最近では、クラウドを活用したインサイドセールス支援サービスです。インサイドセールスとは、顧客を直接訪問するのではなく、電話やメール、オンライン会議システムを活用して商談をする営業スタイルです。
 

営業コストを下げたい(商談の場を効率良く増やしたい、人員の増加を抑えたい、顧客訪問の交通費を減らしたい、など)といったニーズに応えています。
 

その一方で、自社に密着してほしい(直接訪問してほしい、共同開発などすり合わせがしたい、特定の営業パーソンが自社のすべてを担当してほしい)といったニーズは受け流し、捨てています。
 

このように既に認識しているニーズの一部に特化するケースもあれば、まだ全く気がついていない潜在ニーズを掘り起こすアプローチもあります。
 

当然ですが、気づいていないニーズを顕在化させることができれば、圧倒的に利益率が高く、圧倒的に感謝される商品・サービスを提供できるようになります。
 

使い古された事例で言えば、10年ほど前に突如市場に現れたスマートフォンです。かつての携帯電話市場をものの見事にひっくり返しました。
 

いつの時代も、強い社長は違います。既存市場の前提を疑い、新たな価値を創造していきます。それが、根本的な顧客価値の創造に繋がると確信しているからです。
 

ただ、よほどのカリスマ経営者でなければ、市場や社員の抵抗を払拭し、成しとげることができません。社長を支援する武器がなければ、前提を疑い新たな商品・サービスを生み出すことができないのです。
 

同族会社の多くは、変わりたくても変われないものです。理由は単純、適切な武器を仕入れていないからです。
 

目先のニーズを追いかけることは、あくまで延命措置に過ぎません。根本対策を先延ばしにしているだけです。組織をじわりじわりと弱体化させるので、社長自信も、自社の社員も、将来貢献できたはずの顧客も、皆を不幸にします。
 

本当の顧客ニーズは、選択するものではありません。意図してつくるものです。ですから、変革の仕組みという武器を採用してみましょう。もし、潜在ニーズを顕在化させることができれば、3年分の受注残を確実に見込めるようになります。
 

これが御社を次のステージに引き上げる根本対策です。変革経営の仕組みといった根本対策。1日でも早くはじめてみませんか。
 
 
※追伸:当社は、前提を適切に疑い見直していく変革経営の仕組みとして 【3年分 受注残をつくる経営】(3年先行経営のすすめ方)を公開しております。弊社セミナーだけでお伝えする具体事例やその留意点があります。例えば、変わりたいのに変われない、そんな会社を確実に買える<変革の方程式(+α)>もお伝えします。興味のある社長様は、ぜひセミナーにご参加ください。 

 

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