ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第78話なぜ、管理型の社長が会社をダメにするのか

管理に注力するのか 社員を尊重するのか どちらを重視しても 組織は後退してしまう
第78話:「なぜ、管理型の社長が会社をダメにするのか」(管理に注力するのか 社員を尊重するのか どちらを重視しても 組織は後退してしまう)

 

「小島先生。管理しなけりゃ話になりませんが、管理の限界を感じています。いったいどうしたらよいのでしょうか?」
 

10年ほど前に、Y社長から相談を受けたときのご質問です。
 

Y社長の会社では、これまで様々な管理ツールを導入してきました。しかし、なかなか思うような効果がでませんでした。しかも、一人当たりの売上高・経常利益は年々低下していました。
 

Y社長は、ただ管理に注力していたわけではありません。ご自身の想い理念に掲げ、それを実現すべく計画を立て管理していました。ところが、管理をすればするほど業績が厳しくなっていました。管理の壁にぶつかり、悩んでいたところ、当時小島が雑誌に連載していた記事を偶然目にして、連絡をしたそうです。
 

Y社をはじめ、多くの会社は、社長が管理に注力するあまりダメになっていきます。管理のレベルは各社様々ですが、共通した問題です。
 

この原因は、とても明確です。それは <人間の本質を無視した管理> だったからです。
 
 
 

さらに補足をすると、管理を広義にとらえ「仕組み化が大切だ!」と言う、経営コンサルタントや研修講師、システム会社の営業担当者が多くいます。
 

Y社長の会社も、この言葉を参考にした1社です。創業時は表計算ソフトで管理をしていましたが、会社が成長するにつれてシステム化を図りました。在庫管理・生産管理・財務会計管理…などの基幹システム、CRM・SFA…などの顧客管理・販売管理システムなど、対象は広範囲に及びます。※現在ではMA(マーケティングオートメーション)のシステムも普及しています。
 

本来、業務の効率化を図るために導入したシステムです。ところが、仕組みを導入するたびに現場は混乱していました。そして、業務がより複雑になり、手間が増え、効率が悪くなりました。
 

これも原因は明確です。なぜなら <人間不在の仕組み化> を進めたからです。
 

この点をY社長に確認すると、「仕組み化が大切だ!という言葉を、表面的にとらえていた…」と猛省していました。
 
 
 

一方で、近年は「社員を尊重しよう」「人を大切にしよう」といった風潮が見られます。多様化した人材に耳を傾け、彼らの考えを尊重する関わり方です。
 

ヤフーをはじめ先進的な企業で導入している1on1ミーティングの広がりも、この一環です。米国のシリコンバレーでは企業文化として当たり前になっている手法です。
 

先日も、知人の経営者がグーグル社を見学をして感動していました。そして「すぐに、我が社でも導入しよう!」と意気込んでいました。小島は急いで、ある条件が整うまでは止めるようアドバイスしました。安易に真似をして導入すると、とても危険だからです。
 

企業文化を考慮せず準備不足で導入すると、ほとんどのケースで上手くいきません。正確に表現すれば、上手くいかないどころか、逆に社員の関係性を悪化させます。組織がバラバラになって、業績が低迷するのがオチです。
 

いったいどういうことでしょうか。つまり、話を聞く上司も、話をする部下も、今、現時点の彼ら・彼女らの気持ちを汲み取ることになるのです。
 

今、現時点の気持ちは、根底的には 好き or 嫌い ・ 快 or 痛み といった、感情が決めています。表面的にはもっともらしいことであったとしても、あとから理由をこじつけているだけです。結果として、社員はそれぞれ好き勝手な方向性に進んでしまい、組織はバラバラになります。規律が失われ、空中分解してしまうのです。
 

だから、どれだけ汲み取っても上手くいきません。その瞬間「お互いに良いことをしている」と酔いしれているだけです。極端な表現をすれば、社内で合法ドラッグを推奨するようなものです。そんなことするなら、不満のガス抜きを目的とした飲み会で十分です。
 

「いい会社をつくりましょう」というコンセプトも同様です。 “いい会社症候群” に注意してください。方向性はとても素晴らしいものですが、ただ真似をしても上手くいきません。一歩間違えば「ドラッグ中毒になりましょう」というようなものです。社員のベクトルを整えたり、業績を生み出す仕組みがなければ、御社はバラバラになってしまいます。
 
 
 

社長であるあなたが、我が社を本気でよくしたいとお考えであれば、ご注意ください。
 

<管理に注力するのか 社員を尊重するのか どちらを重視しても 組織は後退してしまう> からです。
 
 
 

それでは、いったいどうしたらよいのでしょうか。
 

まずは、人間理解を深めましょう。人間の好き嫌いは、その人が本当に求めているものではありません。たまたま生まれ育った環境の中で、たまたま身に付いた価値観の影響を受け、それに支配されているだけです。そして、この価値観は、環境によって書き換えることができるのです。
 

例えば、引きこもりの中年を社会復帰させる会社、非行少年や犯罪者を積極的に採用し更正させる会社があります。この共通点は、何か特別なことをしているのではありません。正しい行動をうながし、正しい考え方が身に付く環境を提供しているだけなのです。これによって価値観が一つ上の階層に昇華します。
 

つまり、<人間の本質を考慮した仕組み>を整えることが必要なのです。
 

あなたは、すでに気がついているのではないでしょうか。社長が、社員の近視眼的な気持ちにどれだけ迎合しても、お互いに不幸になるだけです。また、人間性を無視した仕組みを強化しても、そもそも話にもなりません。企業は人だからです。
 

つまり、人間の本質を考慮した経営の仕組みが、正しい気持ちを育てていくのです。この仕組みによって社員の行動が変わり、考え方が変わるのです。仕組みを通じて、社員の価値観をさらに上の階層に昇華させるのです。
 

Y社長は、その後、人間の本質を考慮した仕組みづくりに注力しました。そして、社員の想いを少しずつ昇華させていきました。Y社長の経営観も変わってきたそうです。数年の期間を要しましたが、企業文化が変わりました。人間が本来持っている共通の目的が、自分の将来に紐づいたとき、社員はこれまでとは全く異なる次元で働くようになります。
 

給料のために働いたり、ハラスメント問題に過剰反応したり、残業問題や有給消化問題に不満を募らせたりするような視点ではありません。「人生をかけてでも実現したい」この想いを土台に、自ら考え挑戦するようになるのです。
 
 
 

「36ヶ月連続で目標を達成しました。連続記録更新です」
 

Y社では年に1度の成果発表会があります。あるとき、最優秀店舗のスタッフが小島に目標達成の秘話を教えてくれました。その内容に、小島はとても驚きました。そして、「人には能力の有無があるのではなく、能力が発揮できる環境があるかどうかが重要だ」と再認識しました。(詳細は、セミナーでお伝えします)
 

人間不在の管理でもなく、好き嫌いレベルの人間尊重でもなく、人間の本質を考慮した仕組みづくり。御社もぜひ、ここに着手してください。
 

近年、様々な管理ツールがクラウドの定額サービス(サブスクリプション型サービス)で提供されています。あたかも、簡単・確実に成果につながる…という謳い文句ですが、本当にそうなのでしょうか。
 

冷静に判断すれば、子供たちがテレビゲームやスマートフォンに支配されているのと同じです。社員を 快 or 痛み といった感情で操作するものばかりではないでしょうか。これでは社員をコントロールできたとしても、物理的な1人力以上の働きはしないでしょう。社員の価値観が昇華しないからです。
 

他にも働き方改革でRPAだ!という会社も多いものですが、安易にシステムを導入しないよう注意してください。まずは、アナログの仕組みづくりで社員の価値観が昇華するように導いてください。
 

激変する令和時代、同業他社とは異なる次元で戦うために、人間の本質を考慮した仕組みづくりが必要です。他社よりも先に、新たな仕組みづくりに挑戦してください。次は御社の番です。
 
 

※追伸:当社は、人間の本質を考慮した仕組みとして「社長も社員も心から安心できる状態をつくる 【3年分 受注残をつくる経営】(業績3年 先行管理のすすめ方)」を公開しております。また、Y社長の事例もコラムでは書けない内容があります。詳細は、セミナーでお伝えします。興味のある社長様は、ぜひ弊社セミナーにご参加ください。
 

 

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