ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第15話先見の明がある社長は“こだわり”を使いこなす

企業の成長は、いつから衰退へと 変わるのだろう 社長は先見の明を持て
第15話:<先見の明がある社長は“こだわり”を使いこなす>(企業の成長は、いつから衰退へと 変わるのだろう 社長は先見の明を持て)

 

「社長のこだわりが強すぎて、ついていくのがやっとですよ」
 
 コンサルティングを終え、最寄り駅に向かう車の中。役員のKさんは、ハンドルを握りながら小島に胸の内を明かします。
 

この数分前。Y社長は、小島に愚痴をこぼしていました。
 
 「すぐに諦める社員ばかりで…。プライドはどこにいったのか…」
 

経営者はとても欲張りで、こだわりが強い生き物です。このこだわりで、事業を推進し、我が社を成長発展させてきました。
 

故スティーブ・ジョブズ氏(アップル)は、シンプルさにこだわりぬきました。Macintosh、iMac、iPod、iPhoneなどの製品を生み出し、新たな価値を社会に創造しました。
 

永守重信氏(日本電産)は、「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」と、取り組み姿勢にこだわりぬいています。買収した経営不振企業の風土が変わり、次々と再建しています。
 

経営者のこだわりは、事業を存続・発展させるうえでとても大切な能力の一つです。ぶれない軸となり、不可能を可能に。新たな道を切り開き、価値を創造します。しかし、強すぎる“こだわり”は、誤解を生みやすく、社員との溝を深くします。この溝を放置したまま要求を続けると、組織が崩壊します。
 

先見の明がある社長は、この“こだわり”を使いこなしています。
 

御社も、社長ご自身の“こだわり”が土台となり、現在の事業を存続・発展してきたことでしょう。今後、一経営者として、この“こだわり”をどのように使いこなしますか?
 

今回は、この“こだわり”を使いこなす秘訣をお伝えします。

 

 

■1.<製品ライフサイクル>からみた “こだわり” の使い方
 

<製品ライフサイクル>とは、製品が市場に投入されてから姿を消すまでのプロセスのことです。
 導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つの段階があります。段階毎に、売上・利益の特徴や、生じる課題の特徴が変わります。このプロセスにあわせ、こだわりのポイントも変わります。

 
(1)導入期、成長期、成熟期 : とことん“こだわる”
 
 新たな製品を創造し市場に投入するとき、市場に浸透させるとき。あらゆる障害を乗り越えなければ、市場は創造できません。経営者は、品質・納期にとことんこだわりましょう。成熟期に入ると、さらに費用にもこだわる必要があります。この時期は、“共通のこだわり”「この製品をさらに良いものにし、社会に貢献する」という志で向き合います。“こだわり”が弱ければ、途中で挫折するでしょう。
 
(2)衰退期 に入る前 : いさぎよく“こだわり”を手放す
 
 業績を維持・拡大させるには、衰退期に入る前に次の製品を開発・市場に投入しなければなりません。そのため経営者は、成熟期のある段階で既存製品のこだわりを手放すとよいでしょう。“いさぎよく” “かつてのこだわり”を手放し、“次のこだわり”に移行するのです。そして、衰退期に入る頃には“かつてのこだわり”を引きずっている社員に、いさぎよく手放しても良いことを伝えましょう。
 

“こだわり” の限界がくる前に “いさぎよさ” が必要です。
 もう少し丁寧に言えば、“あるこだわり” から “次のこだわり” にシフトするとき、かつてのこだわりを手放す “いさぎよさ” が必要です。
 

しかし、このときかつての成功体験が邪魔をします。ほとんどのケースで、経営者の心にブレーキをかけてしまい “かつてのこだわり” が手放せません。新旧の製品、共に大切にしようとすると、経営資源が分散し中途半端な結果しか生まれません。その間に他社に出し抜かれます。
 

我が社の主力製品の成長は、いつから衰退へと変わるのだろう?
 このタイミングを見誤ると、御社は間違いなく衰退します。社長は先見の明を持ちましょう。
 

日本企業が、旧製品の保守メンテナンスに注力しているうちに、海外企業が前提を変えた製品を出し、市場を占拠していきます。サービスも同様です。例えば、アマゾンのダッシュボタンやグーグルのG-Suiteのように、新たな戦い方をしかけてきます。
 

さらに、事業や人材のライフサイクルも同様です。それぞれのライフサイクルの衰退期に入る前に、いさぎよく“こだわり”を手放し、次のライフサイクルを立ち上げましょう。

 

 

■2.共感と反感からみた “こだわり” の使い方
 

今回説明する「共感」と「反感」とは、感情のことです。主に経営者と社員(広い意味で御社の利害関係者)が意思疎通をする際の感情のことです。
 

経営者も社員も、そもそも人間です。脳科学の分野で見れば、人間は感情で動く生き物です。ほとんどの場合、喜怒哀楽といった感情で反射的に行動しています。
 
 「親しみのあるアイツが言うことだから、思わず協力してしまう。」
 「気に食わないアイツが言うことから、思わず別のことをしてしまう。」

というニュアンスなら分かりやすいでしょうか。理屈で動いているつもりでも、後からもっともらしい理由を被せて自己正当化しているだけです。一度、客観的な視点からこだわりの活用法を考えて見ましょう。
 
(1)「共感」もしくは「反感」で組織を動かすとき : とことん“こだわる”
 
 組織を動かすにはこの感情のスイッチを押す必要があります。経営者の“こだわり”を社員一人ひとりに伝えます。すると「共感」や「反感」の感情が生まれます。そして、伝えれば伝えるほど、こだわればこだわるほど、さらにその感情が増幅されます。これが行動のエネルギーになります。つまり、こだわりを起爆剤にして「共感」もしくは「反感」の気持ちを使い、思わず行動してしまう空気を作り出すのです。
 ※振り子で示すなら、左端から右端へ(共感)、右端から左端へ(反感)、と動くフェーズです。
 
(2)活動の方向を変えるとき : いさぎよく“こだわり”を手放す
 
 “こだわり”が弱ければ、相手の感情の起伏も和らぎます。“いさぎよく”手放せば、動きが止まり方向転換します。ある活動から別の活動にシフトするタイミング。例えば、「変化」から「維持」へ活動の方向を変えるとき、またその逆で、「維持」から「変化」へ活動の方向を変えるとき。経営者は、いさぎよく“かつてのこだわり”を手放し、“次のこだわり”に移行するとよいでしょう。
 ※振り子で示すなら、右端で動きが止まる前後、左端で動きが止まる前後です。
 

維持の限界、現状のやり方がもう通用しないと心底諦めるタイミング。変化の限界、新しいやり方にもうついていけないと心底諦めるタイミング。経営者は、“こだわり” による感情面の限界がくる前に “いさぎよさ” が必要です。
 

しかし、限界が近づいてもいないのに安易に “こだわり” を手放すと、ほどほどに動き、ほどほどに動かない、という中途半端な行動しか生まれず、結果につながりません。その間に他社に出し抜かれます。
 

今回の活動の中で感情面の限界は、いつ訪れるのだろう?
 共感・反感を超えて、やるべきことを切り替えるタイミング。ここを見誤ると、御社は間違いなく衰退します。社長は先見の明を持ちましょう。

 

 

■3.仕組みづくりからみた “こだわり” の使い方
 

御社に何らかの仕組みを導入・定着させる取り組みも同様です。
 
(1)創造するとき・定着するとき : とことん“こだわる”
 
 仕組みをつくるには、より良い仕組みになるように試行錯誤をしなければなりません。ベータ版からシンプルな初期バージョン、徐々に拡張しフルバージョンへと変化させます。また、その仕組みを定着させるには、各フェーズでルール通り仕組みを使うことを徹底させる必要があります。いずれのフェーズも、経営者自身が、とことんこだわる必要があります。
 
(2)創造から定着に移行するとき、定着から創造に移行するとき : いさぎよく“こだわり”を手放す
 
 創造と変化はセットです。定着と固定もセットです。変化の段階では、より良いものを目指し、どんどん改訂することにこだわります。定着の段階では、設定した水準を達成できるようルールに遵守することにこだわります。経営者は、この移行段階で いさぎよく“かつてのこだわり”を手放し、“次のこだわり”に切り替えるとよいでしょう。
 

仕組みの創造・定着は、いつ段階を変えるべきだろう?
 このタイミングを意図的に設けないと、御社は間違いなく衰退します。社長は先見の明を持ちましょう。

 

 

■4.経営者が “こだわり” を使いこなす秘訣
 

冒頭のY社長は、“かつてのこだわり”を握り締めたまま、“新しいこだわり”を社員に要求しています。経営資源は限られています。さらに往々にして、それぞれのこだわりには相反する要素が含まれています。役員のKさんをはじめ、社員が潰れてしまう前に一度“かつてのこだわり”を手放してみる必要があります。
 

繰り返しますが、経営者はとても欲張りで、こだわりが強い生き物です。そして、先見の明がある社長は、この“こだわり”を使いこなしています。
 

これは多くの経営者に共通する留意点です。
 我が社の成長は、いつから衰退へと変わるのだろう?
 このタイミングを見誤ると、御社は間違いなく衰退します。社長は先見の明を持ちましょう。
 

経営者が “こだわり” を使いこなす秘訣。
・その “こだわり” が組織の役に立っているとき、とことん “こだわり” を活かしましょう。
・その “こだわり” が組織の弊害になり始めたとき、いさぎよく “かつてのこだわり” を手放しましょう。
 

現状を手放す覚悟と、次の段階に進む決意。先見の明を持ち “こだわり” を使いこなす。小島自身もこだわりが強すぎて…。一経営者として注意せねばなりません。
 

ことわざは、真実を語ります。
 「二兎を追う者は一兎をも得ず」
 「一石二鳥」
どれだけ欲張りな経営者でも、両方掴んでいると身動きが取れません。平成最後の時間を使って、何をこだわり、何を手放しますか。また、それをどのように社員の皆さんに伝えていきますか。さぁ、貴重な経営資源をどのように活用するのか、経営者として判断してください。
 

※追伸
 弊社は、“こだわり” と “いさぎよさ” を切り替えながら「社長も社員も心から安心できる状態をつくる【3年分 受注残をつくる経営(業績3年 先行管理の仕組み)】」を導入・定着させるコンサルティングをしております。興味がある経営者様は、ぜひセミナーにご参加ください。

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