ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第82話成功する事業変革。良い変化 と 悪い変化 の違い

伝統的な戦い方に 身をゆだねるのか 新たな戦い方を 探求するのか
第82話:「事業変革。良い変化と悪い変化の違い」(伝統的な戦い方に 身をゆだねるのか 新たな戦い方を 探求するのか)

 

「事業変革の成否はどこで決まるのでしょうか? 」
 

弊社セミナーにご参加いただいたA社長のご質問です。詳しくお話をお聞きすると、1年ほど前から、事業変革プロジェクトを推進しているものの、思うように進んでいないようです。
 

A社の業績は、これまで主要得意先の盛衰に合わせて上下してきました。さらに、主要得意先の事業は衰退産業であり、あと10年もすれば無くなっている可能性が高いと思われます。
 

幸いにもA社のコア技術は、他の分野にも応用ができるものです。さらに、近年の技術革新との親和性も高い。A社長は、今こそ変革のタイミングだと一大決心し、プロジェクトをスタートしました。
 

当然ですが、企業は環境適応業です。現状維持を続けていれば、環境に適応できなくなります。衰退し、存続できなくなります。しかし、いくら「変わろう!」とプロジェクトの旗振りをしても、組織は簡単に変われるものではありません。長くその事業を続けてきた会社ほど、変われないものです。A社長もこの壁にぶつかっているようでした。いったいどうしたら良いのでしょうか。
 
 

はやい話、事業変革の成否は、相互理解の深さによって決まります。
 
 

相互理解とは、現状維持がいかに危険なのか、どう変えたいかという将来展望、変革のプロセス、それにともなうコスト、の共有です。これを社長と社員が共通認識していれば、否が応でも変革は進みます。あとは展望が時代が求めるものに一致していれば、成功します。
 

しかし、この共通認識が、なかなか上手くいきません。人によってとらえている焦点にバラつきがあるからです。時間軸で見ただけでも、これまでの歴史を見ているケースもあれば、今を見ているケースもあります、1~3年後を見ているケースもあれば、10~30年先を見ているケースもあります。他にも、注意すべき軸がいくつかあります。
 

この理解が不十分なまま活動を進めると、組織のあらゆるところで変革を止めるブレーキが作動します。例えば、「分からないから計画が立てられない。だからできない」というものです。
 

これは、成果を担保できないことへの恐怖があるからです。新たな取り組みなので、当然成果は担保できません。試行錯誤が前提となります。
 
 
●過去に経験したこと : 目安が立てられるので、計画を立てて実行する
●はじめて経験すること : 目安が立てられないので、試行錯誤を繰り返す
 

さらに、この裏側には、学び方・進め方の違いがあることも伝えなければなりません。
 
 
●従来の大人の学び方・すすめ方 : 頭で理解してから → やってみる
●新しい大人の学び方・すすめ方 : やってみる → 体験から理解する
 

この違いを共通認識する必要があります。
 
 

A社長は、相互理解の重要性にうなづきながら質問を続けました。
 

「それでは、良い変化 と 悪い変化 の違いはどのようなものですか?」
 

この違いはどういうものでしょうか。実は、【良い変化】 と 【悪い変化】 の違いは、変化の内容ではありません。スピードです。 相互理解の速度と環境変化のスピードの違いによって決まるのです。
 

つまり、相互理解の速度の方が早ければ 【良い変化】 であり、環境変化の速度の方が早ければ 【悪い変化】 となるのです。前者であれば、自らの意思で変化できるため、社会に対して自社は主導権を握っています。後者であれば、強制的に変化させられるため、主導権を放棄し依存しています。
 

例えるなら、海面上昇により沈みゆく島(衰退する業界)の住民や、沈みかけている船(衰退する得意先)の船員のようなものです。目の前には海しかありません。覚悟を決めて航海を始めるのか、ウジウジして島に残るのか。自ら海に飛び込み陸地を目指して泳ぐのか、誰かに海に突き落とされもがき溺れるのか。
 

社長と社員が状況を相互に理解し、自ら覚悟を決めて行動したほうが、生き延びる可能性は高くなります。島に残って土手をつくっても、効果は限定的。すでに気がついているはずです。さらに台風が直撃したら壊滅的です。海が荒れてから航海にでれば、助かる可能性は低くなります。遅ければ遅いほど、事態は悪化するのです。
 
 

< 伝統的な戦い方に 身をゆだねるのか。新たな戦い方を 探求するのか >
 
 

どちらが有益なのか、言うまでもありません。
 
 

このとき、経営者が最もやってはいけないことは、「上手くいかないこともあるけど、時間がたてば何とかなる」という発想です。実際にたまたま何とかなるケースもあります。しかし、それは運任せです。
 

「そんなことは当然だ」とお思いの社長も多いでしょう。しかし、現実はついつい期待してしまっているものです。社内のあの問題も、時間がたてば何とかなる(といいな)。得意先とのあの課題も、時間がたてば何とかなる(といいな)。後手後手になり、気づけば数ヶ月たってしまったことがあるはずです。他にも自覚していない不具合もあることでしょう。
 

特に、今回のA社長のように事業変革を成功させるには、「何とかなる」ではなく「自ら関わって何とかする」という姿勢が大切です。このときのコツは「ちゃんと正面から向き合う」ということです。
 

既存事業で活躍してきた社員、特にプロ意識が高い社員ほど、変革に慎重になります。責任感が高く、実際に会社を支えているからです。貢献してきた重要な社員だからこそ、しっかりと対話をしてください。上手く伝わらないと、自分達が否定されていると誤解してしまいます。
 

変革とは、あくまで戦い方(手法)を変えること。社会に自社の価値がより伝わるように表現しなおし、価値に見合った対価・評価をしてもらうための、取り組みです。
 

既存事業やそこで働くプロ社員の人格を尊重しているからこその取り組み、もっと評価されるべき仕事だからこその取り組みだと、理解してもらうことが重要です。この根本的な部分を共有できれば、一気に事業変革が進み始めます。
 

すると、新たに決めていくことや、やるべきことが明確になります。どう試行錯誤すれば良いのかが見えてくるからです。本当の変革は、対立や混乱を乗り越えてから起こるものです。
 

そういった意味では、A社がぶつかっている壁は必要なことで、非常に順調だと言えます。この積み重ねがあるからこそ、自社が主導権を持って経営できるようになります。A社の今後がとても楽しみです。
 
 

< 伝統的な戦い方に 身をゆだねるのか。新たな戦い方を 探求するのか >
 
 

企業は環境適応業です。そして、新たな戦い方は、探求するものです。ですから、社長と社員が相互理解を深め、スピーディに活動を進める仕組みづくりに着手しましょう。歴史がある会社ほど必要な取り組みです。早く着手するほど有益な事業変革。次は御社が挑戦する番です。
 
 

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