ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第35話社長が押さえるべき不振企業の3大特徴とは

我が社にはムリと 決めつける前に、 社長自ら 挑戦してみたら
第35話:<社長が押さえるべき不振企業の3大特徴とは>(我が社にはムリと 決めつける前に、 社長自ら 挑戦してみたら)

 

「我が社にはムリなんでしょうか?」
 

業績不振に悩むI社長。設備の修理・改良を得意とする小さな会社の3代目経営者です。
 

この会社は、創業以来ある大手企業とのお付き合いが続いていました。誠実な仕事ぶりで信用を積み重ねてきたのでしょう。特に資本関係はなかったものの、グループ会社からの依頼もあり、安定した業績を確保していました。しかし、時代の流れともに消費者ニーズが変わり、主要得意先の設備の稼働率が低下。徐々に受注が減っていました。
 

I社長は5年前に先代から経営を引き継ぎました。先代時代から続いていた下請け体質を脱却するために必死だったそうです。トップ自らベテラン技術者と展示会をまわり、出店企業にアポを取り付け、少しずつ新規得意先を開拓してきました。
 

ところが、主要得意先の工場の統廃合が止まりませんでした。やがて既存得意先の売上減少をカバーしきれない状況になってしまいました。
 

トップ営業だけでは間に合わない。昨年、この状況を打破しようと新規開拓部門を設置し、ベテラン技術者二人を異動させました。そして、社長と手分けをして営業活動を続けていますが、社長以外の新規開拓が思うように進みません。
 

「このままではマズイんですよ。新規得意先の開拓が急務なんですが、我が社にはムリなんでしょうか」
 

 
 
■1.新規開拓の重要性
 

何らかのご縁があり、得意先に恵まれてきた企業は、どうしても新規開拓力が弱くなります。どれだけ技術が高くても、どれだけ誠実に仕事をしても、そもそも活躍する場がなければ会社は成り立ちません。この当たり前のことを忘れがちです。
 

本来、企業経営は、自ら顧客を開拓する力を育まなければ、何も始まりません。創業者であれば誰もが当たり前に知っていることです。例外として、特定の企業から顧客を紹介されるから大丈夫というケースがあるかも知れませんが、紹介がなくなったらどうなるのでしょうか。商売の源泉を自らコントロールしていない、できないというのは、相当なリスクだと思います。しかし、得意先に恵まれてきた企業は、顧客開拓よりも、技術を高めれば… 良い仕事をすれば… と一見もっともらしいことを優先してしまいます。
 

既存得意先の既存案件は、今後も100%継続受注できるとは限りません。いつまでも特定の企業から紹介してもらえるとは限りません。にもかかわらず、I社長の会社も、この症状に陥っていました。
 

参考までに継続受注率と数年後の業績規模を電卓で計算してみてください。
 
継続受注率 90% 80% 70%
直近の業績 100 100 100
<1年後>  90  80  70
<2年後>  81  64  49
・・・
<7年後>  48  21   8
 

頭で試算するのではなく、実際に電卓を叩いてみてください。1年毎に0.●●をかけるたびに、この重要性を実感するでしょう。
 

「このまま既存得意先に依存していてはマズイ!」と。
 

もちろん業種・業態によって平均的な継続受注率は異なります。中には継続受注がない分野もあるでしょう。この場合は、既存の受注パターンと置き換えて考えてみてください。
 

社長は、この複利計算の恐ろしさ、新規開拓の重要性を十分に認識しています。しかし、御社の社員は、どれだけこの重要性を認識しているのでしょうか。一度、電卓を叩かせてみてください。
 

 
■2.業績不振企業の3大特徴
 

I社長は新規開拓の重要性を認識していました。しかし、直近の業績は思わしくありません。いったい何が問題だったのでしょうか?
 

参考までに、小島がこれまで出会ってきた業績不振企業の3大特徴をご紹介します。
 
 

(1)<不振企業の特徴1> 戦略不在
 
 『組織は戦略に従う』:アルフレッド・チャンドラー氏
 
『戦略は組織に従う』:イゴール・アンゾフ氏
 

お勉強の分野では「どちらが正しいのか」という議論もありますが、この言葉を引用する方の背景や意味合いを考慮すれば、どちらも正しいのではないでしょうか。
 

前者は、組織が戦略を実現する機能として設計されるもの。後者は、どれだけ戦略が正しかったとしても、実行するヒトや組織に馴染まなければ結果を出すまで続けられないもの。つまり、戦略と組織は、相互に補完する関係にあるからです。
 

いずれにせよ、組織が望む成果を上げるためには、戦略が必要なのは間違いありません。(戦略をどのように定義するかは割愛します)
 

ざっくり戦略の要素を考えてみると、A.理念やビジョンを実現する方向性で、B.顧客を創造(顧客価値を創造)するために、C.「誰に」「何を」「どのようにするのか」を明確にする必要があります。
  

しかし、不振企業のほとんどは、この戦略がありません。もしくは、既存やり方を延長した「中期経営計画」や「単なる目標数値の設定」を「戦略」だと勘違いしています。
 

同じような計画や単なる数値目標を、毎年ローリングして掲げても、意味がありません。所詮、現在の延長線上で考えられた「戦術」止まりです。理念やビジョンを実現するためにどうしたよいのか。そもそもどうやって戦うのか。戦い方を変えていく必要性を忘れてしまいます。こういった企業は、小手先でどうするのかという点に終始します。その「戦術」を「戦略」と呼んでしまっています。
 
 

(2)<不振企業の特徴2> 組織の官僚化
 

経営環境が変わらなければ、戦略不在のままでも何とかなります。しかし、経営環境は変わり続けています。そして、戦略不在の状態が続くと組織が官僚化します。
 

すると、既得権を握り締めた古参幹部たちが老害化します。かつての成功体験があるから厄介です。本来であれば、環境の変化や戦略の変更にあわせ、戦い方を変えなければなりません。ところが、組織に芽生えた改革の兆しを見つけると「過去のやり方が徹底できていないからダメなんだ!」と、早々に芽を摘んでしまいます。この現状維持システムはとても協力です。
 

近年、ワイドショーでは、スポーツ界で起きている組織的な問題、具体的には柔道やレスリング、ボクシング連盟で起きた告発や、ラグビーの危険タックルなどの話題が紹介されています。この根源には、組織の中にある<変革を求めるエネルギー>が臨界点まで達したのだろうと解釈しています。組織が崩壊する前に、膿を出し切ろうとしているのではないでしょうか。
 

表現は違えど、大手企業や上場企業でも、内部告発や働き方改革などを通じて、官僚化された組織の問題を是正しつつあります。
 

しかし、中小のオーナー企業では、ほとんど告発されません。されたとしても退職する社員が労基署に駆け込むケースぐらいです。社員の立場からすれば、組織に所属したまま告発し、組織が変わるのを待つよりも、働く場所を変えたほうが圧倒的にリスクが少ないからです。このため、現状の組織に対して課題意識がある社員ほど、うんざりして退職してしまいます。
 

また、現状を打破するために、組織を変更する会社は多いものです。明確な戦略があれば良いのですが、戦略なき組織変更は徒労に終わります。組織名が変わるだけで主要ポストの人選はあまり変わらない。結果として名刺を印刷しなおしただけ。何も変わりません。よくあるNGパターンです。
 

いずれにせよ、組織の同質化が進んでしまいます。
 
 

(3)<不振企業の特徴3> 人材の枯渇
 

先行き不透明な時代は、特に経営者自らが「戦略」を練り直す必要があります。また、ボトムアップの仕組みがある企業では、経営者の理念やビジョンに基づき、幹部や主力社員から多様な「戦略(案)」が上申されます。そして、それを参考にトップが意思決定するパターンもあります。両方が相互に影響しあうと理想です。しかし、現状の延長線上で戦う組織、「戦術」に終始し官僚化した組織では、こうはいきません。
 

課題意識の高い異端児を排除し、同質化した職場には、YESマンしか残っていないからです。当然、顧客の創造・価値の創造よりも、組織内部の忖度を優先した平凡な案しか上がってきません。多様性を否定した組織は、徐々に人材が枯渇していきます。実際に枯渇していると実感したころには、かなり重症化しています。
 

「我が社は、人材が枯渇している」と悩む社長は多いものです。「突然変異でスパーマンのような優れた社員が出てこないか」と期待しても現状は変わりません。枯渇させてしまった原因は、戦略不在・組織の官僚化を許してしまった経営者自身にあるかもしれません。
 

  
■3.社長自ら挑戦しているのか
 

I社長は、トップ自ら新規得意先を開拓し、何とかやってきました。しかし、新規開拓部門のベテラン技術者をみて、「我が社にはムリかもしれない」と悩んでいました。
 

小島は、相談を受けながら根本的な問題に気づきました。そして、I社長に伝えました。
 

「社員への不満もあると思いますが、社長自ら挑戦していますか?」と。
 

I社長は、目を丸くして驚いていました。「何をいっているんですか? 私はこれまで新規開拓に挑戦してきましたよ。」といわんばかりの表情でした。
 

確かに、下請け体質からの脱却という観点でI社長は挑戦してきました。しかし、提供する価値そのものは、かつての延長線上で戦おうとしていました。妥協した挑戦だったのです。つまり、環境変化にあわせた戦略の不在。新たな価値をどのように創造するのかといった観点で挑戦していなかったのです。
 

I社長や技術者たちは、現在に至るまで様々な経験を重ねてきました。また、修理・改良の現場を通じて、多くの工場を見てきました。このため、どういった工場が生産性が高いのか、どういった工場で不具合が少ないのか、どのように自動化を実現しているのか、工場全体の配置や各設備の特徴、材料や治具・工具の選び方など、様々なコツを肌感覚で知っていました。
 

このノウハウを活かせば、既存の修理・改良といった主治医的な関わりにとどまらず、人手不足に悩む中小企業の工場向けに根本的にあり方を見直すコンサルティングサービスを提供できるかもしれません。上流を押さえることで、既存の修理・改良サービスの裾野も広がることでしょう。
 

<我が社にはムリと決めつける前に、社長自ら挑戦してみたら>
 

社長が挑戦する姿を見せれば、社員も徐々に挑戦するようになります。ムリだとあきらめたら何も実現しません。やると決めて、できる方法を考え、工夫し、実行し続けるだけです。
 

もちろん新規事業の立ち上げは容易ではありません。困難の連続でしょう。しかし、新たな戦略を立て、一歩踏み出さねば、何もはじまりません。そして、1つ補足するなら、立ち上げを支援する仕組みを同時に構築する必要があります。特定の突出した人材に依存せず、ふつうの人が持つ個性を組織的に引出し、日常の仕事に活かす仕組み、挑戦する仕組みです。この仕組みが、組織に柔軟性をもたせ、人材を育むことになるでしょう。
 

戦略不在、組織の官僚化、人材の枯渇といった不振企業の3大特徴に染まる前に、ぜひ社長自ら挑戦してみてください。失敗はありません。どのような結果であれ、次につながるフィードバックがあるだけです。挑戦するリスクと挑戦しないリスク、御社はどちらを選びますか。

 

※当社は、社長の戦略実現を支援する仕組み、幹部や主力社員から戦略案を引き出す仕組みとして、「社長も社員も心から安心できる状態をつくる【3年分 受注残をつくる経営(業績3年 先行管理の仕組み)】」を推奨しております。全社員が進化成長しながら稼ぐ、独自のマネジメント手法です。興味がある方は、ぜひ弊社セミナーご参加ください。

 

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