ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第111話なぜ、社員教育に熱心な会社は成長が止まるのか?

成長企業は「後で教育」 停滞企業は「先に教育」 教育頼みは変われない
第111話:「なぜ、社員教育に熱心な会社は成長が止まるのか?」( 成長企業は「後で教育」 停滞企業は「先に教育」 教育頼みは変われない )

 

A社長 : 「人は財産。我が社は社員教育に力を入れています。先週も研修があって……」
 

B社長 : 「当社も教育を重視してますよ。10年以上前から社員研修を開催していて……。この前、面白い研修見つけたんですよ……。御社はどんな研修を取り入れているんですか?」
 

研修好きの社長が集まると頻繁に見られる会話です。
 

「人材」を、主に「人的資本」ととらえるのか、「人的資源」ととらえるのか。これは、社長の思想によるものです。どちらが正しいと言うものではありません。その上で、研修好きの社長は、自身を前者だと信じています。
 

「人的資本」ととらえる社長は、 「ひとりの人間が発揮する資質や能力は【無限である】」 という考え方で、社員の将来の可能性に期待しています。
 

「人的資源」ととらえる社長は、 「ひとりの人間が発揮する資質や能力は【有限である】」 という考え方で、社員の現在の労働力に期待しています。
 

繰り返しますが、教育重視の会社は、社長が社員を「人的資本」と考えています。しかし、この多くの会社は、ある規模を超えたところで、組織の成長が止まってしまいます。
 

特に年商10億円未満で躓く会社が多く、事業が成長しないだけでなく、利益率も低くなっています。なぜなら、本当の意味で人を大切にしていないからです。
 

事実、「人的資本」派だと信じている社長の多くは、信じていた人材が期待するほど成果をだしてくれないとこっそり愚痴をこぼしています。例えば、「社長の分身がほしい」、「右腕となってくれる幹部がほしい」、「優秀な社員がほしい」、「いいかげんに慢性的な人材不足を解消したい」、といった類の言葉を呟いたことがあるあなたは該当しています。
 

なぜ、このような愚痴がでるのでしょうか? なぜなら、会社が社員教育にどれだけ注力したとしても、人の根本的な課題が解消されていないからです。
 

教育研修後の状況を確認するとよく分かります。
 

ひとまず、教育研修を通じて人が順調に育ったとしましょう。実際には、希少な優秀人材にのみに当てはまるケースです。その後、どうなるのでしょうか。
 

特定の優秀社員に仕事が集中するようになり、属人的な仕事配分のままその人に仕事が貼り付きます。本人は頑張っているのですが、なんで自分だけ?と組織への不満が蓄積されていきます。
 

経営陣は優秀社員を評価しており、そろそろ幹部に抜擢しようと考えます。しかし、その頃には優秀社員は会社に見切りをつけています。新たな活躍の場を求めて、あっという間に退職してしまいます。
 

その一方で、どれだけ教育を実施しても多くの社員は育ちません。なぜなら、お勉強をしてもその場限り。人は大して変わらないからです。そもそも教育では人が育たないからです。良くて一時的にモチベーションが上がるだけです。
 

< 停滞企業は教育重視 教育頼みは変われない >
 

着実に自社を成長させる会社の社長は、重点が異なります。「社員教育が重要だ! 」とは言いません。「別のことの方が圧倒的に優先度が高い」と考えています。
 

社員教育は、とても価値がある取り組みです。ただ、経営の観点で考えると、もっと先にやらなければならないことがあり、優先度が低くなってしまうのです。
 

< 成長企業は「後で教育」 停滞企業は「先に教育」 教育頼みは変われない >
 

では、伸びている会社は何に注力しているのでしょうか?
 

この答えはシンプルです。「教育」ではなく、「育つ場の提供とその仕組みづくり」に専念しています。
 

人はアウトプットに迫られたとき、本気で何かを吸収しなければ解決できないとき、覚悟を決めるしかなくなります。そして、新たな武器(新たな考え方や行動習慣)を自分のものにしようとするのです。
 

早い話、多くの社員は「追い込まれて」はじめて成長するからです。
 

つまり、伸びる会社の社長は「修羅場体験」がその人を成長させると分かっているのです。
 

人は、実務に直結した課題が目の前にあり、自身の責任の範疇でアウトプットに迫られたとき、ようやく自分事として認識することができます。そして、修羅場を克服する経験を重ね、後から振り返って成長を実感するものです。
 

では、単純に修羅場に社員を投入ればよいのでしょうか?
 

この答えは、もちろんNGです。近年、メンタルがタフな社員は少ないものです。ですから単純に修羅場に投入すると多くの社員は脱落します。これでは元も子もありません。「育つ」「育たない」以前の話ですし、補充のための採用費も膨大に増え続けます。
 

ですから、会社として前提を整えなければいけません。
 

前提として、社長や役員が設計した儲かる事業モデルがあり、組織全体の中期ビジョンや今期の方針があり、各部門の役割や使命を定め、実施すべき行動が言語化されていなければなりません。「何を」「どうやるのか」という正しい行動を示した上で、修羅場に社員を投入しなければならないのです。
 

修羅場とは、その立場・役割の担当者にとっての修羅場です。ですから、社長や幹部社員からしたら、とても修羅場には見えず、通常業務だと感じることも多いものです。ここは対象の社員になったつもりで修羅場の難易度を見極めてください。
 

その上で、正しい行動を本人が実践できるよう、実務を通してトレーニングさせるのです。これが本当のOJTです。
 

伸びている会社は、本人にとっての修羅場の提供とOJTトレーニングを通じて、人を育てています。この時、トレーニングは訓練といったニュアンスです。
 

社長や幹部社員は、訓練の状況と発揮能力をみて将来の幹部候補を選抜します。そして、選抜した人材には、新たな学びの場を提供します。これが、本当の教育です。教育とは、社員へのご褒美として実施するものなのです。
 

経営には、優先順位があります。 【場の提供+仕組みづくり】 → 【トレーニング】 → 【選抜教育】 これが、伸びている会社に共通する順番です。
 

本コラムを読んでいる方の中には、伸びている会社の社長は、冷徹に見えるかもしれません。短期的には社員を「人的資源」として考えているように見えるからです。
 

しかし、冷静に分析をしてみると伸びている会社の社長ほど社員に「人的資本」になってほしいという願いが込められていることに気がつきます。だから、あえて社員に厳しくしているんだと分かるからです。
 

ですから我が社を成長させたい社長は、正しく判断してください。教育にこだわる前に、「育つ場の設計」 や 「経営の仕組み」 といった前提を整備することに専念してください。そして、しっかりと稼ぐ構造をつくり、実務で人が育つ環境をつくってください。その上で、さらなる取り組みとして選抜教育に取り掛かってください。
 

社長は、自社の構造変革から逃げてはいけません。人材育成部門や研修会社に責任を転嫁してはいけないのです。社長しかできない仕事があります。普通の社員が、普通に活躍できる仕組みをつくること。これに経営資源を集中させ、形にするのが社長の仕事です。これが経営の勝負ポイントです。
 
 

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