ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第110話変革させる社長と停滞させる社長の違い

できる・できない、する・しない、この着眼では停滞する
第110話:「変革させる社長と停滞させる社長の違い」( できる・できない、する・しない、この着眼では停滞する )

 

「小島先生。来期の予算と実行計画の資料ですが…」
 

N社長は、小島に資料を渡しました。資料に目を向けると、事前に社長から聞いていた全社予算には程遠い数値とスローガンが並んでいました。
 

「社長、本当にこの内容で来期を向かえるのですか? この数値ではそもそも不十分ですし、これはスローガンです。実行計画として運用に落とし込めそうもない。社長もお気づきではないですか? 」と小島は確認しました。
 

N社長は、冴えない表情で言われます。
 

「はい。そうなんですが。来期は致し方ないかと。今回、来期予算づくりは各部門長に主導してもらいました。もちろん、会社として求めている数値は示しましたよ。ただ、現場からの積み上げではこれが精一杯らしく、それに新体制になったばかりで厳しいことも言い難くて……」
 

前任のN会長時代は、会長の言うことが絶対の会社でした。非常に高い予算を立て、精神論で追い込んでいく。その結果、前期実績はかろうじて超えるものの設定していた予算には未達成。そんな繰り返しをしていました。
 

一方、経営を引き継いだばかりのN社長は、会長のやり方に疑問をもっていました。それに社長としての経験値も少ないため、なかなか厳しいことが言えません。実際、会社として求める数値も控えめに提示しました。にも関わらず、各部門長からの回答はそれを大幅に下回るものだったのです。
 

小島は役割として伝えました。
 

「N社長。幹部役員や社員に期待したい気持ちも分かりますが、それは間違いです。もう一度、来期予算と実行計画を作り直しましょう。御社には時間がありません。それに、このままでは社員にも顧客にも不誠実です」と。
 

N社の業界は、法改正の影響や新たな競合の出現により、競争環境がより一層厳しくなっています。従来の戦い方では、どの会社も存続できなくなります。
 

このとき、自社の変革の舵を切るのは社長の仕事です。全責任をとるのは社長の役割です。ですから、社長が事業に誠実であればあるほど、厳しいことも言わなけれなりません。その上で、伝え方を工夫するだけなのです。
 

ですから、社長は社員に「できる」か「できない」かを質問してはいけません。そもそも会社を変革する際に、相手に聞くような着眼ではないからです。
 

変革では、従来のやり方や考え方を変えることが求められます。相手はそれを経験したことがありません。「やったことがなく、成功する保障がないことを確実にできますか? 」と尋ねて「はい。できます! 」と応える人はよほどのリスクテイカーしかいません。皆無だと思った方が適切です。
 

それに、「できる」理由も、「できない」理由も、考えようによってはいくらでも上げられます。その一部を、もっともらしく言われても、あくまで一つの意見です。ですから、質問するようなことではないのです。
 

< できる・できない この着眼を社員に質問する会社は停滞する >
 
 

同様に、社長は社員に「する」か「しない」かを確認してはいけません。そもそも会社を変革する際に、相手に聞くような着眼ではないからです。
 

繰り返しになりますが、変革では従来のやり方考え方を変えることが求められます。相手はそれを経験したことがありません。日本企業には、ファーストペンギン※1のように自ら挑戦する社員が少ないからです。
 

(※1:「ファーストペンギン」とは、集団で生活しているペンギンの群れの中で、アザラシなどの天敵がいるかもしれない海へ、餌となる魚を求め最初に飛び込む1羽のペンギンのこと。同様に、リスクへの恐れを乗り越え最初に挑戦する人物を、敬意をこめてファーストペンギンと呼んでいる)
 

これは、日本文化の影響が原因で、同調圧力が強いからです。逆に多数の意見には、あまり疑うことなく従います。昔ビートたけしが漫才で揶揄した「赤信号、みんなで渡れば恐くない」のように。
 

ですから、何かを「する」か「しない」かの判断は、社員にゆだねるものではありません。全責任を背負う社長の仕事なのです。
 

< する・しない この着眼を社員に確認する会社は停滞する >
 
 

つまり、自社を「変革する」か「しない」かは、社長が決めることです。ここに「できる」か「できない」かは関係ありません。社長は、感情と言った主観を理解しつつもそれに振り回されることなく、冷静に客観的にやるべきことを判断しなければならないのです。
 

社長と社員は、役割が異なります。ですから、できる・できない、する・しない、といったレベルで、幹部役員や社員に主体性を求めたり、期待したりすることは、そもそも間違いなのです。
 

とはいっても、社長が「変革する」と決めて、社員に「やれ」というだけではいけません。何をどうやるのか、この骨子となる戦略は、社長が自ら考えつくし、社員に伝わるように言語化しなければなりません。
 

つまり、中長期的に我が社はどう変わるのか、そのために来期は何をどうやるのか、社長の言葉で基本骨子を明文化しなければならないのです。
 

それが、経営方針であり、3年先行経営の計画になるのです。社長は、この道筋を考えつくし、社員や顧客が共感できる表現で描くのです。
 

その上で、社長は初めて社員に「現場でどのように工夫してやるのか」と相談します。それは、できる・できないでも、やる・やらないでもなく、どう工夫するのか? という着眼です。
 

この状態を仕組みで回せるようになれば、社員は楽しんで働くようになります。逆に、もし社員が楽しんで働いていなければ、明確に方針が示せていないか、仕組みが構築できていないか、その両方に問題があるかいずれかです。
 

< どのように工夫してやるのか この着眼を社員に相談する会社は変革する >
 
 

日本では3月決算の会社が多いですね。4月まであと2ヶ月。今回は、例年通りに方針検討会を開いたり、予算組みをしたり、従来パターンを繰り返すことは止めませんか?
 

我が社を本気で変革したい社長は、このチャンスを確実に活かす方々です。全社方針・来期予算は自社の将来を決める分岐点です。とことん考えつくして、改めて全社に示しましょう。弊社は、挑戦する社長を応援しております。御社に明るい未来が訪れますように。
 
 

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