第24話できる社長の<失敗しない経営コンサルタントの選び方>
「いったいどの会社に頼めばよいのでしょうか…。」
「いったいどのコンサルタントに頼めばよいのでしょうか…。」
経営者は、常に我が社の将来を考え、現状を打破すべく先手を打ち続けます。しかし、ものごとを進めようにも、社内の力だけではなかなか変わりません。なぜなら、社員は現状維持を優先するからです。そこで、選択肢の一つとして外部ブレーンを活用する方法が挙げられます。
冒頭の言葉は、お酒の席でご一緒したM社長のご質問です。専門商社を経営しており、外部ブレーンの活用を考えていました。
この会社の強みは、泥臭い営業で顧客との関係性を強化できること。同業他社の業績が低迷する中、業界特有のツボを押さえ、好業績を続けています。しかし、M社長はマンパワー経営に危機感を持っていました。なぜなら、スマートデバイスを活用した新規参入業者が登場しはじめたからです。もし、この業者が業界特有のツボに気がついたら…。同市場の戦い方は、ガラリと変わるでしょう。我が社には約150名の社員がいる。また、その家族もいる。路頭に迷わせるわけにはいきません。
例えば、インターネット印刷通販で有名なプリントパック。印刷不況の中、製版事業をやめ、印刷事業に集中しました。早く・安く・楽にを実現。2002年の事業開始以来、初年度の売上高2億円から2016年度の売上高276億円。10数年で100倍以上に急成長しています。実際に中小企業が発注する印刷物の商流が変わりつつあります。
世の中の流れを見れば、どの業界も早かれ遅かれ、戦い方のルールが変わるでしょう。M社長の会社も、あっという間に商圏を失いかねません。そこで、強みである泥臭い営業の良さを残しつつも、新たな戦い方を模索しなければなりません。勝っている今のうちに手を打つべき。先手必勝です。そして、M社長ご自身のアイデアをさらに良いものにし具現化するために、外部ブレーンの力を活用した方が良い。このことは分かっています。しかし、いったいどの会社の誰に頼めばよいものか…。
今週は、できる経営者が知っている<失敗しない経営コンサルタントの選び方>をお伝えします。もし、外部ブレーンを選定するタイミングであれば、ぜひ参考にしてください。
■1.経営コンサルタントを選ぶ前提とは
経営コンサルティング業界は、玉石混淆の世界です。たまたま出会ったコンサルタントに依頼するのは、何も考えず近所の宝くじ売り場で宝くじを買って、当たらないかなぁと祈っているようなもの。運任せではあまりにも残念です。まずは、経営コンサルタントを選ぶ前提知識を確認しましょう。
そもそも、経営コンサルタントは、法人の医者です。広い意味では、医療従事者、健康促進支援者を含んだ表現かもしれません。同じ医者でも、担当している診療科はさまざまです。同じ医療従事者でも、看護師・薬剤師・医療事務などさまざまな役割があります。同じ健康促進支援者でも、食事・運動・リハビリなどさまざまな役割があります。中には眉唾物の医療行為を提供しているケースもあります。経営コンサルタントも同様です。さまざまな立場・役割があり、中にはコンサルタントモドキも潜り込んでいます。
そのため、同じ立場・役割でも、信用に値するか否かはわかりません。後から「もう二度と頼むまい」と決心する経営者もいれば、「活用して本当に良かった」と価値を実感する経営者もいます。
そこで、経営コンサルティング会社やコンサルタントを選ぶ前提として、
(1)どのような立場・役割の経営コンサルティング会社があるのか
(2)自社に必要な立場・役割の経営コンサルタントを選定できるのか
(3)信用に値する経営コンサルタントなのか
この3点は必ず押さえましょう。最低限、留意すべき点です。
もし、自社の課題に適した医療を選択し、適切な医師を選択できれば、将来の見通しが明るくなるでしょう。しかし、万が一選択を誤れば、無駄な治療を続けることになります。浪費するだけならまだしも、場合によっては体調悪化を招き兼ねません。冷静に判断しましょう。
この前提を把握しなければ、毎年社長が勉強しただけで現場で実行されなかったり、数年毎に別のコンサルタントにお願いし組織を混乱に招いたりするだけになってしまいます。限られた経営資源を有効に使いましょう。
プライベートであれば、コレクションも趣味の一つとして楽しめます。しかし、会社は別です。コレクターのようにコンサルティング契約コレクションを続け、自己満足に浸るのか。手に入れた道具(コンサルティング)を活用し、自社を変革させるのか。我が社の経営を担う立場として、どちらを優先させるのか言うまでもありません。
■2.経営コンサルティング会社のタイプはいろいろ
それでは、どのような経営コンサルティング会社があるのでしょうか。
立場・役割によってさまざまなコンサルティング会社が存在します。特に外資コンサルティングファームや○○総合研究所など次の3区分は、中小・中堅企業の変革をうながす外部ブレーンとしてオススメしません。なぜなら対象が異なるからです。
・【戦略系】:斬新すぎる提案に現場がついてこれません。特に中小企業が実行するという観点では考慮不足が目立ちます。また、投資金額も桁違いに高くなります。
・【IT系】:結局は自社系列のシステム提案・導入が目的です。自社に適さないシステムだったり、適していても過剰投資になってしまったり、保守・メンテナンスなどで費用がかさみます。
・【シンクタンク系】:業界の分析データ(過去)をどれだけ眺めても、具体的に何をどうするのか(未来)。自社に落とし込めません。あくまで目的は、過去の知識・データを得ること。決断できない経営者がお守りを買うようなものです。
他にも【財務系】・【人事系】・【M&A系】・【再生系】など、さまざまなタイプが上げられます。この区分のコンサルティング会社のサービスは、実際のところ<大掛かりな作業代行>をしているようなものです。より中小・零細企業向けになれば、税理士・社労士・中小企業診断士が、社内でできないもろもろの雑務を代行し、作業代金を授受しているのと同じです。構造上はかわりません。自社に明確な課題があり、かつ解決先がすでに分かっている場合。単なる外注先として、割り切って活用すると良いでしょう。ただし、あくまで作業代行なので、費用を安く抑えることが必須条件です。くれぐれも高付加価値サービスを受け取るような高単価を支払わないように注意してください。
その一方で、何らかのテーマに特化して仕組みづくりを得意とし、実行支援まで長けているコンサルティング会社もあります。もし、御社が本気で変革を起こしたいのであれば、これらを考慮したうえで戦略の実行まで支援できるコンサルティング会社を選びましょう。
■3.経営コンサルタントのタイプもいろいろ
実は、コンサルティング会社を選ぶよりも、コンサルタントを選ぶほうが重要です。
結局は「人」だからです。コンサルティングがスタートすると社員は不安を感じます。このとき「正しさ」で人は動きません。「信頼」が人を動かすからです。つまり、変革が上手くいくか否かは、誰が言うかにかかっているからです。
それでは、自社に適した経営コンサルタントをどのように選定すると良いのでしょうか。
・顧問税理士や社労士に聞いてみる
・融資を受けている銀行に相談してみる
・大手のコンサルティング会社に相談してみる
この3つの方法は、いずれも危険です。なぜなら相談相手が、利害関係者になるからです。広い視野で、客観的にアドバイスをしたり、判断を促したりできないからです。我が社に適したコンサルタントを選択できなくなってしまいます。選択肢を広げる方法は、医療業界の常識と同様です。セカンドオピニオンに相談し、広い視野で判断することをオススメします。利害関係がなく業界の全体観を把握している第三者(できれば複数)に相談してみましょう。そこからあなた自身で、業界の全体観を推測し、自らの責任で選択してください。
M社長は、偶然小島とお酒の席で一緒になりました。ぜひ、小島以外のコンサルタントや業界に詳しい方を見つけ、同じような質問をしてみましょう。その上で、全体観を押さえると良いでしょう。
とはいっても、適切な相談相手が見つからないという経営者の方へ。
安心してください。それぞれのコンサルタントの特徴をお伝えします。コンサルタントの傾向として把握しておけば、選びやすくなるでしょう。
(1)大手コンサルティング会社に勤務するコンサルタント
→ 無難なテーマを無難に実施するならオススメ(対応レベル:中)
○:さまざまなテーマを取り扱っており、情報量も多い。チームで関わるため、話が早い。
×:ベテランコンサルタントが判断し、実務は若手コンサルタントが行う。営業/間接部門もあるため固定費が高くなり投資費用も高くなる。
※サラリーマンコンサルタントが教科書的なことを要求する場合もあります。いかに優れたコンサルタントを引き出せるのかがポイントです(顧客よりも社内営業を優先にして生き延び続けた“太鼓叩き系ベテランコンサルタント”には細心の注意が必要)。大手コンサルティング会社が主催する勉強会に参加し、同じように参加している経営者にトップ営業をするという裏技もあります。コンサルティングそのものよりも、付帯するものに価値があると思います。
(2)中小企業診断士やMBA等の資格取得後にいきなり独立したコンサルタント
→ 実務経験無しに独立した場合は、オススメしません(対応レベル:中~低 ←バラつきがある)
○:とにかく安く依頼できる。さまざまな相談にのってくれる。
×:診断士協会等の下請け仕事が中心。零細企業向けの作業改善レベルにとどまるケースが多い。もしくは、知識偏重となり実務の押さえどころを把握していないケースが目立つ。
※組織として体裁をなすまでの、もろもろの相談をする相手ならありです。しかし、組織経営を目指すのであれば、十分とはいえません。また、お勉強会の講師ならありです。書籍を出しそこそこ有名な方もいますが、あまりオススメしません。実務よりも士業向けのコンサルタント養成講座や講演を生業にしているケースがほとんどだからです。
(3)大手コンサルティング会社を卒業し、独立したコンサルタント
→ 自社に適したテーマに一致した場合は特にオススメ(対応レベル:高~低 ←バラつきが大きい)
○:実務経験が豊富かつ、独立してやれるだけの実力がある。経営者の立場を肌感覚で理解している。
×:特定のテーマに限られている。アタリ⇔ハズレのバラつきが大きい。提供側の時間が割けず契約待ちになるケースもある。
※理論と実践が融合している場合、再現性が高い。しかし、なかなかこの手の情報が出回らない。運よく出会うことができれば良いが、闇雲に探しても見つけられるものではない。大手コンサルティング会社の勤務経験が5年未満の場合は、実力不足で次のステップに進めなかっただけケースも多い。いずれも注意が必要。
また、経営コンサルタントという肩書きの研修講師にも注意しましょう。教科書を読んで知識を伝えるだけという、単なる研修講師(コンサルタントモドキ)が多いからです。書籍を何冊も出している方の中には、「実は、講演活動を生業としており、コンサルティング現場の経験がほとんどない」という笑えないケースもよく耳にします。小島も過去に著名な著者に直接相談をされ「え~この方が!?!?」と心底驚きました。経営コンサルタントと名乗り、メディアに頻繁に登場するコンサルタント風タレントと、実務に精通した実力派コンサルタントは全く異なるものです。実際に、コンサルティング現場の実務経験が豊富な方なのか、提供するテーマの理論体系(知識や知恵)が確立されているのか、プロフィールをしっかりと確認しましょう。
■4.経営コンサルタントの選び方
結局のところ、コンサルタントを選ぶのは、経営者の仕事です。
候補に挙がったコンサルタントが、
(1)実務経験が豊富で、提供するテーマの理論体系が明確なこと ※何でも屋はNG
(2)理論が実践で磨かれ、知識が知恵に進化していること(知識と実践が融合されていること)
(3)現場との相性が合いそうで、人格者であること(現場から反発が出そうなタイプは避ける)
(4)精神論だけでなく、現場で使える仕組みづくりにこだわっていること
であるか、チェックしてください。
このチェックをクリアしたら、いろいろと相談してみてください。そして、最後にこの質問をしてください。
「コンサルティング後の顧問契約は可能ですか」と。
この質問は、質問をしたコンサルタントに対して最後の踏み絵になります。
提供するテーマが明確で、仕組みづくりに長けたコンサルタントほど、
「特に顧問契約はいらないと思いますよ。御社のメンバーでだけで仕組みがまわるようになれば、私は不要ですから。もちろん必要であれば、いつでも相談にのりますよ。」
と言うでしょう。
コンサルティングそのものに自信が無く、顧問契約がほしいコンサルタントモドキほど
「成長レベルに合わせて併走します。ぜひ、一緒に頑張り続けましょう!」
といって長期顧問契約を推奨するでしょう。(本当にお互いに成長しているのであれば、問題ありません)
中には組織ぐるみのコンサルティング会社もあります。ある大手コンサルティング会社では、社内でコンサルティング契約10年表彰、20年表彰などといった、<ありえない評価基準>を設けている会社もあります。自社の固定費が高いので業績を安定させたいという内向きの理論でしょうが、全く以ってクライアント志向ではありません。
結論。
もし、小島が事業経営を担う中小企業のオーナー経営者であれば、
(1)作業の代行を依頼するのか
(2)知識の提供を求めるのか
(3)自社を変革する知恵を共に創造し、仕組みに落とし込むのか
目的を見極め、テーマに応じて最適なコンサルタントを選ぶよう最善の努力と工夫をします。そして、自前で運用できるレベルになるまで成長を支援してくれるコンサルタントを選択します。なぜならコンサルタントが去った後も、自社で再現できなければ意味が無いからです。大切な我が社でだからこそ、ベストを尽くす。自社の将来を見据え慎重に調査した上で、大胆に決断しているだろうと思います。(場合によっては、情報収集として大手コンサルティング会社の会員サービスを利用するかも知れません。ただし、あくまで補完的に利用します。コンサルティングはよほどのことが無い限り依頼しないでしょう)
自社に適したコンサルタントをフル活用して、我が社を飛躍させるのか。使えないコンサルティングコレクションを増やし、社員に飽きれられるのか。
ぜひ、当コラムをヒントに、我が社の勝負ポイントを見極めてください。コンサルティング難民やセミナー難民にならぬようご注意いただければ幸いです。もし、上記に条件に一致する経営コンサルタントが見つかれば、ぜひじっくりと話を聞いてみてください。きっとよきパートナーとして関わることができるでしょう。
追伸>
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