ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第39話学びを活かす社長と学びで終わる社長の違い

インスタント思考の社長は、学んだ手法に溺れてしまう インストール思考の社長は、学んだ手法で飛躍する
第39話:「学びを活かす社長と学びで終わる社長の違い」(インスタント思考の社長は、学んだ手法に溺れてしまう インストール思考の社長は、学んだ手法で飛躍する)

 

「なるほど。そういうことだったんですね。」
 

人は「知りたい」という欲求を持った生き物です。社長となると、この欲求がさらに強くなるのではないでしょうか。
 

勉強会を終えて、参加なされた方に感想を伺うことがあります。すると、新たな知識を得てとても満足している様子が伺えます。
 

「大変勉強になりました。我が社でも参考にしてみます。」
 

このような感想をお聞きすると、二つの感情が同時に湧き出します。
 
・一つは、「これをヒントに、ぜひ飛躍してください。応援しております。」という気持ちです。
・もう一つは、「上っ面だけをマネして、失敗しないでください。注意が必要ですよ。」という気持ちです。
 

なぜ、二つの感情が湧き出すのか。
 

理由は、簡単です。
 

1年後、3年後、5年後、…、と時間を置いて、あらためてお会いすると、その社長の状況が、その社長の会社の状況が二極化しているからです。つまり、学んだ手法を活かし、自社を飛躍させる社長もいれば、学んだ手法に溺れ、残念な結果に終わってしまう社長もいるからです。
 

遠回りすると分かっているのに、あえてはじめから遠回りをする必要はない。
 

ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源や時間を浪費してしまう。そして、貴重な機会も見落としてしまう可能性が高くなる。そんな組織があれば、とてももったいないのではないでしょうか。
 

それでは、どのようにしたら、学んだ手法で飛躍できるのでしょうか。
 

今週は、この学びを活かすコツをご紹介します。
 
 

 
■1.インスタント思考の社長は、学んだ手法に溺れてしまう
 

環境変化を考慮すると、現状維持は衰退と同義語になります。
 

そのため、多くの社長は、我が社に何らかの変化をもたらすために、書籍を読んだり、学びの場に足を運んだり、出会う機会を増やしたり、新たな知識やアイデアを探します。
 

学びを大切にする社長と、現状維持に甘んじる社長。どちらが良いのか。当然、前者の方が良いですが、注意が必要です。どれだけ学びを大切にしていたとしても、手っ取り早く何とかしようと考えている社長は、逆効果になるケースが多いからです。つまり、インスタント思考の社長は、学んだ手法で溺れてしまうのです。
 

伝え手と聞き手には、大きなギャップが存在します。それにも関わらず、ギャップを考慮しない。これが原因です。事実、社長の思いが伝わらない…と、これまで何度も悔しい思いをしてきたのではないでしょうか。
 

そもそも論で考えましょう。伝え手と聞き手、それぞれの体験・経験は異なります。また、伝え手が言葉にした段階で、様々な背景を省略しています。さらに、聞き手が解釈した段階で、都合よく推測しています。このように根本的にギャップが生じる構造にも関わらず、伝え手は十分に伝えた。聞き手は十分に理解したと勘違いをしたまま放置すること、これが問題です。
 

同様の問題が、学びの場の伝え手・聞き手だけでなく、社長と社員、上司と部下でも常に生じます。また、学びと実践でもギャップが生じます。共通事項と例外事項のギャップもあります。
 

ギャップが生じうる箇所が、組織の内外にあるあらゆる接点で見つかります。にも関わらず、インスタント思考の社長は、上っ面だけで理解したつもりになり、さらに正確に伝わって当然という態度をとってしまいます。
 

すると現場はとても困ります。社長が新たな学びをする度に、新たな指示が飛び交い、振り回されてしまうからです。もちろんはじめは、現場なりに実行します。しかし、十分に伝わることはないため、上手くいきません。すると、また別の指示が下ります。
 

これを繰り返すとどうなるか。社員は、社長の指示を聞く振る舞いが上達します。しかし、実態は現状維持です。表面的には話を聞いたフリをする。そして、新たな指示を上手く回避することが得意になります。
 

一方で、なかなか上手くいかない状況を前に、社長は目移りをしてしまいます。このやり方は間違いだったと安易に判断し、別のやり方を探します。目の前の学びを消化することなく、別の学びに手を出します。
 

これが負の連鎖となり、やがて組織が疲弊していきます。
 

インスタント思考の社長や組織は、学んだ手法に溺れてしまう。
 

1度や2度の失敗は許容範囲かもしれません。しかし、もしインスタント思考で上手くいかないのであれば、同じ手法を次のインストール思考で試してみてはいかがでしょうか。
 
 


■2.インストール思考の社長は、学んだ手法で飛躍する
  

パソコンやスマートデバイスに、何らかのアプリケーションをインストールすることは、それほど難しくはありません。ユーザーIDとパスワードが分かれば、後はダブルクリックをして少し待つだけ。インスタントに完了します。しかし、ここにもワナがあります。
 

実は、このときインストーラーが、パソコンの仕様やバージョン、設定状況を事細かにチェックし、不具合が出ないようにインストールしています。途中で何らかの問題があれば、エラーを表示をして、対策を実施するようにユーザーをうながします。同時に複数のアプリケーションをインストールすることはなく、1つずつステップバイステップでインストールしているのです。
 

さらに、インストールした後も、使いやすくなるように初期設定をしたり、基本的な機能を実際に使ってみたりしながら、設定を変更をする必要があります。もしあなたが、システムに慣れているのであれば、簡単かもしれません。
 

ところが、もしあなたがはじめて行う体験であれば、事情が異なります。はじめてパソコンを使い始めたとき、はじめてスマートフォンを使い始めたとき、はじめて何らかのスマートデバイスを使い始めたとき、を思い出してみてください。
 

過去にパソコンの入門書を読んだりセミナーに参加したとき、概要を理解しできるつもりになったのではないでしょうか。宣伝のフレーズに心が躍り、既に使いこなせるのではと、妄想してしまいます。しかし、実際にパソコンを前にしてやってみると、予期せぬ画面に戸惑ったり、設定のポイントが分からず前に進めなくなったりします。
 

このとき、既に実践している方が横にいたらどうなったのでしょうか。ちょっとしたアドバイスをもらうだけで、確実に前に進むことができたのではないでしょうか。
 

そして、自分に必要なポイントを取捨選択して教えてもらうだけで、あっという間に基本的な機能を使いこなせるようになります。
 

何らかの学びを自社にインストールする際も同様です。直接アドバイスをもらえる環境は、自分ひとりで黙々とやる場合と比較して、どれだけ時間が短縮できるのか、どれだけ安心して前に進めるのか、どれだけやるべきことに専念できるのか、言うまでもありません。
 

インストール思考の社長は、こういったワナを認識し配慮しています。このため、決して学んだことを自社のみで実行しようとはしません。当事者のみだと、どうしても盲目的になり、目の前のワナに気づき難くなってしまうからです。
 

つまり、飛躍するコツは二つ。あれもこれも次から次へ手をつけるのではなく、1つずつ確実に身につけていくこと。そして、一流のスポーツ選手が一流のコーチをつけるように、適切なタイミングでアドバイスがもらえる環境に身を置くこと。これが大切です。
 

大切なことなので繰り返します。
 

・あれもこれもではなく、何らかの手法に絞って自社に導入する
 ・頑なに自前主義を貫くのではなく、外部のコーチを上手く活用する
 

これがインストール思考の社長がやっている「学んだ手法で組織を飛躍させるコツ」です。 
 
 

■3.インストール思考の社長が、さらに大切にしていること
 

さらにインストール思考の社長は、どのようなことを大切にしているのでしょうか。
 

それは、とても単純なことです。学んだことで一歩前進したとは思っていません。実践することでようやく一歩前進だと思っています。そして、インストールしたノウハウを実践するプロセスで、自社の実力に転換することにこだわっています。
 

「学ぶことで、学びが完了するのか。実践することで、学びがはじまるのか。」
 

この根本的な違いを知り、実践しながら探求しているのです。
 

もしあなたが勉強会に参加し「良いことを学んだ」と満足しているのであれば、既に学びは止まっています。その後の進展はなく、衰退に片足をつっこんでいます。「まだ見えていない伸びしろがありそうだ」と空白を感じているのであれば、その後も学びが続きます。
 

より丁寧に表現するのであれば、
 

・大きな方向性では「まだ見えていない伸びしろがありそうだ」と空白を残しつつ
 ・目の前の小さな一歩では「しっかり実践して満足感を味わっている」こと
 

大きな未完了を認識しながら、小さな完了の積み重ねをしていく。
 

これが、自社で新たなノウハウを実践し、実力に昇華させるとても大切な姿勢です。
 

結論をお伝えします。インスタントに何らかのノウハウを上っ面でコピーするのではなく、実践していくための土台となる仕組みづくりに専念してほしい。それが、社員が仕事の優先順位を見極められる仕組み、インスタントに結果を産み出せる仕組みになれば理想です。
 

このような仕組みは、決してインスタントにできるものではありません。インストール思考が必要です。当然、自社に落とし込むために試行錯誤をしなければできません。ただし、単に時間をかけて構築した方が良いわけでもありません。
 

もし、御社が適切なアドバイスをもらえる環境に身をおけば、10年20年とかかる仕組みづくりも、1年から3年という期間に短縮することができます。
 
 
・自前主義で、10年20年と時間をかけて新たなノウハウを創造するのか
・適切なアドバイスが得られる環境で、時間を短縮し1年から3年で新たなノウハウを定着させるのか
 

どちらを選択するのかは、経営者の決断一つです。
 
 
・インスタント思考の社長は、いつまでも学んだ手法に溺れてしまう。
インストール思考の社長は、時間を短縮し、学んだ手法で飛躍する。
 

次は、御社が新たなノウハウをインストールし、結果を出す番です。
 
 

追伸>
 経営の現場ではパソコンのインストールように簡単にはいきません。なぜならヒトはロジック以外にも感情の影響を受けているからです。つまり、ヒトの気持ちが感情に左右される以上、理屈だけでは上手くいかないのです。この点を知っていれば、なおさら適切なアドバイスを、適切なタイミングでもらえるような環境に身をおくことが大切だと分かります。ヒトが健康な身体を手に入れ、それを維持するために、主治医に定期的に診てもらうようなものですね。御社の主治医はどこにいますか。 
 

 

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