ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第38話社長の完璧主義を武器にするコツ

完璧主義 活かすも殺すも 社長次第
第38話:「社長の完璧主義を武器にするコツ」(完璧主義 活かすも殺すも 社長次第)

 

「社長のこだわりは、なかなか社員に理解してもらえないものですね。」
 

先日ご相談にいらっしゃったY社長。ご自身いわく、完璧主義者だそうです。
 

Y社長は、会社員時代から、自ら大きな目標を掲げ挑戦してきました。探究心が強く、確実に成果をあげてきたものの、会社員の文化になじめず独立。起業しトップに立つと、紆余曲折がありながらも、そのこだわりを活かし、事業を伸ばしてきました。
 

トップ自ら受注し、社員に厳しく指示命令をすることで業績をつくった時代。裸の王様になりかけていることに気づき、社員に任せるスタンスに切り替えた時代。プレイングマネジャーをマネジャーに育てるため、一時的な業績悪化を我慢した時代。同じ事を何度も言わなくてもすむように、仕組みづくりに注力した時代。
 

節目節目で自身を振り返り、社員との関わり方を変えながらここまでやってきました。そして、若手幹部は順調に育ちつつあります。一方、古参幹部の中には凝り固まったスタンスを変えられず、組織の弊害になってしまう方もいるそうです。
 

創業時から長く付き合っている社員にも関わらず、社長の思いが十分に伝わっていない。そんな悩みをお持ちのようでした。
 

完璧主義を武器に、活かすことのできる社長もいます。逆に、完璧主義を毒に、組織を殺す社長もいます。Y社長は前者ですが、それでも悩みが尽きないものです。
 

今週は、この「社長の完璧主義を武器にするコツ」を考えていきます。
 
 

 
■1.そもそも完璧主義とは
 

辞書を見ると、次のような解説が載っています。
 

(1)完璧とは、一つも欠点がなく、完全なこと。完全無欠なこと。
 (2)主義とは、継続的にもっている思想上の立場。常にもっている意見・主張のこと。
 

つまり、完璧主義とは、完全無欠な状態を、継続的に目指そうとする姿勢のことだといえます。
 
 


■2.完全無欠な状態とは
 

では、完全無欠な状態とは、どのような状態でしょうか?
 

ここで根本的な問題がでてきます。完全、不完全という判断をするには、何らかの判断基準が必要であるということです。
 

そして、その基準は固定されたものではありません。人によって異なりますし、同じ人でも状態によって変化するものです。(固定されていると信じたいものですが…)
 

さらに、より崇高な基準を求めれば求めるほど、どこまでも探求できてしまうものです。
 

つまり、完璧を求める姿勢とは、禅問答のように、あくまで探求していく方向性であって、明確なゴールがあるものではありません。(もしあったとしたら、別の世界・別の次元にいるのかもしれません)
 
 

■3.社長の完璧主義が、組織をダメにする? ← そんなわけがない!
 

残念なことに「社長の完璧主義が、組織をダメにする!」と唱えるコンサルタントがいます。
 

どのような主張なのか。実際に耳を傾けてみると、「細部にこだわりすぎて前に進まないから。行動が遅れるから。市場投入が遅れチャンスを逃すから。手段が目的化してしまうから。…」など、表面的なものばかりです。
 

表面的にしかものごとを捉えられない社長。つまり視野が狭く、柔軟性の低い社長であれば、間違いなく組織をダメにします。
 

しかし、広い視野と柔軟性があれば全く異なります。事実、社長のこだわり、完璧主義が原動力となり、事業を生み出し、成長させてきたのではないでしょうか。ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井氏をはじめ、成長している企業の経営者は、強いこだわりをもち、完璧主義者であるケースがほとんどです。この事実を直視しましょう。
 
 


■4.社長が完璧主義を武器にするコツ

 

それでは、社長が完璧主義を武器にするにはどうしたらよいのでしょうか。
 

上記1.2.を思い出してみましょう。完全無欠な状態は、あくまで方向性。完璧主義は、それを継続的に目指す姿勢です。
 

この点を認識すれば、次の2つのコツが見えてきます。
 

・経営理念やビジョンは、我が社が目指す方向性。社長の完璧主義の方向性と一致させる
 ・我が社が目指す方向は、前提として今達成できていないこと。実現していない現状を許容し、日々近づく工夫を推奨する
 

別の表現をするならば、社長の完璧主義が、組織を導く指針になっていればOK。首を絞めていればNGということです。
 

そして、留意点としてマネジメントをする際に、社員を反省させるのではなく、次につながるフィードバックを与えることです。社員が、前回よりのびた部分を肯定し、足りない部分は工夫する余地として認識できれば良いでしょう。自己否定感を蓄積する不健全な完璧主義ではなく、自己肯定感を育む健全な完璧主義がオススメです。
 

とはいっても、社長が社員に自身の求める完璧を要求し、社員を硬直させてしまう場合があるかもしれません。
 

厳しく要求しすぎたあとには、「なんちゃって。言い過ぎたゴメン」といって、和らげてあげましょう。そして、今すぐ完璧な状態になるのは難しいから一歩でも近づけるよう「“○○ごっご”でいいからやってみて」と伝えてみると良いでしょう。
 

<完璧を要求し、社員の動きを止めるのか 完璧の方向に、ごっこを推奨するのか>
 
 


■5.それでも上手くいかない場合

 

冒頭のY社長。じっくりとお話を伺うと、自身のこだわりを実現するために、節目節目で社員との関わり方を変えてきたことが良くわかりました。そして、完璧主義のコツを経験則から学び、実施してきたそうです。とても柔軟な素晴らしい経営者様です。
 

しかし、それでも「古参幹部がなかなか変わらない」という悩みを抱えていました。
 

少し話を飛躍させて言えば、経営者自身が抱えている課題は、姿かたちを変え、家族の課題として表れたり、自社の課題として表れたりします。
 

どれだけ時間と労力をかけても、表出した課題が解決できない場合。このときは、往々にして経営者自身の課題に蓋をしているものです。ただ、ご本人は、全く気がついていません。自分の完璧主義に隠れた<何らかの影>に気づいてあげましょう。
 

それでも上手くいかない場合に社長がやるべきこと。
 

それは、「過去と他人は変えられない。未来と自分は変えられる。」という言葉のように、自身の未来の関わり方をさらに変える余地があります。
 

つまり、ご自身にもっと向き合うタイミングがきたということです。使い古された言葉ですが、ここに次につながるヒントがあります。完璧主義は禅問答のようなものですね。
 

<完璧主義 活かすも殺すも 社長次第>
 
 

 

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