ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第37話成長する会社が、採用よりも優先していること

どれだけ採用を優先しても 大切なことが後回しでは ザルで水を汲むようなもの
第37話:「成長する会社が、採用よりも優先していること」(どれだけ採用を優先しても 大切なことが後回しでは ザルで水を汲むようなもの)

 

「とにかく忙しくて人が足りません。採用ができず苦戦しています…。」
 

製造業を営むK社長。受注は安定しているものの、それをこなす人員が足りません。
 

そこで、この会社では、新卒・中途の両面で採用活動を強化しています。しかし、その実態は、応募そのものが少なく思うように進んでいません。さらに、期待していた社員が退職の決意を伝えてきました。入社3年目の中途社員。ようやく現場リーダーを任せられると思った矢先に起きた出来事です。K社長は、とても頭を痛めていました。
  
 

 
■1.採用は、企業経営でもっとも重要なのか?
 

ベテラン社員の技術や人脈を、次の世代に継承しなければならない。製品ライフサイクル(PLC)※1と同様に、人材のライフサイクルも考慮しなければならない。このように考える経営者は多いものです。
 

※1:製品ライフサイクル(PLC)とは、製品が誕生してから市場から消えるまでの段階を導入期・成長期・成熟期・衰退期と4つに区分し、売上の推移を図解したもの(縦軸:売上、横軸:時間)
 

これまで、採用の重要性を感じながらも後回しにしてしまった。気がつけば緊急性も高まっていた。日本の人口ピラミッドが、富士山型→つりがね型→つぼ型と変わる中、我が社の人口ピラミッドは、すでにコマ回しのコマやキノコのようになってしまっている。そんな会社も多いものです。
 

企業を経営するにあたり、開発をするのも、製造をするのも、販売をするのも、管理をするのも、人がいなければ仕事は進みません。だから<採用は、企業経営でもっとも重要である>と当然のように考えることでしょう。
 

すると、多くの会社は、<How:どうやって採用を成功させるのか>、<What:何をすればよいのか>という手法に走ります。
 

若い人材、できるだけタフで優秀な人材を確保したい。そこで、採用サイトを整備したり、学校へ訪問しパイプを強くしたり、合同説明会でトップ自ら思いを伝えたり、さまざまな手法を取り入れています。もちろん自社だけでは実施が難しく、採用コンサルティングなどの支援を受け、試行錯誤を続けています。果たしてこれで良いのでしょうか?
 
 

■2.人材の確保が、企業経営でもっとも重要である
 

採用活動は、とても重要です。しかし、どれだけ新たな人材を採用しても、人材が確保できるとは限りません。なぜなら採用はあくまで一部だからです。大切なのは、採用よりも人材の確保。計算式で見てみると一目瞭然です。
 

【社員数】=【既存社員数】+【新入社員(新卒・中途)数】-【退職・休職社員数】
 

人材を量だけで見れば(単純に一人1馬力と換算すると)、【退職・休職社員数】を減らすことが必要です。また、人材を質の側面も考慮すると(一人で何馬力も発揮できると想定すると)、【既存社員数】を含む全社員の発揮能力を高めることが必要です。
 

【社員数】×【発揮能力】=【我が社の馬力】
 

つまり、採用だけでは問題が解決しません。どれだけ採用を強化しても、どれだけ採用を優先しても、大切なことが後回しでは、ザルで水を汲むようなものだからです。
 

採用よりも広い視野を持ちましょう。つまり、人材の確保がもっとも重要だということです。
 

ただし、採用=人材の確保ではありません。多くの経営者は、既に気がついていることでしょう。しかし、重要性よりも緊急性を優先しています。根本的に問題を解決することよりも、欠員補充に追われます。結果として、手っ取り早く採用を優先してしまっている。これが実態だと思います。
 
 

  
■3.人材を確保し発揮能力を高めるために、もっとも大切なこと
 

それでは、人材を確保し発揮能力を高めるために、もっとも大切なこととは、いったい何でしょうか。
 

【理論】と【感情】という二つの側面で考えて見ましょう。
 

【理論】で考えると、教科書的な内容になります。<経営理念やビジョン>⇔<経営戦略>⇔<人事ポリシー>⇔<人事トータルシステム(採用/配置、評価、報酬、能力開発)>を連動させること。そして、それを社員に理解・納得させ、浸透することが大切です。
 

ところが、頭ではわかっていても、負荷がかかりすぎます。だから、なかなか着手できません。もしくは、着手しても、途中で頓挫してしまった。これが実態ではないでしょうか。
 

一方で【感情】で考えると、とても本質的でシンプルです。お互いの感情を理解し、共通目的を理解すること。そして、それを達成するために協力し合える関係をつくることが大切です。
 

このポイントは、言うまでもなく信頼関係です。相互信頼、相互協力ができる場が、自社にあること。そうすれば、退職が減るだけでなく、発揮能力も高まります。既存の人材が活き活きと輝くため、採用もし易くなります。ただし、これを実現することも、簡単ではありません。
 

人材に悩む企業の多くは、社長が社員を注意しても、社員が言うことを聞かないものです。上司が部下を注しても同様です。これは、社員(部下)が自分のことを社長(上司)に理解されていないと感じ、反発しているからです。
 

そして、社員(部下)は閉じた貝のようになり、その場に居座ります。やがて、社長(上司)は我慢の限界を超え一方的に叱ってしまうものです。ますます本音が聞こえなくなります。このような状況であれば、入社希望だった新人も、違和感を感じ内定を辞退してしまいます。もし、入社したとしても定着せず、3年以内に退職してしまうでしょう。
 

問題は、社長は社員の理解不足、社員は社長の理解不足です。お互いに良かれと思っているにも関わらず相互の理解不足が誤解を生み、風通しを悪くしています。
 
 

 

■4.社長が最優先で実施すべきこと
 

つまり、大切な社員を 後回しにして 採用を優先しても ザルで水を汲むようなものです。社長が、社員の気持ちを汲み取るからこそ、社員は社長の気持ちを汲み取ろうとします。
 

社員の気持ちがわからないまま採用を優先するのか、社員の理解を優先し社員とともに成果につなげるのか。
 

社長が最優先で実施すべきことは、既存社員を理解することです。
 

会議や社員との飲み会などで、説教をするのではなく、社員の声に耳を傾ける。社長と社員、上司と部下が本音で話せるように、定期的に意思疎通が進む場・仕組みをつくることが必要です。
 

仕事であっても、人と人が関わる営みです。プライベートと同様に、深いところでは人のつながりがほしいものです。ところが、最近では、個人情報保護を気にしてプライベートに踏み込めない社長や上司が増えています。関わりから逃げず向き合うこと。プライベートで課題を抱えていれば、仕事が上手くいくはずがありません。可能な範囲で踏み込んだ方が良いでしょう。
 

相互理解や信頼関係が進んでいるか否か。社長が確認するチャンスは、社員が退職を考えたときに表れます。上手くいっているときは、社内に退職の相談できる人がいるとき。不足しているときは、社内になく社外にしか相談できる人がいないときです。
  

つまり、社長の耳に、退職の話が届くとき、社員本人もしくはその上司や同僚から<退職の相談>を聞くのが先か、<退職の決断>を先に聞いて後から「なぜ退職したいの?」と理由を聞くのかの違いです。冒頭のK社長のケースでは、残念ながら後者でした。
 

社長の立場をもったまま、社員の気持ちを理解することは簡単ではありません。社員も同様です。社員の立場をもったまま、社長の気持ちを理解することは簡単ではありません。
 

相手の立場を理解するには、客観的な立場になる何らかのきっかけが必要です。そこで、双方の立場を脇において考える、共通の目的があると良いでしょう。
 

コツは、How(どうやるか)やWhat(なにをやるのか)の前に、Why(なぜやるのか)で共感すること。そして、時間軸を長く持つことです。共通の成果を出すために、何らかの仕組みをつくり、協力し合える関係を育てましょう。御社は採用を優先する前に、何をきっかけに相互理解や信頼関係の構築を進めますか。
 

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