第30話提案型営業を推奨する会社は、御用聞き営業もできない
「御用聞き営業はいらない。提案型営業にシフトせよ!」
少し勉強をしている経営者にとっては、使い古されたフレーズです。そして、付加価値経営を目指す経営者は、当然の如く『モノではなくコトを売ること』に注力しています。提案型営業をさらに進化させソリューション営業をせよ! という方もいます。
また、それを推奨するコンサルタントやマーケッターも多いものです。意識の高いビジネスパーソンは、この考え方に賛同しています。有識者が言うことだから、いかにも正しい考え方のように思えます。
確かにコンセプトは立派です。しかし、実際の営業現場をみると理想とは程遠いものです。一部のトップ営業を除き、ほとんどの営業パーソンが、提案型営業・ソリューション営業とは程遠い状況になっています。いったいなぜでしょうか。
この答えはとてもシンプルです。
経営者が、どれだけ 「提案型営業にシフトせよ!」 「価値を上げよう!」 「新しい価値を生み出そう!」 と号令をかけても、『どのようにシフトするのか』 具体策を示していないからです。そして 『どのように』 が営業部隊に伝わっていないため、営業パーソンは提案する標的を見誤るからです。
この結果、自社都合で設定した価値を伝えるため、画一的にセールストークを型決めします。さらに熱心な会社は、商談ロールプレイングを実施します。そして、標的が曖昧なまま、画一的に全社の営業活動に展開してしまいます。異なる標的にどれだけ提案しても、顧客はそれほど満足しません。すると、「行動量が足りないから結果が出ないのでは?」 と安直に考えます。本質を外したまま、「もっと行動せよ!」 と大号令に拍車がかかり、活動を強化させます。いずれにせよ、自社の自己満足に終わってしまいます。
既存得意先に提案しても 「今までの商品・サービスと何が違うんですか?」 といわれたり、新規狙い先に提案しても 「他社との違いは? もっと安くできませんか?」 といわれたり、単なる価格競争に巻き込まれてしまうのは、このためです。
どれだけ号令をかけても、標的の選定を誤れば、まったくの無駄骨です。
営業組織・営業パーソンの成長レベルにあわせた標的を選定しなければなりません。
基礎が不十分な組織や社員に、どれだけ応用練習や実践をさせても、効果は限定的か逆効果になるからです。
闇雲に号令をかけ続けることには、デメリットがあります。症状を悪化させないように注意が必要です。大号令のもと、提案型営業モドキに注力すると、既存得意先向けの御用聞きレベルが低下します。経営陣も営業パーソンも、この問題に気がつきません。御用聞き営業を軽視しているからです。そのまま月日が流れます。やがて、他のエリアで御用聞き営業に注力してきた会社が、自社の商圏に参入してきます。こうなると状況が一辺します。あっという間に商圏を取られてしまいます。これまで固定費をカバーしていた大切な業績基盤を失います。既存の売上がどれだけ自社の経営に貢献していたのか。利益率がそれほど高くなかったとしても、失ってみて大切さを痛感することになるでしょう。打ち手が遅くなると、かなり厳しい状況に追い込まれます。
提案型営業を推奨する会社は、御用聞き営業もできない。
多くの企業がおちいるワナです。我が社もこの症状におちいっていないか、ぜひチェックしてみることをオススメします。
それでは、どのように提案型営業にシフトしていくのか。
このヒントは、営業活動の4分類にあります。
まずは、御用聞き営業の価値を正しく認識し、利用することです。御用聞き営業の本質は、【①顧客奉仕型】です。サザエさんに出てくる三河屋のサブちゃんを思い出してください。サザエさんには、明確なニーズがあります。サブちゃんは、それをしっかりと聞き取ります。ニーズを直接教えてもらう分、ニーズに一致する商品・サービスを提供できれば、間違いがありません。ただし、付加価値はそれほど取れないでしょう。
次に、【②行動重視型】の営業にシフトさせます。自社が顧客のニーズ既に知っていれば、話は早いものです。とにかく行動量を増やし、ジャストインタイムで、受注・納品することに専念しましょう。サブちゃんが、仕入れ状況とサザエさんの好みに応じて「今日はスイカがお値打ちですよ!」と伝えるようなものです。これを続けることで、顧客から信頼を得ることができます。
その後、【③企画提案型】の営業にシフトさせます。ポイントは、顧客がまだ把握していないニーズを見える化し、提案することです。ここに価値があります。他にも【④ワークショップ型】の営業もあります。それぞれのフェーズで留意点があります。
経営者がこの4分類を認識せずに、提案型営業が重要だと号令をかけることは、自殺行為です。それぞれの留意点を押さえなければ逆効果になってしまいます。
運任せで提案型営業を推奨した場合、本来の提案型営業ができる営業パーソンは、わずか5%程度。コンサルティング開始時の状況から鑑みた小島の経験則です。
20人に1人の割合で出てくる希少なトップ営業に自社の経営を依存するのか、営業活動の4分類を正しく認識し、仕組みで営業組織全体を提案型営業にシフトさせていくのか。どちらが効果的な活動になるのか。どちらが自社の将来に貢献するのか。いうまでもありません。御社は、どのような営業活動を推進していきますか?
※当社は、営業組織・営業パーソンの成長レベルに合わせた支援ができます。「社長も社員も心から安心できる状態をつくる【3年分 受注残をつくる経営(業績3年 先行管理の仕組み)】」では、営業活動の4分類を押さえた活動を推進する仕組みを導入・定着させます。興味がある方は、ぜひ弊社セミナーご参加ください。