ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第88話なぜ、モチベーション対策が害悪になるのか

モチベーションは、イルミネーション。異なる視点で、イノベーション。
第88話:「なぜ、モチベーション対策が害悪になるのか」(モチベーションは、イルミネーション。異なる視点で、イノベーション。)

 

「小島先生。今の我が社には、停滞した雰囲気が漂っています。社員に、もっとやる気を出してもらうために、どの施策が効果的でしょうか?」
 

セミナーに参加されたM社長からのご相談です。
 

M社長の手元には、モチベーション施策がズラッと並んだメモがありました。事例研究の勉強会やビジネス書から集めたリストで、勉強熱心なM社長なりの見解が書き込まれていました。
 

「そうですね。今の状態では、どれも害悪です。何もやらないほうが良いですよ」
 

あえてストレートにお伝えしました。なぜなら、<社員のモチベーションを上げて何とかしよう>と思う社長の発想こそが、問題だからです。
 

“企業は人なり”という格言があります。ところが、自分はこの人のやる気を十分に引き出せていない…。こう悩む社長は多いものです。特に、2代目・3代目といった後継経営者に共通する悩みです。
 

なぜなら、先代の豪腕経営による弊害を、これまで何度も見て来たからです。自分が引き継いだら社員に同じ思いをさせたくない。そう思ってきたからです。M社長もそのお一人でした。
 

しかし、実は先代も同じような悩みを抱えていた時期があったのです。長いか短いか、期間はそれぞれです。ただ、人のやる気・モチベーションに注目していた時期があったのですが、優先度に気がついたのです。
 

過去に、社員のやる気に注力するほど、業績が上がらなかったり、上がったとしても一時的で続かなかったり、安定成長どころか害悪になった苦い思い出があったのです。だから、優先度を変えていただけなのです。
 

なぜ、業績の安定成長が実現しなかったのでしょうか。この答えは簡単です。モチベーションは、水物(ミズモノ)。上げても、結局下がるものだからです。
 

例えるなら、ライトアップされたイルミネーションのようなものです。夏でしたら花火大会のようなものです。
 

< モチベーションは、イルミネーション >
 

運営サイドが、どれだけ費用と時間をかけて準備をしても、参加者は「わぁキレイだね」とその場で感動して終わりです。心が満たされても一時的。長続きはしません。所詮、季節モノのイベントなのです。運営サイドが頑張って継続したとしても、毎日見ていれば、人は慣れてしまいます。いつもの景色になるのです。
 

毎年、イルミネーションをアレンジし、イベントを発展させても、大規模になっても、結局は同じです。意思を保つ源泉にはならないという問題を孕(はら)んでいます。
 

つまり、モチベーションはイルミネーションなのです。根本解決にはつながりません。だから、停滞した社風を打破するには、異なる視点で関わる必要があります。
 

人のやる気を引き出すためには、いったい何が必要なのか。この異なる視点とは、それは人のやる気に直接注目しないこと、やる気に直接関わらないことです。極論を言えば、やる気を相手にしないことです。
 

人のやる気・モチベーションがあろうがなかろうが、社員は一定の成果をださなければなりません。社長は、社員がやるべきことに集中するための仕事のすすめ方、仕組み、構造をつくる必要があるのです。
 

そもそも、会社経営は、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を投入し、社会に価値のある自社ならではのモノ・サービスを提供しなければなりません。それが、その会社の存在意義だからです。
 

この時、価値を提供する機会があっても社員そのものや、社員が動かすモノ・カネ・情報が不足していれば機会ロスを生み出します。一方で、資源が過剰にあったとしてもムダに遊ばせることになります。ロスが生じ、利益を残せません。
 

ですから、社員のやる気・モチベーションに左右されない仕組み、安定的に成果を出す平準化の仕組みが必要なのです。
 

冷静に考えれば当たり前のことです。ところが、組織が停滞したり、業績が低迷したりしたら、社員のやる気に頼ってしまうものです。何か手っ取り早く効く秘策があればと思ってしまうのです。この発想が、社長の甘えです。不注意、手落ちと表現しても良いでしょう。
 

一方で、社員もこれに甘えています。自身の役割を果たすことに専念せず、気分でやったりやらなかったりしているからです。
 

つまり、仕組みがないと言う構造的な欠陥が原因で、社長と社員の間で起きている甘えの支えあい=共依存を許してしまっているのです。人の問題は、人が原因ではありません。仕組みが原因です。
 

これが、成長の壁を打破できない会社の共通点です。「かつては上手くいっていたのに、ここ数年はなぜ上手くいかないのか」こう悩む社長は、社員のやる気に頼っていないか、ぜひ自社の経営を見つめ直してください。
 

結論。いかなるモチベーション対策も、仕組みづくりを怠っていれば害悪になります。順番が違うのです。社長は、何よりも先に<仕事の安定成長を平準化させる仕組みづくり>から着手しなければなりません。後回しにしている場合ではないのです。
 

ですからモチベーションでは、イノベーションは起こせません。仕組みで組織の構造変えることで、初めてイノベーションが起こせるのです。
 

< モチベーションは、イルミネーション。異なる視点でイノベーション。 >
 

当然ですが、社長の仕事も社員の仕事と同じです。社長が「今日はやる気がしない。モチベーションが上がらないから…」なんて言っていたら、自社の重要案件が進むわけがありません。社長の気分で会社の業績を左右させている場合ではないのです。
 

これまでの経験を思い出してください。“やる気が出てから着手しよう” この考えでは、1時間経っても何も変わりません。逆に“5分だけでも着手しよう”と思って始めると、不思議と区切りがつくまでやりたくなるものです。
 

役割に専念するから、実際に行動するから、後からその気になるものです。ですから、社長は、自社のモチベーション施策を考える前に、仕組みで適切な行動を増やすことを優先させてください。
 

この行動が、前もって先手で策を打つようなものであれば、なお良いでしょう。この事例を紹介したらM社長も「確かに…」と納得されたご様子でした。
 

同族会社の社長として、お客様や社員の将来を考えるのであれば、つまり人を大切にしたいのであれば、人のやる気に直接注力しないこと。これが経営の原則です。ぜひ、御社ならではの成果が出る仕組みづくりに着手してください。私どもはこの仕組みづくりに挑戦する社長を応援しております。
 

 
 ※追伸:当社は、
「社長も社員も心から安心できる状態をつくる 【3年分 受注残をつくる経営】(業績3年 先行管理のすすめ方)」を公開しております。本コラムでお伝えした適切な行動を促す仕組みです。弊社セミナーだけでお伝えする具体事例やその留意点も、多数紹介します。興味のある社長様は、ぜひご参加ください。 

 

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