ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第87話“らしさ” を つぶす社長 と 活かす社長 の違い

多様性(ダイバーシティ) 個性を活かせと 言うけれど 社員はどんどん没個性
第87話:「“らしさ” を つぶす社長 と 活かす社長 の違い」(多様性(ダイバーシティ) 個性を活かせと 言うけれど 社員はどんどん没個性)

 

「多様性を活かした経営。社員の個性を活かすには…」
 

多様性(ダイバーシティ)を考える時代。個性が重要。ここ数年、人事系のフォーラムや雑誌で頻繁に耳にする言葉です。いわゆるダイバーシティマネジメントというものです。組織を構成する人材がもつ個性(違い)を受け入れて、組織の生産性を高めようという発想です。
 

一見すると、「変化の時代に相応しい、柔軟で有意義な方法だ」と解釈されています。しかし、中小の同族企業が安易に手を出すものではありません。
 

なぜなら、個性を活かそうとすると、組織が崩壊するからです。ほとんどの企業が失敗しています。
 

いったいどういうことでしょうか? なぜ失敗するのでしょうか?
 

それは、社員の個性を活かすことが、個人の考え方(価値観)を安易に認める活動になるからです。だから失敗するのです。
 

< 社長の考えに沿って、社員に自ら考えて行動してほしい。だけど、勝手なことはしてほしくない >
 

社長の本音です。しかし、勝手なことは…という懸念点が現実化してしまうのです。
 

会社は、社員の個性を尊重し、受け入れようとします。すると、社員は、それぞれ別の要求をしはじめます。考え方(価値観)が異なるため、求める環境も個別に違うからです。それを許容し続けると、徐々に組織の秩序が失われます。やがて、従来こなせていた仕事さえ回らなく…。といったパターンにおちいるのです。
 

つまり、安易な多様性重視は、個人の考えを多方面に認めることになり、組織も業績も崩壊させるのです。
 

本来、多様性を活かすためには、その前提づくりが必要です。つまり、<社員一人ひとりが、社長方針に沿って、その能力を発揮できるだけの体制と環境を、徹底的に整備すること>が必要です。しかし、ほとんどの会社が、この点をやりきれません。
 

なぜなら、中小の同族企業では、この環境が整うまで、継続的に資源を投入できないからです。
 

限られた資源をどこに投入するのか、ものごとには優先順位があり、その優先度が変わります。環境整備に力を入れたとしても、一時的になってしまうのです。だから、言葉だけの活動になってしまいます。
 

自社の状況を振り返ってください。新しいタイプの人材を意図的に採用しても、すぐに辞めたり、思ったように機能しなかったり…。何らかのプロジェクトをスタートしても、反対派や様子見をする社員達が重石になり、活動が立ち消えてしまったり…。そんな悩みはありませんか? 中小企業には、多様性を活かす土壌が育っていない。これが共通した問題です。
 

一方、大手企業では、活動をPRしたい人事部門と、業績を上げたい研修会社の利害が一致して多様性を掲げているだけです。冷静になって分析すれば、商売のシステムに載せられて、女性活用・少子化対策・多国籍化・グローバル化というキーワードに振り回されている会社がほとんどです。
 

もちろん、多様性を活かしている会社もゼロではありません。稀に存在します。しかし、ほとんどの会社が失敗してしまいます。何も変わりません。「多様性だ!」「個性を尊重する!」と言いながら横並びになるのです。社会の空気を読み、周りの空気を読み、必要以上に空気にあわせる。そんな社員が増えるだけです。
 

多様性を活かそうとしても、逆に没個性になってしまうのです。中国語の “没個性” を日本語に訳すと “人格なし” という意味になるそうです。多様性、個性を重視しようといった考えが、人格否定にたどり着いてしまうなんてとても残念なことです。
 

< 多様性(ダイバーシティ) 個性を活かせと 言うけれど 社員はどんどん没個性 >
 
 
 

対極的な発想で、多様性なんてナンセンスだ。「勝手なことをしないようにゴリゴリ管理しよう」という考えもあります。これにも、違和感を持つ方が多く無理があります。
 

「管理は嫌いだ。管理は“らしさ”を奪うから」
 

こう考える社長や社員達です。小島もかつてはそう思っていました。しかし、この発想も視野を広げてみると、勘違いだったと分かります。
 

管理を狭い意味でとらえているからです。管理は、社員を金太郎飴のように量産するもの。窮屈な型にはめて、従わせるもの。という前時代的な発想で考えているからです。
 

少品種多量生産の工場で、工夫もせず、規格品を繰り返し作りるのであれば、個性なんていりません。しかし、工場の現場でも改善活動が必要です。そうであれば、現状に疑問を感じる個性が必要になります。
 

ましてや、新しい事業を立ち上げるとき、新サービスを生み出し顧客を開拓するときは、個性が必要です。柔軟な発想で試行錯誤をするためには、新たな視点をヒントになるからです。つまり、改革をするのであれば、間違いなく社員一人の個性が必要なのです。
 

だから、<管理は個性をつぶすものではなく、個性を活かすものだ>ととらえてください。管理と自主性・主体性は、トレードオフの関係にあるのではなく、相乗効果を起こす関係にあるからです。
 

管理は窮屈だけど必要なものでもありません。ペースメーカーです。個性を活かしながらも、組織の秩序を保つペースメーカーなのです。組織で動く以上、秩序が必要です。社長の考えに沿った活動となるような秩序です。
 

だからこそ、何らかのルール、型を設け、管理することが必要です。
 

東京オリンピックの代表選考が、各スポーツで実施されています。それぞれのスポーツもルールがあるから、秩序が保たれています。選手は、ルールの中で創意工夫をして、個性を発揮しています。
 

他にも、モータースポーツのF1の話です。先月(2019年07月)ホンダエンジンを搭載したマシンが、13年ぶりに優勝しました(オーストリアグランプリ)。ルールはもちろん、各チームの台所事情など、制約条件があるからこそ、メンバーの創造性が発揮されたのではないでしょうか。
 

つまり、窮屈な管理ではなく、創造的な管理が必要なのです。
 

目的とゴールを共通認識し、それに至るプロセスを工夫しあう管理です。相互協力を基本ルールとして、チームで対策を考え実行する管理です。
 

理想は、社員からみれば<個性を大切にしてもらっている>と感じること。社長からすれば<ルールに沿って仕事が回っている>と感じることです。
 

このとき、一番大切なのは、会社の秩序を保つ創造的な管理、そのルールそのものが<社長であるあなたらしいもの>であることです。
 

自社のルールを、既存の市場や既存の業界、競合他社がつくった常識に合わせてしまうと、我が社らしさを失います。それこそ我が社が没個性になってしまい、価格競争に飲み込まれるだけです。他社の真似事では、差別化は図れません。
 

社長である<あなたらしさ><我が社らしさ>を踏まえたルール・仕組みづくりは、どれくらいすすんでいますか? もし十分に構築できていなければ、今すぐ着手しましょう。緊急ではないかもしれません。しかし、これはとても重要なことです。
 

同族会社の社長として、多様性を活かした経営を実現するために、我が社ならではの創造的な管理をしてください。私どもは挑戦する社長を応援しております。


 
 ※追伸:当社は、多様性を活かした経営を実現するために、
「社長も社員も心から安心できる状態をつくる 【3年分 受注残をつくる経営】(業績3年 先行管理のすすめ方)」を公開しております。本コラムでお伝えした創造的な管理の仕組みです。弊社セミナーだけでお伝えする具体事例やその留意点も、多数紹介します。興味のある社長様は、ぜひご参加ください。 

 

 ↓ ぜひ「いいね!」をお願いします。皆さんのお役に立てるよう次回も頑張ります