ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第47話わかっちゃいるけど難しい。後継者が決断するコツ

無難に維持しても、無謀に決断しても、背負うリスクは減らせない
第47話:「わかっちゃいるけど難しい。後継者が決断するコツ」(無難に維持しても、無謀に決断しても、背負うリスクは減らせない)

 

 

「できる経営者は決断が早いものですね。先日も…」
 

成長する会社と縮小する会社の違いは何なのか。先日、ある士業の方とお話をするなかで出てきた話題です。
 

ソフトバンクグループ創設者の孫正義氏は、10秒以内に決断すると言われています。
 

新サービスの提供や買収判断など、無謀とも思われるような意思決定にも関わらずスピーディーに判断し、実行に移してきました。カリスマなのか、変人なのか、論理と感情で人を巻き込み成果につなげてきました。この結果、時価総額は約9.4兆円(2018年10月30日時点)企業にまで成長させました。
 

アイリスオーヤマ会長の大山健太郎氏も、ユーザー視点から迅速に意思決定をしています。この結果、下請けの町工場だった同社を、プラスチック生活用品では圧倒的な国内シェアをもつ企業に成長させました。
 

また、地方の中小企業であったとしても、時代の変化と共に成長を続ける企業の経営者様は、総じて決断が早いものです。この決断ですが、一般的に意思決定をするためには、テーマに関連する情報を集めることと、基準となる判断軸をもつことが必要です。
 

そこで、理屈で考えれば、決断のために全ての情報を集めたくなるものです。しかし、決断の精度が多少高まったとしても、情報をあつめ精査するプロセスに時間がかかり過ぎてしまいます。
 

そのため、利害関係者の理解を得やすいものの、タイミングを逃し、ビジネスチャンスを他社にとられてしまうでしょう。もし、自社の社長がこのスタンスでいたとしたら 「我が社のトップは、いつまで悩んでいるの?」 と社員に呆れられてしまいます。
 

一方で経営者の経験則で考えれば、限られた情報と感覚を頼りにスピーディに決断したほうがシンプルです。しかし、重要な情報を見落としている場合は、根本的に誤った決断をしてしまうリスクが残ります。また、社長の決断が、社員から見ると単なるギャンブルに見えてしまうこともあります。
 

もし、実績がある社長がこのスタンスであれば社員は社長を信じて従うだけです。しかし、もし新米の社長であれば社員は 「我が社のトップは、本当に大丈夫かな?」 と不安になるでしょう。
 

どちらもメリット・デメリットがあります。ただ、事業経営は一発勝負ではありません。次から次へ、勝負が永遠と続くものです。また、現在の経営環境を考慮すると、全ての情報をタイムリーに集めることは困難です。変化が早く、情報がすぐに陳腐化してしまうからです。
 

だから後者を選択せざるを得ない。他社より先に手を打ち、その結果をもとにすばやく軌道修正したほうが、現実的で確実。こう考えるのが現状ではないでしょうか。
 

特に、数々の困難を乗り越えてきた創業経営者様や事業転換を成功させた経営者様は、この傾向が顕著です。限られた情報の中で、独自の判断軸を持っており、スピーディに意思決定をしています。まさに、即断、即決、即行動で、経営の舵を切っています。
 

しかし、事業承継をしたオーナー企業の多くは、このリズムが狂い始めます。豊富な経験を積んだ先代経営者と、新米の後継者を比較しているので、致し方ないものです。ここで注意してください。
 

経営を引き継いだ後継者の実力は、いかがなものか。先代は、期待と不安が半々で後継者を見ています。社員は不安な気持ちで後継者の振る舞いを観察します。そして、先代や社員からの視線を感じた後継者は、 「絶対に失敗したくない」 と保身に走ります。根底にある高いプライドが邪魔をするからです。これが実態です。
 

また、後継者が使える武器として、予めビジネススクールで学んだ経営理論や、ビジネス書などで知識が上げられます。するとさらに理屈優先で考えようとしてしまいます。不安が優先し覚悟が決まらない後継者は、トップダウンから民主経営へシフトしようとするケースも多いものです。
 

だから、どうしても決断が遅れてしまいます。その結果、無難に現状維持を続けることになります。これが大きな問題です。
 

無難に現状を維持しても、背負うリスクは減らせません。

環境変化を考慮すると、現状維持は衰退になるからです。
 
 

一方で、別のタイプの後継者もいます。道を究める基本ステップである「守・破・離(しゅはり)」の「守」を飛ばしてしまうタイプです。
 

本来であれば、先代が何を考え、どのように判断し、実行していたのか。社長就任後の1~3年ほどしっかり学ぶ期間を設けると良いのですが、先代は反面教師だといわんばかりにどんどんやり方を変えていく後継者です。中にはこれで上手くいくケースもありますが、多くの場合は無謀な挑戦になってしまいます。
 

無謀に変化を決断しても、背負うリスクは減らせません。

型を身につける前に型を破ることは、単なる形無しになってしまうからです。
 

先代のように皮膚感覚を育んできた体験・経験がないにも関わらず、永遠と続く勝負で、ギャンブルを続けていたら…。無謀な挑戦で負けることは明白です。よほど体力やセンスがある会社や後継者でなければ、失敗してしまうでしょう。
 

無難に維持しても、

無謀に決断しても、

背負うリスクは減らせない
 
 

「適切に決断する重要性はわかります。でも、わかっちゃいるけど難しいんです」
 

こういう後継者は多いものです。
 

それでは後継者が適切に決断するためには、どうしたらよいのでしょうか。
 

冒頭の孫氏は、スピーディに決断するためには、

1.全体像を掴めるまで情報を集めること

2.権限を持った人を招集すること

の2つが大切だといっています。ここにヒントがあります。
 

創業経営者や事業転換を成功させた経営者であれば、この押さえどころを把握しており、上記2つの条件を整えています。もしくは、独自のセンサーをもっています。当然の如く備えている資質ともいえます。しかし、後継者はこの押さえどころをまだ把握できていませんし、独自のセンサーをもっていません。
 

もし、先代経営者が「失敗してもよいから決断してみよう!」とリスクを承知で後継者に決断させ、失敗をすることができれば後継者の一番の学びになります。しかし、そこまでの資金力や時間的な余裕がない会社がほとんどです。遠回りするほどのゆとりはありませんし、場合によっては企業存続に関わる致命傷になるかもしれません。
 

そこで必要なのは、全体像を掴むために限られた情報をタイムリーに集める仕組みです。また、その情報や社長の決断を、権限を持った人たちが共通認識できる仕組みです。この仕組みは、使いこなしてはじめて意味をなすものです。後継者ともに自社にあわせて独自に育てていく必要があります。
 

もし、現状と現実的な将来の業績を、社長と社員が共有する仕組みがあれば、後継者がタイムリーに決断できるだけでなく、社員はそれに協力するようになります。ぜひ、大掛かりなシステムを入れるのでもなく、精神論や勘ピューターに頼ったものでもない、御社ならではのシンプルな仕組みを考えてみてください。
 
 

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