ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第46話少しの違いが大きな違い。伸びる会社の管理とは

厳格管理で あら探しをするのか 変革管理で 価値探しをするのか
第46話:「少しの違いが大きな違い。伸びる会社の管理とは」(厳格管理で あら探しをするのか 変革管理で 価値探しをするのか)

 

 

「どこまで耐えられるのか。もう限界ですよ…」
 

主要得意先からの原価削減要求。数年おきに削減基準が設定され、応対次第では取引停止をチラつかせる。O社長は、終わりの見えない要求にうんざりしていました。
 

「かつては、生かさず殺さずだったかも知れません。しかし、今では死んだら交換というぐらいに考えているんでしょうね」
 

資本関係はないものの、この下請け体質をどのように脱却するのか。頭では重要なテーマだと理解していました。ただ、これまで主要得意先の要求に応えることで精一杯。長年コスト削減を続けた結果、もう限界というところまで追い込まれてしまいました。
 

2000年頃。「かんばん方式」「ジャスト・イン・タイム」で有名なトヨタ自動車では、“濡れた雑巾をカチカチに絞ってからもうひと絞り、ふた絞りする”といわれていました。2010年頃には、これを模倣した大手企業も増え“乾いた雑巾を裂けるまで絞る”と揶揄されるケースも耳にするようになりました。O社長の会社も絞られ続けた1社です。ブチッブチッと繊維が切れて、悲鳴が聞こえてくるようです。
 

「この状態を脱却しなければ!」
 

O社長のように限界を感じ、脱下請けを掲げる中小企業は多いものです。ところが、その後の状況は大きく2極化しています。商売の主導権がどちらにあるのか、自ら主導権を握り業績を伸ばす企業もあれば、主導権を得意先に預けたままジリ貧になってしまう企業もあります。
 

この違いはいったいどこにあるのでしょうか?
 

この答えはとてもシンプルです。それは、<自ら主導権を握る>と決めて、前もって手を打ち続けたか、否かです。
 

客観的な立場から見れば、当然のことです。しかし、当事者の立場になると簡単ではありません。目の前に得意先の仕事があり、その要求に応えることで精一杯だからです。
 

新たな市場や顧客の開拓に取り組む企業も多いものです。ところが、なかなか思うように結果につながりません。何度も障害にぶつかると、迷いが生じます。やがて「こんなに苦労するよりも、主要得意先についていった方がラクだ」と勘違いをしてしまい、諦めてしまいます。もし、諦めてしまったら、O社長のようにもっと苦しくなってしまうにも関わらずです。
 

主要得意先に依存する限り、その会社は下請け体質になります。このタイプの会社では、管理の基本的スタンスが【厳格管理】となります。
 

主要得意先から生産計画が伝えられ、必要な部品を必要な量だけ必要なタイミングで納品しなければなりません。基準値とその許容範囲を設け、実績がそこから逸脱しないようにコントロールしなければなりません。度重なる仕様変更や原価削減要求も、取引停止をチラつかされるとO社長のように断れなくなります。
 

つまり、主要得意先から厳格管理であら探しをされるように、社内も厳格管理であら探しをするようになります。ムリ・ムラ・ムダを省くべく、徹底したコスト削減が繰り広げられます。
 

例えば、こまめに照明を消すことや会議資料の印刷を減らしたりすることは常識となります。そして、お昼休憩になると薄暗い部屋で黙々とスマートフォンを操作する社員たちが不気味に座っていたり、喫煙コーナーで得意先や会社の不満を口にする社員がたむろしていたりします。会議をしても画期的なアイデアも出ず、淡々とやり過ごすようになります。雰囲気はあまりよろしくありません。
 
 

【厳格管理】であら探しをしても、新たな価値は生まれない。
 
 

計算式でみればあまりにも当たり前のことです。
 
< 売上 - 費用 = 利益 >
優先度1:費用 → 改善を続けることである程度削減できたとしても、やがて限界がくる
優先度2:売上 → 原価低減要求で下がることが基本。数量が増えてトントンになれば御の字
 

売上を増やす努力をせず、費用を減らす努力のみ続けても、先はありません。特に銀行出身の管理部門長がいる会社は、社長の知らぬ間に費用一律カットという愚策を推進しがちなので注意してください。絶滅危惧種のように何とか生き延びていた、社内の変革の種を摘んでしまいます。
 

一方で<自ら主導権を握る>と決めた会社は何を管理しているのでしょうか。このタイプの会社では、管理の基本スタンスが【変革管理】となります。
 

先ほどの計算式の優先順位が異なります。
 
< 売上 - 費用 = 利益 >
優先度1:売上 → 誰にどのような価値を届けるかを設定しなおし、新たなチャンスを創りだす

優先度2:費用 → 必要な投資はする。その一方で、改善・コスト削減はメリハリをつけて実施する
 

売上をどのように増やすのか、そのために自社の強みを生かしどのように付加価値を提供していくのか。あるべき姿を描き、そこから逆算して実現するためのアイデアを考えなければなりません。このため、主要得意先に刷り込まれた業界の風習やしきたりといった思い込みを言語化し、新規市場や顧客を開拓するために変えるべきところと残すべきところを切り分けていきます。
 

つまり、自らの意思で新たな価値を生み出すために何を変えるべきか、変革管理で価値探しをするようになります。
 

最近のテレビドラマで言えば、下町ロケットゴーストです。佃製作所は、新規参入する宇宙ロケット品質のエンジンバルブの技術を、農業用トラクターのトランスミッション(変速機)に応用できないかと考え、挑戦しています。A業界で提供していた価値をB業界に応用できないか、と考え実行に移すイメージです。
 
 

【変革管理】で価値探しをすることで、はじめて我が社は成長する。
 
 

新たな価値を提供する努力、売上を増やす努力をすることで、はじめて利益を残すことができます。この利益は、我が社の将来のための投資、仕組みづくりに使うものです。人材育成、処遇の改善、研究開発や設備投資など、次の手を打てるようになり、また新たな価値を生み出し社会に貢献できるようになります。
 
 

【厳格管理】であら探しをするのか、【変革管理】で価値探しをするのか
 
 

少しの違いが大きな違い。伸びる会社は、変革管理の仕組みを持っています。御社はどちらの管理を主体におきますか。上記計算式に当てはめ、シンプルに考えてみてください。
 

事実。限界を超えた厳格管理は、不正を生み出します。例えばデータ改ざん。免震装置のKYB、JIS認定取り消しになった三菱マテリアル、検査不正の日本ガイシ、旭硝子、神戸製鋼、日産自動車、スズキ、三菱自動車、…この1~2年間のニュースだけでも、何社も上げられます。ニュースになっていない企業を含めれば、かなりの数になるでしょう。これでいいのでしょうか。犯罪の片棒を担ぎたい社長はどこにもいないではないでしょうか。
 

だから、おすすめは【変革管理】です。決めたことを決めたとおりにという【厳格管理】から、新たな価値を生み出すためにどのように変えていくのかという【変革管理】へ。御社も管理の基本スタンスを変えてみませんか。
 

健康を維持するために予防や早期治療が良いように、御社の管理体質を早期治療してみてください。O社長のようになぜもっと早く手を打たなかったのかと嘆く前に、早めに手を打つことをおすすめします。
 

もちろん変革には痛みをともなう側面もあります。また、自社ではできないケースもあるでしょう。そんなときは、ぜひ弊社セミナーでお伝えする変革管理のコツをヒントにしてください。
 

厳格管理を要求していたトヨタ自動車がソフトバンクと提携したように、主要得意先は御社の知らないところで変革管理をしているかもしれませんね。我が社も先手を打ちましょう。

 

 

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