ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第55話社長が選択すべき、戦い方の基本ルールとは

ルールを活かして 価値提供に徹するのか。ルールを壊して 価値創造に徹するのか。
第55話:「社長が選択すべき、戦い方の基本ルールとは」(ルールを活かして 価値提供に徹するのか。ルールを壊して 価値創造に徹するのか。)

 
  

「決められたルール通り、しっかりやってくれよ!」
 

A社長は、社員に発破をかけます。徹底度を上げてほしいからです。
 
 

「ルールにとらわれず、いろいろ工夫してやれよ!」
 

A社長は、社員に声をかけます。常識にとらわれないでほしいからです。
 
 

ルール通りにやる部分と、ルールを変更する部分。A社長は、どちらも必要だと思って社員に話しかけました。ところが、社員はこの区別ができていません。だから、混乱して動けなくなります。
 

社長の発言は、社員の立場からすれば指示命令です。自社の社員との会話を思い出してみてください。実は、180度異なる指示命令をケースバイケースでしているのではないでしょうか。どれだけ注意して伝えているつもりでも、混乱を防ぐ仕組みがなければ、社員は理解できません。
 

ここで、自社の現場はどのようになっているのか想像してみてください。
 

おそらく、保守派の社員は、ルールを遵守することを優先しはじめることでしょう。また、改革派の社員は、ルールをぶち壊すことを優先しはじめます。そして、保守派と改革派の対立が水面下で繰り広げられているのではないでしょうか。
 

この状態を放置すると、経営資源を浪費し、消耗していきます。保守派は既得権を誇示するために、改革派の足をさりげなく引っ張ります。すると組織に足枷がついたように、御社の改革は進みません。そして、改革派はお手上げ状態になり魂を抜き取られるか、見切りをつけて退職していきます。
 

それでは、いったいどうしたら良いのでしょうか。
 
 
 

■1.二つの戦い方
 

このとき、社長がすべきことは、とてもシンプルです。戦い方の基本ルールを社内外に明示し、浸透するまで伝え続けることです。
 

<ルールを活かして、価値提供に徹するのか。ルールを壊して、価値創造に徹するのか>
 

まずは、我が社の基本方針として、全社的な戦い方の基本ルールを示してください。そして、事業部、製品・サービス、得意先、といった区分ごとに、ルール通りに戦う部分と、ルールを変える部分を示しましょう。
 

社長の頭の中で明確に区別している基準を、社員の立場でもわかるようにしてあげるのです。
 
 
 

■2.【 戦い方1 】:ルールを活かして、価値提供に徹する
 

業界や市場、自社で当たり前になっていること。これは、公式・非公式に関わらず既存のルールです。
 

このルールを遵守することは、秩序を維持することになります。したがってルールを守ると安心し、破ると不安になります。社員にとっては、こちらの選択の方がわかりやすいものです。
 

例えば、法律や資格試験等で守られている業界・市場で戦う場合や、評判のよいフランチャイズに加盟して戦ったり、楽天やヤフーショッピングのように何らかのインフラを活用して戦ったりする場合が該当します。
 

既存のルールがあるので、誰でも戦いやすく、結果も想定しやすいものです。その反面、市場の規模が決まっておりパイの奪い合いになります。つまり、競合が参入しやすく、利益を出しにくくなるという課題が残ります。
 

ルールを活かして、価値提供に徹すること。社長がこの選択をした場合、やるべきこととは何でしょうか。
 

それは、既存ルールの本質を見抜き、どのように戦うのかを決定することです。単純にルールに従うだけでは、先が見えています。ルールの中に隠れた、ツボを見つけてください。
 
 
 

■3.【 戦い方2 】:ルールを壊して、価値創造に徹する
 

業界や市場、自社で当たり前になっていること。ここに大きな落とし穴があります。よくよく考えると、不便極まりなかったり、根本的に満たしていない側面があるにも関わらず、当たり前のように諦めていることがあります。
 

例えば、固定電話 → 携帯電話 → スマートフォン と変化した歴史や、カセットテープ・レコード → CD → データ配信 と変化した歴史を思い出してください。
 

また、システムの観点では、中央集権型の汎用コンピュータ → 分散型のクライアントサーバ → 集中型のクラウドコンピューティング → 分散型のブロックチェーン とトレンドが何度も転換していることを考えてください。
 

根本的に不便で満たしていないことがあります。この潜在ニーズを顕在化させることで、次の商売を生み出すことができます。この点は、技術革新も大きく影響しています。
 

先日、「がっちりマンデー!!」というテレビ番組では、お湯か水を注ぐだけで「にぎらずできる“おにぎり”」(5年保存):尾西食品株式会社や、隕石からも守ることができるドーム型倉庫「TOKOドーム」(現在工法より強く、広く、早く施工できる):東光鉄工株式会社の事例が、紹介されていました。
 

尾西食品株式会社「にぎらずできる“おにぎり”」のリンク ↓
https://www.onisifoods.co.jp/products/onigiri.html
 

東光鉄工株式会社「TOKOドーム」のリンク ↓
http://www.toko-akita.co.jp/seihinanai-tokodome.html
 

ルールを壊して、価値創造に徹すること。社長がこの選択をした場合、やるべきこととは何でしょうか。
 

それは、戦い方を変えることを宣言することです。そして、既存ルールの矛盾や根本的な問題に真正面から向き合い、自社の強みを土台にして、どのように戦い方を変えるのかを決定してください。その後は、試行錯誤を前提に、社員と協力しあう体制を築くことが大切です。
 

上記のおにぎりの事例では、保存食やアルファ米の技術を土台に、おにぎり市場の常識を壊しました。ドームの事例では、建築基準法の常識を壊し、建築物として許可がおりたそうです。
 

既存のルールを壊さなければ、新たな価値は生まれません。新たな市場を創造するため、伸びしろは計り知れません。社会に新たな価値を提供できます。その反面、社員は、結果が想定し難く、迷いが生じやすくなります。
 

これを乗り越え、上手く参入障壁をつくることができれば、利益を生み出し続ける新たな事業が確立できます。すると、今期の業績を気にすることなく、新たな価値創造に専念することができるようになるでしょう。
 
 
 

■4.どちらを選択しても大切なこと
 

社長が経営者として自社をどう導くのか。どちらの基本ルールを選択するか決断し、組織に明示してください。
 

そして、どちらを選択しても、組織に3つの目を浸透させてください。それは、ピーター・センゲ氏が「学習する組織」で表現している「複雑な社会を理解する力(システム思考)」のことです。
 

(1)鳥の目:鳥瞰
 

まずは、ものごとの「全体像」を理解すること。目の前の問題に適切に向き合うためには、変化や行動のパターンを生み出す構造に注目し、自社の立ち位置を把握しなければなりません。
 

そのためにも、鳥のように広い視野で業界や市場、自社を見つめてください。そして、ここを押すと圧倒的に成果が変わるという「レバレッジ・ポイント」を探しましょう。
 

(2)虫の目:三現(現場、現物、現実)
 

そして、ものごとの各要素の「つながり」を観察します。このつながりの質が、システム全体のパフォーマンスに大きな影響を与えます。複雑な社会では、個々の要素の質よりもつながりがポイントになります。
 

自社の社員一人ひとりの力をどのように引き出すのかという点も、重要です。要素の漏れにも注意してください。
 

(3)魚の目:時代観
 

最後は、時間軸で考えることです。魚が潮目を感じ取り、タイムリーに泳ぎ方を変えるように、時代の流れを掴む必要があります。
 

非連続な変化が頻発する現代において、既存ルールがいつまで機能するのか、次にどのようなルールが生まれるのか、見抜いてください。現代においては、「変化することが当たり前」という前提を持つと良いでしょう。
 

小島がコンサルタントを目指していた頃、単に知識としてこの3つの目を学んだだけでした。その後、多くの企業様を支援する過程でこの重要性を認識しました。そして、恩師の岡野実氏からのアドバイスで、再度この重要性を学び直しました。
 

この3つの目は、知っているだけでは意味がありません。実際に現場で使えるようになるために、何度も振り返る必要があります。聞いたことがあると流してしまうのは、とてももったいないことです。この重要性を改めて見つめてみてください。
 
 
 

■5.最後に
 

どちらの戦い方を選択しても、現代社会で起きていることを観察しなければ危険です。つまり、市場や業界、各社の組織で起きていることを、時間軸と空間軸と人間軸で把握し、戦い方のルールに反映していくのです。
 

ルールを活かすにしても、既存ルールの中でルールの穴を攻めるグレーゾーンで戦いましょう。ルールを壊すにしても、根本的にルールを変える新たな戦い方を創造してください。
 

後者のコツは、自社の利益よりも社会に提供する価値を中心に考えることです。時代の潮目は、利己的な活動よりも、利他的な活動を支援する流れになっているからです。
 

ガチガチにコントロールする旧来の経営手法には、戦い方のルールを変えられないという限界があります。また、創造力を高める自己啓発の手法には、新たなルールが定まらず組織で使い難いという問題があります。多くの手法には、こういった落とし穴があります。注意してください。
 

さぁ御社は、今後どのような仕組みを導入し、どのようなルールで戦っていきますか。
 

あと1週間で2019年です。自社の将来を見据え、自社が選択した方向性を明確にすること。そして、新年の挨拶は、それを社員に伝える機会にしてください。

 

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