ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第113話見えない前提 ぶつかる社長 と 助かる社長

見えない前提 ぶつかる社長は 疲弊する 助かる社長は 招聘(しょうへい)する
第113話:「見えない前提 ぶつかる社長 と 助かる社長」( 見えない前提 ぶつかる社長は 疲弊する 助かる社長は 招聘(しょうへい)する )

 

「小島さん。この業界はもう限界です。正直なところ、経営が苦痛になってきました。改善の余地も見つからず…」
 

1年前にセミナーにご参加いただいたH社長からの相談です。
 

「覚えていますか? 【改善】は会社にとって害悪なんですよ」
 

と小島。H社長は、非常に勉強熱心で真面目な方です。ですから、改めてお伝えしました。
 

【改善】は、従来の大きな物語が続いているときに有益な手法です。同じ物語の中では、戦い方のルールは同じです。ですから、オペレーションの観点で、効率よく物事を進めることが重要です。効率よく販売する、効率よく生産する、これによって経営の勝敗が決まります。
 

しかし、現代は違います。小さな物語の時代です。戦い方のルールが根本的に変わり、個別の市場が生まれては消える時代なのです。そのため、過去の大きな物語の時代の戦い方で延長戦を続けていると、会社は荒波に飲み込まれ、溺れ死ぬしかありません。今、御社に必要な活動は【変革】なのです。
 

それでは【改善】と【変革】の違いは、どこにあるのでしょうか? 根本的な違いは<前提>の取り扱い方です。
 

【改善】は、業界・自社の<前提>を変えず、地道に生産性を高めるような努力をすることです。同じ市場で顧客を奪い合ったり、コストカットをしたりすることで、小さな差を積み重ねる活動です。
 

【変革】は、業界・自社の<前提>を変えて、根本的に新たな価値を生み出せないか創意工夫をすることです。新市場を見つけ顧客を創造したり、構造を変えたりすることで、圧倒的な差を生み出す活動です。
 

H社長は、業界・自社の<前提>に囚われているから、行き詰まりを感じ、経営に疲れるのです。もし、業界・自社の<前提>を変えることができれば、同業他社や他業界を出し抜く感覚が生まれ、経営が面白くなるものです。
 

結論を聞けば、あまりにも当たり前のことです。H社長も十分に認識していました。しかし、実際に自社に落とし込むのは容易ではありません。なぜなら、多くの社長や社員にとって業界や自社の<前提>は、見えなくなっているからです。
 

事実、自社に目を向けると、社員達はPDCAサイクルを回すことに注力しています。改善活動が仕事の一環だと信じているからです。なぜなら、社長や幹部が、他社の改善事例を聞くたびに、自社に取り入れようとしてきたからです。(セミナー後半でお伝えしている内容ですが会社でPDCAサイクルを回すと、会社がダメになります)
 

「もう改善の限界だ!」社長も社員も内心は気がついています。それでも「一旦手を止めて、根本的に見直そう」とは言いだせません。
 

【変革】は、計画通りに実行するのではなく、試行錯誤が<前提>だからです。成果につながる保証もなければ、やり方もよく分かりません。社長が、決断しなければ始まらないことなのです。
 

相談中、H社長の口から「この業界の常識では…」「我が社の社風では…」という言葉が何度も出てきました。これは、かなり危険な状況です。社長自身が変革に着手する決断を先送りにしており、できない理由を並べているからです。
 

弱気になった社長は、ますます動けなくなります。そして「同業他社のやり方を見てから、自社でやるかどうか判断しよう」といいだします。この発想までいくと、末期症状です。同業他社のモノマネでは、どこまでいっても微差しか生まれません。
 

そして、何よりも業界や自社の<前提>に囚われています。本人が気づいている前提は、まだ救いようがあります。しかし、あまりにも当たり前になりすぎていて気づいていない<見えない前提>が、どの会社にも、どの社長にも、どの社員にも潜んでいるのです。
 

セミナーを受講した1年前、H社長は「大変勉強になりました。変革経営ができるよう、まずは自分たちで挑戦します」と言いました。小島は「自社で取り組む場合、<見えない前提>に囚われるワナがあるのでご注意ください」と伝えました。
 

1年H社を路頭に迷わせてしまいました。当時はH社長なりの事情はあったと思いますが、決断の背中を押し切れなかった我々の責任も感じています。H社だけでなく、当社も気づかぬうちに<見えない前提>に陥る危険性を孕んでします。
 

ただ、当社には前提をあぶりだす討議の仕組みがあり、外部ブレーンの客観的な視点を取り入れる機会があるため、<前提>を変えていくことができます。
 

御社が<前提>を変えるには、<見えない前提>に囚われない触媒が必要です。社外の視点を取り入れ、化学反応を起こすしかありません。
 

どの会社も、同業他社と同じ<見えない前提>の世界に留まっているかぎり、どんぐりの背比べです。どんぐり同士が帽子を変えて背比べをしても、所詮どんぐりはどんぐりです。
 

どんぐりは、コナラやクヌギなどブナ科の樹木につく果実の総称です。新たな視点でそれぞれの物語をつくり、それぞれの場所で樹木に成長すれば良いのです。
 

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H社長は【改善】ではなく【変革】に着手する決断をしました。社長自身が疲弊している場合ではないことを反省していました。【変革】が進むと、新しく生まれた小さな物語の世界で【改善】に着手することができます。改善は変革のあとにやればよいのです。
 

闇雲に小さな【改善】の積み重ねたとしても、その先には疲弊しかありません。まず【変革】に着手しなければ始まらないのです。当社には、普通の会社が、普通に変革していく仕組みがあります。御社の経営資源をどこに集中させるのか、社長として見極めてください。
 
 
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