ノートとペン 今週の「コジマ式 変革経営の視点」 代表 小島 主の経営者様向け専門コラム

第49話頑固さと柔軟性 どちらが正解? 営業マネジメント

頑固な営業マネジャーは、社員の主体性を潰す。柔軟な営業マネジャーは、組織の規律を失う。
第49話:「頑固さと柔軟性 どちらが正解? 営業マネジメント」(頑固な営業マネジャーは、社員の主体性を潰す。柔軟な営業マネジャーは、組織の規律を失う。)

 

 
 

「頑固すぎるこの性格が問題かも知れません。もっと柔軟にならないと…」
 

K社長は、小島に悩みを打ち明けました。
 

経営者は、誰しもこだわりが強いものです。このこだわりには、社長なりの意図があります。しかし、社員には、なかなか真意が伝わりません。お互いの立場や役割も違えば、これまでの体験・経験も異なるからです。このもどかしさが社長の頭を悩ませます。
 

「なぜ、社員はもっと工夫したり、自ら行動したりしないのか。受身のままじゃ困るんだよなぁ」
 

思わず愚痴をぼやいてしまいます。
 

K社長は、こだわりの必要性やその効果も認識しています。また、自身のこだわりが強すぎて組織に悪影響を与えていることも気づいています。だから、角が立たぬよう配慮しながら、社員に働きかけます。
 

ところが、社員の振る舞いをみると、どうしても表面的に取り組んでいるように感じられます。すると、社長の不満が表情に現れ、本人が気づかぬ間に凄みを利かせたり、圧力を掛けたりしてしまいます。これに社員は萎縮し、ますます指示待ち状態になってしまう…。
 
 

<頑固な社長は、社員の主体性を潰す>
 
 

社長のこだわりが、組織にマイナス影響を与えてしまうケースです。こういった悪循環におちいる組織は多いものです。K社長は、内省し「もっと柔軟にならなければならない」と思っています。ところが、頑固さを制御しようとすればするほど、こだわりを大切にしたい本来の自分が抵抗をしはじめます。社員も期待するほど応えてくれません。
 
 

その一方で、柔軟性を大切にする社長もいます。
 

例えば、こだわりの強い創業社長・先代社長のもとで、補佐役をつとめ、世代交代をした後継経営者です。先代の強すぎるこだわりが、社員を萎縮させていることを目の当たりにし、自分が社長に就任した際には柔軟に関わろうと決めているケースです。
 

この場合、ほとんどの事例でなかなか上手くいかないものです。先代の時代は、指示・命令をいかに素直に実行するかが重視されていました。先代社長のこだわりを実現するために、指示通りにやるというパターンが組織に刷り込まれています。
 

指示・命令に従い続けることで評価されてきた古参幹部は、特にこの傾向が強いものです。にも関わらず、後継社長は「柔軟にやり方を変えていこう。みなさんの意見を聞かせてください」と働きかけます。
 

社員は、そもそも自分で考えるということに慣れていません。試しにやってみようという気持ちがあっても、やったことがないアイデアで成果が出る補償もありません。すると、ためらって動けなくなるか、とりあえずやってみて失敗し諦めてしまいます。何度も挑戦することはほとんどありません。
 

そうこうしている間に、先代のこだわりによって維持できていた規律が失われ、従来の業績が維持できなくなります。かつての強制力がなくなると、組織の行動力が徐々に失速してしまうからです。
 

すると、後継経営者は徐々に焦りはじめ、さらに社員に柔軟性を求め、主体性を要求するようになります。やがて、早く結果を出さなければと、成果も求めるようになり、ますます社員は困惑してしまいます。
 
 

<柔軟な社長は、組織の規律を失う>
 
 

社長の柔軟性が、組織にマイナス影響を与えてしまうケースです。こういった悪循環におちいる組織も多いものです。このタイプの経営者は、何とか社員の柔軟性や行動力を高めなければと思いつつ、本当にこのスタンスで良いのだろうかと迷いはじめます。また、こだわりを社員に強く要求することに抵抗感があり、先代のようにゴリゴリと組織を動かすことはできません。
 
 

頑固さと柔軟性。営業組織をマネジメントするには、どちらが正解なのでしょうか?
 
 

もし「どちらが正解なのだろう?」とお考えになったのであれば、もう少し視野を広げてみましょう。
 

組織の中で議論をするケースや、マスメディアが作り出すニュースには、A案かB案かという2択で正解を求めるケースがほとんどです。しかし、本来であれば、アイデア次第で選択肢は無限大に存在します。手段は、いかようにもつくりだすことができるのです。
 
 

<いかなる問題も、それをつくりだした同じ意識によって 解決することはできない>
 
 

このアルバート・アインシュタインの名言をヒントにすれば、視点を変える重要性が認識できます。つまり、A案とB案のいいところどりをしても良いし、2択が導かれた前提を疑い、前提を変えて超越案を考えてみることもできるのです。
 

その上で、頑固にこだわる点と、柔軟に取り組む点のコツをお伝えします。
 

まず初めに、目的を共通認識し、目的を達成しようという姿勢には、とことんこだわりを持ってください。そして、組織にこのこだわりを浸透させましょう。
 

次に、目的を実現するための目標や、目標を達成するプロセスでは、柔軟に発想してください。経営環境は、変化し続けています。柔軟に発想することにこだわり、従来のやり方を闇雲に徹するというこだわりは捨てましょう。
 
 

<こだわるべきは、目的と取り組み姿勢。柔軟にすべきは、目標とやり方・手段>
 
 

これは、経営者だけでなく、営業マネジャーにも共通して言えることです。
 
 
<頑固な営業マネジャーは、社員の主体性を潰す>
<柔軟な営業マネジャーは、組織の規律を失う>
<こだわるべきは、目的と取り組み姿勢。柔軟にすべきは、目標とやり方・手段>
 

この見極めは、どれくらいできているでしょうか。さらに、目的と手段の関係性に注力すると次のヒントが見えてきます。
 

・社長には、社長の目的があり、それを実現する手段が思いつきます。
 ・役員には、役員の目的があり、それを実現する手段が思いつきます。
 ・営業マネジャーは、営業マネジャーの目的があり、それを実現する手段が思いつきます。
 ・営業担当者は、営業担当者の目的があり、それを実現する手段が思いつきます。
 

このとき、社長の手段は役員の目的となり、役員の手段は営業マネジャーの手段になっています。つまり、目的と手段は入れ子構造になっています。
 

もし、御社の営業マネジャーや営業担当者が、A案かB案かと2択にとらわれている場合は、一つ上の立場を疑似体験させることで、頑固さ(こだわり)と柔軟性を上手く使えるようになります。もちろん、移行期の留意点もあります。
 
 

こだわる頑固さと柔軟性。御社は、どこにこだわり、どこに柔軟になればよいのでしょうか。
 
 

もし、御社がこだわりや柔軟性のメリットよりも、デメリットに困っているのであれば、一度社内の状況をチェックしてみてください。各階層でどこにこだわっているのか、どこを柔軟に考えているのか。
 

そして、社長からみてこだわりポイントがズレていると感じたのなら、こだわりポイントを修正するように働きかけてください。
 

特に、柔軟性をもつべきポイントでは、「絶対に達成せよ」とゴリゴリやってしまわないようにしましょう。営業系のコンサルタントを入れているケースは、特に注意が必要です。ドーピングのように短期的な効果はありますが、単純に行動量を増やすことに注力してしまうため、組織が疲弊してしまいます。従来のやり方ままでは限界がくるでしょう。
 

また、こだわるべきポイントでは、「どうしたらよいと思う」と闇雲なコーチングをしてしまわないようにしましょう。経営者の立場を経験したことのないコーチの場合、往々にして経営を知らずピントがずれています。社員のやる気を引き出すつもりが、社員のわがままを許すことになり、経営者や経営幹部、組織への不満を無意味に助長してしまいます。
 
 

こだわる頑固さと柔軟性。御社は、どこにこだわり、どこに柔軟になればよいのでしょうか。
 
 

一度、じっくりと我が社をチェックしてみてください。きっと御社のマネジメントを好転させるヒントが見つかるでしょう。

 

※当社は、頑固にこだわるべき目的と、柔軟にとらえるべき目標・手段を使い分ける営業マネジメントの仕組みとして「社長も社員も心から安心できる状態をつくる【3年分 受注残をつくる経営(業績3年 先行管理の仕組み)】」を公開しております。興味がある方は、ぜひ弊社セミナーご参加ください。

 

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